東京成徳大学のダブルチームをチームで攻略
ウインターカップ2023がいよいよ開幕。その初戦から波乱が起きた。大会3度の優勝を誇る東京成徳大学を、県立岡豊が接戦の末に63-59で撃破したのだ。
その原動力となったのは2年生エースの伊藤知里だ。バネのある身体能力を生かしたオールラウンダーの伊藤は、とにかく強気のアタックが持ち味。序盤から自分でガンガン仕掛け、タフなシュートをねじ込み、フリースローも獲得して東京成徳大学を守勢一方に追い込む。伊藤は前半だけで21得点を挙げてチームを牽引した。
それでも東京成徳大学もやられっぱなしではなかった。精度の高いダブルチームを伊藤に仕掛けることで県立岡豊の勢いを止め、最大11点のビハインドを詰めて接戦に持ち込む。
しかし、県立岡豊としては伊藤にダブルチームが送られるのは想定内。伊藤は言う。「ダブルチームが来たら絶対どこかは空くので、そこは自分の視野とかパスの能力が問われるところでした。でもパスばかりになってしまうと相手がどんどん詰めてくるのでドライブに行くことも大事だし、中に来られないように真ん中でドリブルをついたりして上手くかわすのも大事になります。チームとしても相手がダブルチームに来た時に全員がパスを受ける気配りをちゃんとして、その中で自分が良い判断をしていくことを心掛けました」
チームでの対策はディフェンスでも生きた。県立岡豊は一番背が高くても伊藤の170cmで、170cm台の選手を常に複数コートに送り出せる東京成徳大学とはサイズの差がある。しかし、県立岡豊は高知県内で留学生を擁する高知中央としのぎを削る中で、高さを生かした攻めへの対策を練り上げていた。身長のある選手に中でやられ、寄せたところでキックアウトのパスを出されると後手後手になってしまうが、身長のある選手にインサイドでボールを持たせない、外で持たせてパスをさばかせるディフェンスを徹底し、相手の長所を消した。
県立岡豊はこの部分で高知中央を止められずにインターハイ出場を逃している。伊藤は「インターハイまでは一つひとつのシュートにこだわって練習していましたが、インターハイ出場を逃してからは一人で守るんじゃなくチーム全員で守る練習を一番やってきました」と話す。
伊藤の個人能力で築いたリードを失った後も、チーム全員で粘り強く守ることで相手に主導権を渡さず、コツコツと得点を積み重ねていった。伊藤は試合を通じて36得点9リバウンドを記録。東京成徳大学の徹底した守備に遭い、フィールドゴール38本中13本成功(34.2%)にターンオーバー8と精度には課題は残るものの、常にアグレッシブに仕掛けることでチームにエネルギーを注入し続けるラッセル・ウェストブルックばりの働きぶりで、接戦を制する原動力となった。
「全国大会で自分たちが大差を付けて勝つことはないと思うので、接戦を勝ち切っていきたい。なので粘り強いディフェンスを心掛けていきます」と伊藤は語る。県立岡豊は次戦、神奈川県の鵠沼と対戦する。