今村佳太

残り5分で17点ビハインドを追いつき、今村の決勝弾で延長の激闘を制す

12月3日、琉球ゴールデンキングスはアウェーでシーホース三河と対戦した。前日に73-93と大敗を喫した琉球は、この日も第4クォーター残り5分で17点の大量ビハインドと劣勢に立たされた。しかし、ここからディフェンスで流れを引き寄せてオーバータイムに持ち込むと、同点で迎えた残り3秒に今村佳太が決勝弾を沈め、84-82の劇的な勝利を収めた。

琉球はインサイドアタックを決め切れずオフェンスが低調な中、ディフェンスで踏ん張り34-28とリードして前半を終えた。しかし、後半の出だしでいきなり0-8のランを食らうと、そこから三河に主導権を握られた。

「後半になって各選手の遂行力が少しずつ落ちていました。久保田(義章)君とビッグマンによるピックプレーで、かなり突破されてしんどい時間帯になっていき、セカンドユニットが出た時に一気に17点差となりました」

こう桶谷大ヘッドコーチが振り返ったように、琉球は第4クォーター残り5分で53-70と大量リードを許す。だが、この苦境でも選手たちは全くあきらめていなかった。ディフェンスの強度を取り戻すと、三河のビッグマンがファウルトラブルに陥り守備で激しく行けない隙を突き、インサイドのジャック・クーリーにボールを集めて徐々に点差を縮めていく。

桶谷ヘッドコーチは当時の状況をこう語る。「あそこまで行ったら開き直るしかないです。やれることは限られているのでそれをやり続けるだけでした。サッカーでいったら0-2の感じで、2点差だと相手も余裕はありますが、1点差にすると相手もプレッシャーになるので、そこから同点にいける。一桁差になった時には三河さんの方がプレッシャーを感じていて、特定の選手しかアタックできない感じになっていました。そうなったらこっちのものかなと」

実際、琉球は残り3分で61-70と詰め寄ると、さらに勢いを加速させる。そして残り21秒に今村が3ポイントシュートを決めて72-72と追いついた。オーバータイムでは残り2分半で6点リードから残り12秒に西田優大の3ポイントシュートで追いつかれるが、最後に今村がしっかりとやり返して、王者の底力を見せた。

今村佳太

オーバータイムだけで8得点「やり続けるメンタリティーが良い結果に繋がった」

大逆転劇の立役者である今村は23得点8アシスト2スティール2ブロックを記録。そして第4クォーター、オーバータイムで2つのビッグショットを決め、オーバータイムだけで8得点とここ一番での勝負強さを示した。

「自分たちがやり続けることができなくて17点のビハインドを背負ってしまった部分はあります。ただ、その中でもカムバックして、チームとして勝ちに繋げられたのは大きいです。レギュラーシーズン60試合の中の1試合ではありますが、この経験は大きい。これを次に繋げていかなければいけないと感じています」

このように今村は、今回の逆転劇の意義を語る。そして、第3クォーターに3ポイントシュート5本すべて失敗のところから、終盤にしっかりと立て直した自身のプレーをこう語る。「自分の中で、タッチが悪いとはあまり思っていなかったです。入ったと思ったシュートがリングに嫌われていた感覚は少しあり、打ち続けたら入ってくれると思っていました。そしてアグレッシブさをなくすと、どんどんオフェンスが後手に回ってしまいます。それでは相手にとって脅威にならない。自分のことにフォーカスすることが大事で、やり続けるメンタリティーが良い結果に繋がったと思います」

また、決勝弾はクーリーのスクリーンをうまく活用したミドルシュートだったが、次のように相手のディフェンスの対応を冷静に把握していた。「アタックと3ポイントシュートを打ち続けていた中で、ミドルの位置のプルアップは三河さんがケアしていなかった部分かなと。だからあのシュートはアリだと、ハイピックからの駆け引きで思っていました」

この試合はインサイドに大きなアドバンテージが生まれており、最後もクーリーやダーラムのペイントアタックを選択してもいい状況だった。しかし、今村には王者のエースとしての強い責任感と覚悟がある。そしてエースの重責を担える実力があることをあらためて証明した。

「今日に関しては、自分が絡んだオフェンスの質は悪くなかった。いつか自分のターンが来ると思って準備をしていました。もちろん相手のファウルトラブルがあったので、インサイドの選択肢がなかったことはないですが、自分が決め切る思いはありました。自分は逃げずに立ち向かっていきたい。今年はより質を高めていきたいです」

今村佳太

連敗しない底力「同一カード連敗を喫することの重みを分かっているのが大きい」

今回の大逆転劇によって、琉球は2021-22シーズンから続く同一カード連敗なしの記録を継続している。負けたら終わりのプレーオフではなく、60試合と長丁場のレギュラーシーズンでは時に集中力を欠いたまま終わってしまう週末もあるものだ。しかし、琉球はそういった脆さ、不安定さが極めて少ない。

桶谷ヘッドコーチは連敗を阻止できたことの意味は大きいと語る。「(後半に崩れて大敗した)昨日と同じような展開になっていたので、そのまま終わっていたら次の試合から持ち直すのは難しかったです。そういった意味でも、選手たちが最後までやり続けることを見せてくれたのは大きいです。(突き放された後の)タイムアウトで僕が円陣に入る前、『まだまだ戦えるよ』と話していたので、全然あきらめていないのは見えていました」

そして、今村は「今日は本当にしんどい展開でした。ただ、チームとして同一カード連敗を喫することの重みを分かっているのが大きいと思います」と、勝ち続けるために何か大事なのか意識できていると語る。「自分たちが見据えているところに対し、どういうプロセスを踏んでいかないといけないかを常にキングスは考えています。だから1試合、1試合を大切にしていく。チーム全員にその意識があります」

今節から琉球はクーリー、ダーラム、ヴィック・ローとシーズン開幕前に想定していた外国籍トリオで初めて試合を戦った。バイウィーク期間中にじっくり練習ができたといっても、実戦不足からまだまだコンビネーションがしっくりいっていないことを露呈し、チームの完成度においては他の強豪チームと比べても劣っている面は否めない。それでもリーグ上位の成績をキープできているのは勝者のメンタリティーと強固なチームカルチャーを持っているからこそ。それを示す一戦となった。