桜花学園

昨シーズンまで現役Wリーガーだった桜花学園卒業生の白慶花(ペク・キョンファ)と佐藤ひかるがアシスタントコーチに就任した。井上眞一コーチと長門明日香アシスタントコーチを支え、練習にも入って指導に当たっている。インターハイ、トップリーグと優勝を逃した今年、最後の冬に向けて自身も日々学びながら、選手たちに後悔させないように成長を促している。

「選手時代に欲しかった助言ができるように心がけています」

——お二人の自己紹介の方をお願いします。

白 昨年度までWリーグのトヨタ紡織サンシャインラビッツでプレーして、昨シーズンに引退しました。今年からアシスタントコーチとして母校に戻りました。 コーチは初めての経験で、毎日が試行錯誤の繰り返しです。井上先生や長門コーチだけでなく、選手からもたくさんの刺激をもらっていて、充実した毎日を送らせてもらっています。

佐藤 昨シーズンは秋田のプレステージ・インターナショナルアランマーレに所属していました。日立ハイテククーガーズなども含め5年間プレーしていました。選手だった頃は、バスケットをしていればよかったんですけど、コーチはいろいろ考えて、対応していくのが難しいですね。

白 佐藤は優しくて気が利くし、すごい頼りにしています。コート内外、選手のサポート面でいつも助けてもらっています。

佐藤 白の良いところは、とにかく熱くて喋り続けるところです。本当に1人でずっと喋っているんですよ。内容のない話でも喋ってくるので、無視してしまったこともあります(笑)。

——コーチをやり始めて感じる、特に難しいと感じることはなんでしょう?

白 佐藤が言ったように、選手目線とコーチ目線から見るバスケットって本当に別物なんです。曖昧な表現では教えられませんし、選手時代は自分ならではの考え方とかやり方だけで問題なかったです。コーチになると選手にとって分かりやすく、個人に特化した表現の仕方も探さないといけないので難しい。毎日、本当に「難しい」って言葉が出てくるんです。あとは技術的なところに加えて、戦術、ゲームに勝つプランニングも考えないといけない。そこは今までと大きな違いで勉強中です。

——現役引退直後だからこその強みはありますか。

佐藤 選手だった頃、こういう助言をしてもらいたかったというところだったり、選手の性格に合わせたコミュニケーションを取ろうと意識しています。

——コーチをやってみて楽しいところは。

白 選手の成長を実感した時です。それとチームが勝つ、この2点ですね。

佐藤 選手ができなかったことが試合でできたり、くすぶっていた子が一皮向けたりすると、見ていて楽しいです。

——アシスタントコーチの数が一番多いです。組織として変化はありますか。

白 プレーで言うと、井上先生以外に長門コーチ、私、佐藤がいて、単純に選手を見る目が増えます。3人のポジションがガード、フォワード、センターと分かれているので、ポジションに特化したことを伝えられるのは大きな強みだと感じています。私と佐藤が昨年まで現役でやっていたので、Wリーグで学んだ技術と経験を井上先生と長門コーチが持つ長い経験に織り混ぜながら教えられるのは、桜花学園ならではの強みなのではないかと思います。

桜花学園

「ビッグマンのメンタルをフォローしてあげたい」

——役割分担はどのようにしていますか。

佐藤 ポジション的にフォワードという幅広いところでやっているので、2番、3番、4番を基本的には見ます。全体を見て、試合に出られない選手と一緒に自主練習しています。チームの地力を上げるためには彼女たちの成長が絶対に必要なので。

白 もちろん全体を見るんですけど、特にインサイド陣を中心にオンコートもオフコートも見ています。意識しているのは、選手の技術を教えるのもそうですし、その子たちとコミュニケーションを取ること。身体が大きいが故に悩むところもあったりするので、ビッグマンならではの気持ちを考えたり、そこは気を付けるようにしています。私が現役で出会った中では、ビッグマンは結構、心優しいというかあまりガツガツ言わない。どちらかというと、遠慮しがちな性格の子が多いのかなと。率先してリードするというより、1歩下がる子の方が多いイメージがあります。

——現役を引退されたばかりで、生徒の練習相手にもなっているようですね。

白 留学生の高さやフィジカルに慣れるのが大事なので、私は入れる限り入っています。対留学生の練習メニューに入らなくても、ビッグマンは身体の当て方やコンタクトが大事になるので、直接体身体で表現しながら教えています。

——トップリーグはいかがでしたか。

白 インターハイではコーチとして、選手に対してのベンチワークなど、もうちょっとできたんじゃないかという反省があったので、その反省を踏まえてトップリーグではできることを試しました。最終戦はチームとして成長を感じたところもあれば課題も見つかったので、そこに向けて次にどうするのか明確にしていきたいです。

——トップリーグを経て、優勝するために強化したいポイントは。

佐藤 基礎的なところです。前半はできていても後半にできないことが増えたり、40分間を通してチームで徹底しないといけないことができない弱さがあります。トップリーグの最終戦での1点差に表れたと感じています。

白 正直、勝てる試合だったのに最後の最後に逆転されてしまった。選手もコーチ陣としてもすごく悔しかったです。でも、選手は「ウインターカップでは必ず勝つ」とシフトチェンジをしてくれました。選手たちの中でもチームをどうやって高めていくか、以前より喋る機会が増えたと思います。コーチとしては技術や戦術で、細かい修正が必要だと照らし合わせている最中で、それをどう練習に組み込んでいくかを、確認しています。

桜花学園

「学生時代に学業ができなかったので文武両道になってほしい」

——描いているコーチ像や将来のビジョンは。

佐藤 将来的なことは考えず、井上先生と長門さんを手伝って、支えたいという気持ちで入ってきました。もちろん2人だけじゃなく、みんなをサポートできればと。 コーチ像とはかけ離れているかもしれないですが、私が高校生の時に学業が全然できていなかったので、文武両道になってほしいと思っています。桜花だからこそ挨拶や礼儀を大事にし、みんなの見本になってほしいですね。

白 引退したらコーチになりたいと思っていました。引退を選択してご縁があって、母校に戻ってきましたが、桜花学園というチームがすごく好きというのと、井上先生と長門コーチを助けて、勝利に貢献したいと思ったからです。2人の下でコーチ業を学びたかったですし、将来はバスケットを教える中で、もっと楽しさを伝えていきたい。「高校3年間が終わっても、バスケットを好きな気持ちを絶対に忘れさせない」と井上先生もずっとおっしゃっているので、その思いを途切れさせないよう、バスケットを愛し続けてくれる選手を育てていきたいです。佐藤も言ったように、魅力のある子に育つ土台を作れるコーチになりたいです。

——では最後に全国のファンにメッセージを。

白 井上先生はかっこいいことではなく、基礎や基本を大切にします。その精度が高いのが桜花学園のスタイルです。桜花らしさ、原点回帰、そこにフォーカスしていきます。ポイントになるゲームはいくつかありますが、どのチームが相手でも、桜花らしいバスケットで一戦一戦勝ち上がっていきたいと思っています。

佐藤 高校バスケならではの楽しさ、魅力が詰まっている大会なので、頑張っている高校生を見て、パワーをもらえたと感じてほしいです。集大成になる熱い戦いが繰り広げられます。高校生の熱い気持ちを感じ取ってください。