ザイオン・ウイリアムソン

『ザイオンで勝負する』ビッグラインナップ

レギュラーシーズンは終盤戦に入り、上位チームはポストシーズンに向けた戦い方の調整に入る。西カンファレンスの4位クリッパーズと5位ペリカンズの戦いは、その『調整』が上手くいったペリカンズの勝利となった。

ペリカンズはザイオン・ウイリアムソン、ブランドン・イングラム、CJ・マッカラムの『三本柱』のチームだが、この試合の終盤は『ザイオンのチーム』として機能した。巨体と俊敏さという相反する2つの要素を兼ね備えるザイオンは、リムへ飛び込みフィニッシュするオフェンスの迫力が持ち味の選手。それでも彼は34得点7リバウンド4アシスト3スティール1ブロックというスタッツを残しながら、そこには表れないディフェンスとプレーメーカーとしての能力でペリカンズに勝利をもたらした。

35分のプレータイムのほとんどでザイオンはカワイ・レナードのマークを担当。特筆すべきディフェンスのハイライトシーンがあったわけではなく23得点を奪われているものの、試合を通じてカワイに時間とスペースの余裕を与えず、快適にプレーさせなかった。ペリカンズがわずかにリードする接戦の試合終盤、トレイ・マーフィー三世は負荷の大きいカワイのマークを数ポゼッション肩代わりすると声を掛けたそうだが、ザイオンの答えは「僕がやるから大丈夫」だった。マーフィー三世は言う。「チームがスター選手にこうであってほしいと願う姿だった。プレーオフで勝つためにはスター選手であってもオフェンスだけじゃなくディフェンスもやらなきゃいけないことを彼はよく理解しているよ」

ザイオンのサイズと身体能力を持ってすれば、カワイを抑えることはできるが、心身ともに負荷は大きいし、ファウルがかさむリスクもある。しかしザイオンはその重責を全うし、ファウルもコントロールしてこの試合を乗り切った。

そして第4クォーター残り3分半、5点リードの場面。ザイオンがハンドラーとなり、イングラムとマーフィー三世とハーブ・ジョーンズとフォワードを並べ、センターにラリー・ナンスJr.を置くビッグラインナップを敷く。フォワードは外で構えてフロアを広げ、ナンスJr.がザイオンにスクリーンを掛ける。多彩なプレーのできるマッカラムをあえてベンチに置き、ここではイングラムもフロアスペーサーに徹することで、『ザイオンで勝負する』という意図を明確に打ち出したラインナップは、クリッパーズ相手に大いに機能した。

先発センターのヨナス・バランチュナスより高さも重さもないナンスJr.にクリッパーズ守備陣はあまり注意を払わなかったが、そこを突いてゴール下にポジションを取るナンスJr.にパスを合わせてのイージーバスケットが2つ決まり、あとはザイオンが勝負した。残り32秒、ジョーンズが身体を張って作り出したリムへのレーンに突進したザイオンは、ヘルプに来たポール・ジョージをダブルクラッチでかわすド迫力のレイアップを決める。これが決定打となり、ペリカンズは112-104で勝利。4位クリッパーズとの差を2ゲームへと縮めた。

プレーオフのホーム開催権を得られる4位を巡る直接対決に勝ったことも大きいし、『三本柱』が交互に仕掛けるいつものスタイルとは全く異なる『ザイオン中心のラインナップ』が機能したことで、プレーオフに向けた戦い方の幅が大きく広がる。そんな価値ある試合を終えて、ザイオンはこう語った。「僕はここにいる。みんなと一緒にここにいる。ディフェンスもやるしフロアにダイブするのも厭わない。パスも得点もする。そうすることでチームメートに『僕はここにいる』とメッセージを送りたいんだ」