ピック&ロールを活用した渡邉裕規の得点で栃木が持ち直す
サンロッカーズ渋谷は元NBAレイカースのロバート・サクレが合流してこれが4試合目。28日、29日のリンク栃木ブレックス戦は『サクレ』の発売元で、栃木県に本社を置くフタバ食品がゲームスポンサーになっていた。チケットは両日とも完売。この試合は3125人の観客で青山学院記念館が隅々まで埋め尽くされていた。
両チームの外国籍選手オン・ザ・コート数は「1-2-1-2」。SR渋谷はビッグマン満原優樹がインフルエンザで不在だったが、この試合は素晴らしい出だしを見せる。ベンドラメ礼生はこう振り返る。
「最近のウチの課題として、第1クォーターの出だしがあった。(前節)仙台戦の反省は相手に対して受け身になってしまっていたこと。今回は出だしから走っていこうということだった。走れば自分たちもいいバスケットができるし、その結果として相手が受け身になってくれた」
渋谷はアイラ・ブラウンが早々にオープニングショットを決めると、いきなり連続12得点のランを見せる。対する栃木はとにかくシュートが入らず。そこからフリースローで4点を返したが、残り3分6秒に渡邉裕規が決めた2ポイントシュートまでは流れの中からは得点がなかった。
ただ栃木も第1クォーターの途中から建て直しには成功していた。トーマス・ウィスマンヘッドコーチは残り6分34秒に須田侑太郎、残り5分26秒に渡邉と、ベンチメンバーをコートに送り出していた。「何か伝えたというより、交代をした。ベンチから出た選手がしっかりいい仕事をしてくれた。悪いスタートの時はパニックにならないことと、ディフェンスをしっかり頑張ることが大切。第1クォーターの失点を16で抑えたことが、その後に戻って来れる理由になったと思う」とウィスマンヘッドコーチは振り返る。
8点ビハインドを背負っていた栃木だが、第2クォーターに入ると守備の強度を強め、加えて途中出場の渡邉が得点を量産する。
渋谷のBTテーブスヘッドコーチはチームに生まれた綻びをこう説明する。「ミドル(コートの真ん中付近)のところの2対2で、ピック&ロールに対するディフェンスが良くなかった。向こうのガードをペイントエリアの深いところまで侵入させてしまった。そうすると他からヘルプが寄って、渡邊選手がオープンになる。そこで3ポイントシュートを決められた」
青山学院OBで母校への『凱旋』となった渡邉は、第2クォーターだけで3ポイントシュートを3本決める大活躍。ウィスマンヘッドコーチは渡邊の活躍を「ここで過去にもプレーした経験が今日のシュート確率につながった」と語る。これはもちろんジョークだが、遠藤祐亮も10分間で7得点を挙げ、栃木は8点ビハインドから9点リードに試合を一気にひっくり返して34-25とリードを奪った。
この試合の栃木はB1屈指のスコアラーであるライアン・ロシターが6得点にとどまったものの、8アシストを記録している。ロシターがアウトサイドを生かしてガード陣の得点を演出していた。この形を渡邉は説明する。「渋谷はサクレ選手が入ってインサイドが高いし、アイラ・ブラウン選手のブロックショットもある。ライアンのところで攻めるよりはピック&ロールとか、ドリブルからのハンドオフ(手渡し)でちょっとのズレを作って外でキックアウトという流れをイメージしながらコートに入った」
インサイドの高さと強さを生かし、SR渋谷が粘りを発揮
栃木は前半だけで13本の3ポイントシュートを放ち6本を成功させた。第3クォーターに入っても遠藤の連続得点があり、リードは14点に。ただそこから渋谷が点差を詰める。理由はインサイドの優勢だった。サクレはこの10分間で8ポイントを挙げ、残り3分19秒にはこの試合初のダンクがサクレツ。渋谷は第3クォーター終了時点で、6点ビハインド(45-51)まで栃木を押し返した。
今季の渋谷は3ポイントシュートを攻撃の軸とするチームだったが、サクレの加入でインサイドが一気に強化された。B1屈指のインサイドを誇る栃木に対して、この試合はリバウンドの本数で9本上回っている。2ポイントシュートの成功率、ペイントエリアからのポイントも渋谷が上回った。
第4クォーターに入るとすぐ、広瀬健太の3ポイントシュートで3点差まで追い上げる。そこから一進一退の攻防に。残り24秒に渋谷は広瀬の好パスからベンドラメがジャンプショットを決めてビハインドを2点に縮める(60-62)。すかさずファウルで栃木の攻撃を止めると、栃木のジェフ・ギブスがフリースロー2投のうち1本を失敗。すると渋谷は残り12秒にベンドラメがドライブからレイアップを決めて62-63まで追い上げた。
ところが65-62の場面、渋谷の攻撃に対して田臥勇太がスティールを決めて、試合は決着した。田臥がその後のフリースロー2投のうち1本を決め、さらに古川もフリースローを2本成功させた。渋谷もブラウンが意地のシュートを決めたが、栃木は68-64でタフな試合を制している。
この試合の渋谷はインサイドに強みを見せたものの、B1の最高レベルだった3ポイントシュート成功率が14.3%に止まった。テーブスヘッドコーチは「日本人選手に迷ったり、遠慮したりという部分がある。どうすれば気持ちよくシュートを打てるかという部分でもがいている」と状況を分析する。
ただ、ベンドラメはチーム状況を必ずしも後ろ向きには捉えていない様子だった。「3ポイントシュートは入っていないけれど、これだけいい試合ができた。ただ栃木のディフェンスがすごくタフで簡単にボールをもらえなかった。一人ひとりがもっとボールをもらう姿勢を作るべきだと思う。そうすればボールも回るし、3ポイントシュートも気持ちよく打てる」
渋谷は満原が不在で、3ポイントシュートも入らないという中でこれだけの試合を見せた。勝ちは逃したものの、今後に向けた手応えを得られた試合だった。
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