アレックス・カーク

連敗阻止に桶谷HCは「アルバルクさんに勝てたのはめちゃくちゃ大きいです」

2月4日、琉球ゴールデンキングスがアウェーでアルバルク東京と対戦。最大26点のリードを奪いながら、拙い試合運びから第4クォーター終盤には一時逆転される大ピンチに陥るが、なんとか盛り返し76-74で辛くも競り勝った。

この試合、琉球はスタートからヴィック・ロー、アレン・ダーラム、帰化枠のアレックス・カークを同時起用するビッグラインナップで臨むと、前から激しいプレッシャーをかけるディフェンスにより第1クォーターだけで5つのターンオーバーを誘発するなどリズムをつかむ。そして、攻守の素早い切り替えによるトランジションから得点を重ね、27-12とビッグクォーターを作った。第2クォーターに入っても高い集中力を継続する琉球は、岸本隆一の3ポイントシュート連続成功でさらに突き放し、前半残り3分43秒で43-17と大量リードを奪う。

前半で21点差をつけた琉球だが、第3クォーターに入ると、このクォーターだけで10本のフリースローを与えるなど不用意なファウルでA東京に付け入る隙を与えてしまう。ここでA東京は10本すべてを成功することで流れを引き寄せると、第4クォーターにここまで不発だった3ポイントシュートが爆発する。さらにセバスチャン・サイズがゴール下を支配することで、完全にA東京の流れになると残り2分19秒、サイズの得点で遂に74-72とひっくり返した。

だが、ここで琉球は守備の強度を取り戻すと、A東京のミスにも助けられ残り8秒にローのフリースローで76-74と再逆転に成功。そのまま何とか逃げ切り、逆転負けをなんとか免れた。

もっと楽に勝つべき展開だったとはいえ、同一カード連敗を阻止したことに変わりはない。琉球の桶谷大ヘッドコーチも「アルバルクさんに勝てたのはめちゃくちゃ大きいです。この試合はすごく大事で、ここで2連敗するのと、1️つ勝つのでは全然違うと思います」と振り返る。

勝利と共に、今節の琉球にとって大きな収穫となったのは、優勝候補のA東京に対しても帰化枠のカークがもたらす様々なプラス効果を大きく実感できたことだ。1月31日の佐賀バルーナーズ戦で帰化選手としてデビューを果たしたばかりで、外国籍2選手と同時起用するビッグラインナップが連携不足な面は否めない。それでも初戦は20分19秒のプレータイムで7得点5リバウンド、この試合も23分16秒で7得点7リバウンドを記録した。

カークがいることでローを本職の3番ポジションで起用できる点が分かりやすい利点だが、ゴール下の堅実なディフェンス、ハンドラーの助けとなる巧みなスクリーンなど、スタッツに残らない部分での貢献も光った。そして、同点で迎えた残り40秒には、ゴール下に切れ込んだテーブス海のレイアップを見事なブロックで阻止するなど、さすがの勝負強さを見せた。

アレックス・カーク

「長い時間一緒にプレーしたメンバーたちは、僕にとって生涯にわたる兄弟です」

カークにとってA東京は、2017-18シーズンから昨シーズンまで6年間にわたって在籍した愛着ある古巣だ。だからこそ、「オフに所属チームを変えたことで、帰化申請のプロセスの時間がよりかかりました。それでも先週に申請が許可されたことで東京のファンの前でプレーできたことはハッピーです」と言う。そして、次のような思いを持ってコートに立っていた。

「僕にとってのオールドホームは(今節の会場である代々木第一体育館ではなく)立飛アリーナですが、それでもたくさんの馴染みの顔を見ることができました。リーグ屈指の2チームによる、みんなが見たい白熱した試合を見せることができました。そして1つ勝利をつかむことができたのは大きかったです」

また、カークは「いろいろな人のおかげで帰化ができました。キングスだけでなく、アルバルクの皆さんのサポートも大きいですし、感謝したいです」と語り、次のような元チームメートとのやりとりを明かしてくれた。

「いろいろな表現を教えてもらいました。小島(元基)選手にはよく『子供っぽい』と言っていましたし、平岩(玄)選手には『ニコニコしないでください』と冗談を言ったりしていました(笑)」

もちろん今のカークは、琉球のために全身全霊をかけてプレーし、チームや琉球ファンへの高い忠誠心をコート内外で示している。だが、A東京で過ごした長い年月で育まれた周りの人々との絆が、彼にとって大事な宝物であることに変わりはない。「Bリーグ連覇、アジアチャンピオンを達成するなど、長い時間一緒にプレーしたメンバーたちは、僕にとって生涯にわたる兄弟です。彼らは常に僕の人生の一部です」

こう語るカークは、次のように感謝を強調する。「過去、僕たちが成し遂げたことが思い出されました。アルバルクを去りたいと思ったことはなかったですが、今は次のステップに進むことができて幸せです。今でも東京には仲の良い人々がたくさんいます。4年、5年と住んでいた場所のご近所さん、ずっと髪を切ってくれていた理容師さんなど、この週末はお世話になった人が見に来てくれました。そして多くのファンの人が愛を示してくれたのはうれしかったです」

長らく自分をサポートしてくれた人々に健在ぶりを示したカークだが、これからは連覇を目指す琉球の切り札としての活躍が求められる。自身を含めたビッグラインナップについても「もっと練習をして連携を深める必要があります。例えば、後半は相手のゾーンディフェンスに苦しみましたし、いろいろと改善しないといけないところはあります」と、厳しい評価を下している。

ただ、同時にこれからの伸び代には大きな自信を見せる。「僕のコンディションはどんどん良くなっています。これから、チームはより強力になっていくだけですし、(ビッグラインナップで)一緒にプレーするのが楽しみです」。

帰化選手のカークがどこまでフィットできるかは、今シーズンの琉球の運命を大きく左右する要素となるだろう。それを感じさせ、多くのファンを明るい気持ちにさせた、今節のパフォーマンスだった。

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