「僕はそういう瞬間を楽しもうとする」
デマー・デローザンは文字通りブルズを救った。ペイサーズと一進一退の攻防を繰り広げるも、残り5秒で114-117と3点ビハインド。ここでデローザンにボールが渡ると、ペイサーズはすぐさまファウルをしてフリースロー2投を与える。ブルズはフリースロー2本を決めてファウルゲームに持ち込んでも、すでにタイムアウトを使い切っており、次のオフェンスはデザインできなかった。デローザンはここまで13本すべてを決めてきたフリースローの2投目をわざと外し、セカンドチャンスに賭ける。
ニコラ・ブーチェビッチが良いポジションに入るも、オビ・トッピンが身体を投げ出してボールを外にかき出してセカンドチャンスは与えない。それでも残り2.4秒でブルズに再びポゼッションが巡ってきた。ここでデローザンはパスカル・シアカムのマークを引きはがしてボールを受け取り、すぐさまTJ・マッコネルが寄せるもその上からターンアラウンドジャンパーを放つ。超高難易度のシュートではあったが、これがリムに吸い込まれるようにして収まり、ブルズは土壇場で追い付いた。
デローザンは「本当は僕が正面でシュートを打つためのプレーだったんだけど、ペイサーズはそれを読んでいた。だから僕は逆方向へと切り替えて、相手の隙を狙った」と、起死回生の同点シュートを振り返る。
こうして迎えたオーバータイムも、主役はデローザンだった。ミドルレンジのプルアップを沈めて勝ち越すと、ベン・シェパード相手に仕掛けて巧みな間合いからファウルを引き出しつつジャンプシュートを決める3点プレー。さらにシアカムのシュートチェックの上から3ポイントシュートと立て続けに得点を奪う。その後はデローザンがスペースを広げたところにアヨ・ドスンムがドライブを仕掛けてレイアップに持ち込み、続くポゼッションはハリバートンとシアカムがブリッツに来た瞬間にデローザンからアレックス・カルーソへとパスが渡り、トーリー・クレッグのイージーなゴール下に繋げた。こうしてペイサーズを振り切ったブルズが132-129で勝利している。
第4クォーター終盤にコービー・ホワイトがケガをしたことで、その後のブルズはプレーメーカー不在となってデローザン頼みのオフェンスになったが、そこでエースが本領を発揮した。ドスンムは「これが殿堂入り選手だ。僕がこれまで見た中でも最高のスコアラーだ」とデローザンの勝負強さに舌を巻く。
そのデローザンは「外したら終わりのサバイバル・モードだったね」とうれしそうに話す。「僕はそういう瞬間を楽しもうとする。失敗するのは怖くない。挑戦するのも怖くない。そういう瞬間を求めている。子供の頃、ショットクロックがわずかなシチュエーションを頭に思い浮かべながら、ベッドの上でシュートを放つ真似をしていたのを思い出す。そういう瞬間をいつも楽しんでいたいんだ」
レギュラータイムの48分間を通じてはペイサーズが上回っていたのかもしれない。それでも最後の詰めが甘く、デローザンの『サバイバル・モード』に屈することになった。指揮官リック・カーライルは「ほんの少しの差だが、それで痛い目に遭う。すさまじい展開だったが、あと1リバウンドで勝てていたんだ」と言う。マイルズ・ターナーは「ディフェンスが十分ではなかった」と語った。「デローザンはビッグショットを決めてきたけど、それは言い訳にできない」