渡邊雄太

デイミアン・リラード「若手の勢いにやられた」

グリズリーズはロケッツ戦に勝った翌日、本拠地フェデックス・フォーラムにバックスを迎えた。連日のホームゲームで移動はないにしても、ケガ人続出のチームに2日続けての試合は簡単ではなく、ロケッツ戦では連敗を9で止める快勝を飾ったが、そのスタメンのうちジャレン・ジャクソンJr.とルーク・ケナード、ジョン・コンチャーの3人がケガで欠場することに。ジャ・モラント、デズモンド・ベイン、マーカス・スマートといった主力どころがすでに故障中。バックスとしては簡単に勝利をモノにして、オールスター休暇を迎えられるという油断があった。

それは試合の各所に見られた。第1クォーターはデイミアン・リラードの10得点で先行するも、ベンチから出たGG・ジャクソンがシュートタッチ絶好調にもかかわらず対応を怠り、第1クォーターだけで3本の3ポイントシュートを許して優勢を覆された。57-57の同点で始まった後半わずか47秒で、指揮官ドック・リバースはタイムアウトを取っている。ディフェンスの意識が全く足りず、ザイール・ウィリアムズに立て続けに2本のシュートを許したからだ。

リバースは試合後にこう振り返る。「いきなりギャンブルに行って3ポイントシュートを打たれ、シュートを外したら誰もディフェンスに戻らない。ウチのチームの頭の中がどうなっているかを端的に示すプレーだった」

攻守の切り替えのスピード、プレーの強度ではグリズリーズが完全に上。ケガ人が続出して下位に沈んでいても、グリズリーズは自分たちのアイデンティティであるハードワークを失っていなかった。デイミアン・リラードは言う。「失うものがなく、このチャンスにキャリアを懸けてプレーしている若手の勢いにやられた」

それでも序盤から飛ばすグリズリーズは、最後までスタミナがもつか分からなかった。バックスは9点ビハインドで第4クォーターを迎えたが、残り7分でコートに戻ったヤニス・アデトクンボが、疲れの見え始めたグリズリーズをパワフルな個人技で攻め立てて連続得点を奪い、残り5分で逆転に成功する。

しかし、ここでグリズリーズはタイムアウトを取って冷静さを取り戻すと、今まで以上のエネルギーをコートに持ち込む。GG・ジャクソンが2本の3ポイントシュートを沈めてリードを奪い返し、ウィリアムズがファウルを受けながらアリウープ・ダンクを叩き込んで突き放す。残り2分15秒で107-102。この勝負どころにおいてもバックスは、シュートを外した後に誰も戻らず、リムへと突っ込むウィリアムズを完全なノーマークにするミスを犯していた。

最終スコア113-110でグリズリーズが勝利。ザイール・ウィリアムズとGG・ジャクソンはいずれも27得点を挙げた。ビンス・ウィリアムズJr.は18得点12リバウンド7アシスト2スティールと攻守に大活躍。「どんな試合でもハードに戦うのが僕らのやり方だ」とウィリアムズJr.は胸を張った。

ウィリアムズJr.は故障者の代替えでNBAオールスターのライジングスターに出場する。「素晴らしい試合ができたから弾みになるね」と彼は笑う。グリズリーズのファンの期待を一身に背負って、彼は華やかな舞台に上がる。

トレードデッドラインでグリズリーズに加入して間もない渡邊雄太は、前日のロケッツ戦では出場機会がなかったが、この試合ではベンチからの出場で11分間プレー。フィールドゴール2本を放ったが得点はなく、1リバウンド1アシストを記録した。攻守にハードワークする姿勢は見えたものの、主力を欠く状況でコミュニケーションが十分ではなく、あまりボールが回ってこなかった。第3クォーターの最後にはパトリック・ベバリーを抜き去り、ファウルをもらいながらロゴの位置からのディープスリーを決めたかに見えたが、シュートモーションに入る前のファウルと判定されて4点プレーならず。観客席を大いに沸かせたものの、残念なシーンとなった。