ニック・ファジーカス

文=鈴木栄一 写真=野口岳彦

NBA経験豊富なハダディとの対決がイラン戦のカギに

ワールドカップ予選も最後の2試合を残すのみとなった。そのWindow6ではイラン、カタールの中東勢相手のアウェーに乗り込む。八村塁、渡邊雄太が不在となるバスケットボール男子日本代表において攻撃の大黒柱となるのは、この予選4試合の出場で平均29.3得点、12リバウンドを記録するニック・ファジーカスだ。

Bリーグ序盤戦は、夏に手術をした影響もあり調子が整わなかったファジーカスだが、「非常に良い状態でここ数週間プレーできている。シュートの調子も良いし、今は皆さんがよく知っているニックに戻っていて、自信を持って試合に臨めている」とコンディションへの不安はない。

日本がまず集中すべきは、最初に激突するアジアの強国イランとの一戦だ。特に前回の日本戦には不在だったハメド・ハダディの復帰が濃厚で、より手強いチームになっている。2008-09シーズンから12-13シーズン途中までグリズリーズに在籍、NBA通算151試合出場を誇るハダディは、218cmのサイズを誇るアジア屈指のビッグマンだ。「攻撃面では脅威の存在」と、マッチアップするであろうファジーカスも警戒を強める。

ただ、守備については機動力に長けているタイプではなく、ファジーカスの大きな強みである外角シュートに対しチェックしきれるかは懐疑的だ。先週末に行われた三遠ネオフェニックス戦、ファジーカスは2試合連続で30得点を記録したが、これはアウトサイドから高確率でシュートを決めたことがモノを言った。守備におけるハダディ攻略の鍵となる外からの攻撃において「三遠戦では多くのジャンプシュートを決めることができた」と、ファジーカスが良い感覚を代表に持ち込めるのは日本にとって好材料だ。

ニック・ファジーカス

「ファンの皆さんも自信を持ってほしい」

冒頭で触れたように、八村と渡邊が不在ということで、イラン戦とカタール戦はファジーカスに大きな期待が寄せられる。ただ、本人はエースとしてチームを牽引する強い覚悟を持つと同時に「大きなものかもしれないけど、自分はパズルのピースの一つにすぎない。みんなで戦っているんだ」と、チームメートに厚い信頼を寄せてもいる。

本人は良い意味でプレッシャーを感じることなくいつも通りの自然体。髪を短くカットしたことについて尋ねると「理由は特になくて、短い方が楽だから。妻にはもっと長い方が似合っていて、好きじゃないって言われた。ただ、今回のアウェー遠征から戻ってくる頃には、妻が好きな長さに伸びていると思う」と笑いながら答えてくれた。

まずは21日のイラン戦に向け、ファジーカスは次のようなポイントが勝敗を分ける大きな要素になると見ている。「フィジカルな相手に対して、自分たちもやり返すこと。リバウンドが大事で、そこからトランジションでイージーシュートを打つことが重要だ」

そしてFIBAランキングでイランは26位、日本は47位であることを引き合いにだし、「ランキングから言って、世界のバスケファンは僕たちが勝つとはそんなに思っていないだろう」と冷静に語りつつ、「ただ、自分たちは大きな自信を持ってイラン戦に臨む。ファンの皆さんも同じように自信を持ってほしい」と頼もしい言葉を発する。

本人の言葉で言うところの『みなさんが知っているニック』の姿を中東の地でも見せてくれれば、自然と結果はついてくるはず。ファジーカスのFIBA公式戦不敗神話が続くことを日本のバスケファンは願っている。