「ここを乗り越えないと、ドツボにはまって上がってこられなくなってしまう」
三遠ネオフェニックスは20日の水曜ゲームでアウェーに乗り込み、川崎ブレイブサンダースと対戦。試合の立ち上がりから主導権を握られ、常にリードを許す展開の中、78-101の完敗を喫した。
三遠はリーグ随一のハイパワーオフェンスでシーズン中盤まで快進撃を続けてきたが、ここにきて5連敗と苦しんでいる。シューターとして貴重な得点源の金丸晃輔に加え、ここ3試合はヤンテ・メイテン、もしくはコティ・クラークのどちらかが欠場と、フルメンバーが揃っていないのは大きなマイナス要素となっている。そして各選手はハードワークをしているが、好調な時と比べるとボールムーブが停滞し、1対1からの強引なアタックが増加。その結果、タフショットで終わるオフェンスが増え、自分たちの得意とするトランジションを相手に許してしまう悪循環となっている印象だ。
チーム最年長である39歳の太田敦也は、もちろん現状について危機感を持っている。ただ、同時に「やっぱり、このまま行くことはないと思っていました」と率直な思いを明かす。「ずっと良い状態を続けられるチームは日本に限らず、世界中のどのリーグにもないと思います。流れはあるので、こういう時も来ると覚悟はしていました。ただ、ここを乗り越えないと、ドツボにはまって、上がってこられなくなってしまいます。一人ひとりの意識が大切になっていきます」
この悪い流れを断ち切るために何が必要なのか、こちらの問いに対して太田は「(戦い方を)大きく変えるのはシーズンオフとかにやるべきものかと思っています」と答え、選手個々のメンタルを重視する。「調子が良かった時を振り返る。そして気持ちの持ち方一つで、変わることはすごくあると思っています。気持ちは個人で変えていけますし、細かいところから少しずつやっていくのが一番だと思います」
冒頭で紹介したように、ここに来て三遠は外国籍選手の欠場が増えている。そのため、日本人ビッグマンの太田の出番も自然と増えてきた。「外国籍選手にはそれぞれの役割があり、彼らがやらないことをやるのは僕の役割です。試合の流れをつかむための泥臭い仕事を意識しています」
「今回が最後になるかもしれない、そういう意識で全力で臨んでいきたい」
こう太田は自分のやるべきことを語り、有言実行で身体を張ったディフェンス、味方を生かすスクリーンなど、スタッツに出ないハードワークを遂行している。そのプレーの質は年齢による衰えを感じさせないが、太田もそういった認識はない。「昔に比べれば、体力的には落ちています。でもスタッフ陣のサポートのおかげもあって、ケガなく普通に動けていると思います。あとはもう気持ちです。昔と比べると、プレータイムが短くなって、へこんだりすることもあったりしますけど、そこをうまくケアできればまだまだプレーできると思います」
そして今シーズン、日本人ビッグマンとしてリーグ屈指の活躍を見せている同級生の竹内兄弟(公輔、譲次)の存在は、「なんかバチバチやりたいなという風に思いますよ(笑)」と刺激を受けているようだ。
連敗中とはいえ、現在の三遠は34勝9敗の中地区首位で、2位のシーホース三河に7ゲーム差をつける独走体制だ。Bリーグ初年度以来となるポストシーズン進出の可能性はかなり高い。当時のメンバーで、現在も在籍する唯一の選手である太田は、チャンピオンシップ(CS)への強い思いを語る。
「他のチームより先にシーズンが終わって、携帯とかでCSの試合を見るのは結構悲しいですし、いいなと思っていました。ずっと画面越しに見ていた舞台に久しぶりに立てるチャンスがあるのでつかみ取りたいです。そして、今回が最後になるかもしれない、そういう意識で全力で臨んでいきたいです」
余談だが、太田との囲み取材中、彼を慕っている川崎の藤井祐眞が乱入してきた。「チームが苦しい時にこそ、泥臭いプレーでアツ(太田)が頑張らなあかん。ポンプフェイクからのアンド1が俺、好きなんよ」とエールを送ってくれた。
藤井が言うように、苦しい時期にスタッツに出ない泥臭いプレーが悪い流れを変えるきっかけになることはよくある。苦境に陥っているからこそ、コート内外において百戦錬磨のベテランである太田の経験、ハードワークが必要になってくるはずだ。