自分を空ける相手の守備に「僕に打たせたいなら打つ」
試合開始から6分間で21-21の立ち上がり。ここからセルティックスvsウォリアーズは激動の6分間を迎えた。ジェイレン・ブラウンが左からのコーナースリーに正面からの2本と3ポイントシュートを3本をいずれも出足の鈍いドレイモンド・グリーンの前から沈める。ウォリアーズはタイムアウトで悪い流れを断ち切ろうとするが、サム・ハウザーの3ポイントシュート、デリック・ホワイトの絶妙なパスにルーク・コーネットが合わせてのダンクを浴びて、立て続けにタイムアウトを取ることに。この間、頼みのステフィン・カリーはブラウンに徹底的にマークされて、ボールに触れることもままならなかった。
クレイ・トンプソンのフリースローでウォリアーズが1点を返したものの、セルティックスの勢いは止まらない。3ポイントシュートの当たりは止まっても、クリス・ポールが率いるセカンドユニットの攻め手をきっちりと潰していく。ジョナサン・クミンガにタフショットを強いての速攻、ブロックショットからのトランジションスリーでのペイトン・プリチャードの連続得点、最後はドリュー・ホリデーが残り時間を見ながらレイアップを沈め、23-1のランで第1クォーターを締めた。
第2クォーターに入ってもセルティックスは打つ手のないウォリアーズを攻守に押しまくり、前半を終えて82-38と大差を付けた。前半で3ポイントシュート24本中15本成功とシュートが当たったのは確かだが、20アシストを記録してターンオーバーわずか1、落ちたシュートが少ないにもかかわらずリバウンドで28-18と上回る完璧な出来。たった24分間で士気を断ち切られたウォリアーズは、後半にカリーもグリーンもクレイもプレーしなかった。
最終スコア140-88と歴史的な大勝を収めた試合を終え、ジェイレン・ブラウンは「ウォリアーズへのリスペクトはとても大きいけど、僕らの時代だと感じている」と語った。古豪セルティックスは常に優勝を狙える力を秘めているが、最後に優勝したのは2008年で、2016年デビューのブラウンや2017年デビューのテイタムはウォリアーズ王朝の真っただ中でキャリアを過ごし、カンファレンスこそ違えど常にその斬新なスタイルと底知れぬ勝負強さに打ち負かされてきた。
最も最近の苦い記憶は、2年前のNBAファイナルだ。ウォリアーズの主力が老いと抗う中で迎えた2021-22シーズン、経験を積むことで若手から中堅となり、リーダーとなりつつあった彼らは、王朝を打ち倒すことに自信を持っていたが、結果は完敗だった。TDガーデンで優勝を決め、バックヤードで大騒ぎするウォリアーズの姿を彼らは記憶に焼き付け、新たな成長のモチベーションとした。
そしてもう一つ、ブラウンの闘志を奮い立たせたのはウォリアーズのディフェンス戦術だった。今シーズンは3ポイントシュート成功率34.8%と振るわないブラウンに『打たせる』のが彼らの選択だった。「正直驚いたし、そりゃないだろうと思った」とブラウンは言う。「普段の僕はペイントに攻めるのが役割で、チームには優れたシューターが揃っているから僕が打つ必要はあまりない。でも僕に打たせたいなら打つよ」
「もしかしたら、彼らは一種のマインドゲームを仕掛けたのかもしれない。でも、逆効果だったね。僕はそれを利用した。おかげで僕のオフェンスとディフェンスの集中力はこれ以上ないほど高まった」
これでセルティックスは48勝12敗、リーグ首位を独走している。17分しかプレーせず、フィールドゴール13本中2本成功の6得点と全く良いところのなかったステフィン・カリーは「セルティックスはリーグ首位のチームで、その通りのプレーをした」と、今日のところは負けを認めた。「これを教訓に、悪い流れを長引かせないようにしたい。シーズンの最後に大きなことを成し遂げるには、自分たちが到達しなければいけないレベルを思い出さなきゃいけない」