前回大会は準々決勝で涙をのんだ大阪薫英女学院は、木本桜子キャプテンと双子の妹の桃子ら3年生を中心にウインターカップ初優勝に燃えている。サイズで劣っていてもアグレッシブなディフェンスを武器にインターハイで3位、日清食品トップリーグで4位の実績を誇る。また、前回チャンピオンの京都精華学園からは2度白星を挙げている。桜子キャプテンはコミュニケーション能力に成長の手応えを感じつつ、チームを一つにまとめている。
「へこんだ時は2人で話し合って乗り越えました」
――去年のウインターカップから新チームになって、どんな1年でしたか。
木本桜子(以下桜子) 去年のウインターカップは出場時間がなく、試合経験が少ない中でキャプテンを任され、不安でいっぱいでした。スタートの経験もない中で、試合に出た時の責任感や、チームを勝たせることを意識していましたが、4月にプレーで悩むことがあって、安藤香織先生にスタートから外されました。自分が何を武器にするかを考えさせられて、出した答えがドライブからのジャンプシュートでした。今は自信を持って打てて、チームを勝たせる選手に少しずつなれています。
インターハイは準決勝で桜花学園さんに59-74で負けてしまいました。ガードとしてコントロールできず、シュートも決め切れなかったです。気持ちが落ちている時に妹の桃子から、「薫英でバスケをやれていること、送り出してくれた方々の気持ちを考えたら、へこんでいる場合じゃない。練習せなダメやろ」と言われました。感謝の気持ちを忘れてしまっていました。立ち直れて「ウインターに向けてもう一回頑張ろう」となりました。チーム全体を見ることで責任感の辛さを知り、まとめる力、コミニュケーション能力が身に付いたと思います。
木本桃子(以下桃子) オフェンスは得点能力が高い先輩方が抜けて、島袋しか点が取れなかったので、周りが得点しないと勝てないとなりました。私はドライブが武器ですが、ドライブを止められた時にどうやって得点を取るかを考えて、外からのシュートやジャンプシュート、タイミングをずらしたドライブでねじ込んでいけるように取り組みました。トップリーグでも経験を積み、武器を考え直せたことが大きかったです。この1年、悩むことが多くて、周囲にも話を聞く中で、できている部分が見つかりました。
インターハイ、近畿大会が終わってから、へこんでいる時には姉の桜子がいてくれたから2人で話して解決できたことが大きかったです。インターハイ終了後に帰省して、思った以上に周りの人達が見てくれて、応援してくださっていると知りました。どんなにへこんでいても、応援してもらっているって思ったら、へこんでいる場合じゃなく結果を届けないととなりました。同学年が叱ってくれることもあるし、落ちこんでいる時に慰めてくれます。みんなで考えてこれたから、今があると思います。
――桜子さんのコミニュケーション能力、リーダーシップが成長した背景は。
桜子 キャプテンは先生から信頼され、チームから頼られる存在にならないといけません。下級生にとって、自分から先輩とコミュニケーションを取るのは難しいです。会話が少ない子に自分からしゃべりかけに行ったり、誰かが悩んでいると思ったら「あの子大丈夫なん?」って聞いたりします。
――双子でケンカすることもありますか。
桃子 高校に入って、寮での洗濯もご飯を食べるときも一緒で、余計に仲が深まりました。ケンカはないです。親元を離れたからしんどい時とか、ずっと一緒だから頼れます。
――桃子さんは膝のオスグッド(成長痛)に苦しんだ時期があるそうですね。
桃子 2年時のインターハイはスタートで出させてもらって、大会後に膝が痛くなって、約1カ月休ませてもらった時期があります。トップリーグと被って、何試合か欠場してしまいました。まだ、痛みが全くないわけではないんですけど、トレーニングやストレッチなどできることはたくさんあるので、練習プラストレーニングの形でやっています。
――京都精華学園に勝ったのは大阪薫英女学院だけです。負けられないチームや選手は。
桜子 京都精華さんには留学生がおるので、簡単に点は取れないんです。自分たちは身長がない分、絶対勝てるという保証はないですが、桜花さんや岐阜女子さん、京都精華さんなどの名門校には勝ちたいです。自分たちは代表に入っていないし、スーパースターでもないからこそ、対戦相手に代表選手がいたら、絶対に止めたいです。
桃子 全国的には身長が低いチームで個人のスキルもないです。初戦だって絶対に勝てる保証はないので、一戦一戦しっかり戦わないといけません。目の前の試合に集中して、40分間自分たちのバスケをしたいです。
日本一の鍵は桜子「シュート力」桃子「ディフェンスの強度」
――全国制覇するためにあと必要な要素は。
桜子 オフェンスでのシュート力です。ディフェンスでも一番大事な時に、40分間最後まで集中できていないこともあるので、そこは足りないところだと思います。
桃子 薫英はディフェンスが武器です。コートに出ている5人がしっかり構えて、助け合って守ることがまだできていません。ゾーンの時もダブルチームに行った次のパスを狙うのも、徹底できていない部分があるのでもっと強度を上げないといけません。身長が低くても身長が高い相手に対して逃げるんじゃなくて、トランジションや強いプレーをして勝ちたいです。
――お二人とも進路を大阪人間科学大学(人科)にした理由は。
桜子 一つは安藤先生が大学を見ているからです。もう一つは去年の先輩が進学していて、大学でも日本一を目指したいからです。まずは高校最後なので、安藤先生に高校で教えてもらったことを出して日本一になって、大学でもその流れで日本一になりたいです。
悩んだんですけど、桃子とは別々で決めました。お互いに将来の夢があって、初めから人科ではなかったんですけど、先生に話をしていただきました。将来の夢が助産師で、「それは大学バスケが終わってからでもいいよね」と言われ、安藤先生とそのバスケが好きなので人科に行こうと決めました。
桃子 将来の夢が看護師で、大学4年間で看護のことについて学びたいと思っていました。看護師の母もそうだけど、大人になってからでもできる部分もあります。大学の先輩方と練習すると楽しいし、寮も一緒で仲良くしてもらっています。一緒にプレーしたかったので人科に決めました。
「安藤先生は裏で褒めてくれるのがすごくいい」
――安藤先生との3年間を振り返って。
桜子 怖い印象があると思うんですけど、バスケットも人間性の部分も指導してくださるのは安藤先生だけと思うし、怒られてもその裏には自分たちを成長させたい思いががあると思います。本人の前では褒めないけど、裏では言ってくれるところがすごく良いと思います。自分たちのために人生をかけてくれる人はなかなかいないですし、教わったことをコートに出して、最後は胴上げしたいです。
――ウインターカップはどんな大会にしたいですか。
桃子 自分たちのプレーを40分間すれば、勝利はついてくると思います。やるべきことを一人ひとりが徹底して、最後はコートで全員が楽しんで勝てれば一番良い。最後は笑顔で終わりたいです。
桜子 先日、保護者さんと必勝祈願に行きました。すごく熱い方ばかりで、自分たちのためにやってくださることに感謝です。ベンチに入れない子もたくさんいます、試合前に「ユニホームを着ている15人が思いを背負ってやらないといけないし、スタートは特に、コートに立っている5人が責任を持ってやるべきことを40分間やろう」と必ず話しています。
――全国の皆さんにメッセージを。
桃子 ディフェンスでアグレッシブに前から当たることや、オフェンスでは身長は負けているけど、動き続けてタイミング良く打つシュート、ドライブを見てほしいです。応援してくれる保護者さんやチームメートの盛り上がりがあるからこそ、そのバスケができます。
桜子 今まで薫英でバスケができているのは、保護者さんや支えてくださった皆さんのおかげです。3年間安藤先生の下で学んだことをコートで出して、チーム一丸で全国制覇できるように一戦一戦全力で戦います。