約20分の出場時間でFG成功率72%の20得点
川崎ブレイブサンダースは11月11日、12日の群馬クレインサンダーズ戦に連勝してバイウィークを迎えた。第1戦を84-63で快勝して迎えた第2戦は、前半こそディフェンスから立て直しを計った群馬に苦戦したが、第3クォーターに一挙30得点を挙げて突き放し、71-61で勝利した。
佐藤賢次ヘッドコーチは試合後、「良いオフェンスが作れない中でも、ディフェンスの気持ちを切らさなかったことが一番の勝因だと思う」と振り返ったが、チームオフェンスが機能しない状況を個の力でつなぎ、チームに勢いを与えた藤井祐眞の活躍も大きなポイントだった。
この日の藤井は、約20分のプレータイムで20得点(うち3ポイントシュート2本)4アシスト2スティールという内容。切れ味鋭いドライブからストップジャンプシュートを確実に沈め、8/11本(72.7%)という素晴らしいフィールドゴール成功率を残した。
「第3クォーターにすごくいいバスケットができて勝ちにつなげることができた」と試合を振り返った藤井は、「(前半は)時間がなくなってきたら自分で打ち切ろうっていう思いでやっていましたが、後半はニック(・ファジーカス)との2メンゲームで起点を作ってシュートまで持っていけました」とコメントし、「今シーズンはまだスリーの調子が上がりきっていないですが、それでも自分が決めきらないといけないと思っているし、打たなきゃ入らないと思って、思いっきり、自信を持って、しっかり打ち切りたいと考えていました」と続けた。
「やられたらちょっとムカつく」先輩・辻直人との相乗効果
チームハイの得点を挙げた藤井は、この日のMVPに選出された。ヒーローインタビューで自身のパフォーマンスについて問われると、かつて川崎に在籍していた群馬・辻直人の名前を挙げ「辻さんと練習でやり合っていた頃を思い出したので、辻さんのおかげです」とスピーチ。ファンを湧かせた。
取材で、この言葉に先輩への多少のリップサービスも含まれていたかと尋ねると、藤井は「いやいや、それはないです」と笑って否定した。
「(辻に)やられたらちょっとムカつきますし、(自分が)やったら『もっとやったれ』っていう気持ちになるので、こういう気持ちにさせてくれた辻さんには感謝します。チームメートだった頃は『やったるぞ』みたいな時の辻さんをディフェンスするのが好きでしたし、やられた後にやり返すのも好きでしたし、今日は本当に懐かしいなっていう感じでした」
藤井は拓殖大を経て川崎に入団した2014年から、同ポジションの辻、篠山竜青らの薫陶を受けて力をたくわえ、2021-22シーズンにシーズンMVPに上り詰めたというストーリーを持っている。6年前に実施した取材で藤井は、自主練中に辻からボールハンドリングのメニューを指示され、ミスをすると盛大に野次を飛ばされると笑っていた。
確かにこの日の藤井のプレーには、頼もしい先輩たちに支えられ、のびのび暴れて回っていた頃の彼の雰囲気を久しぶりに感じた。試合後、藤井は辻に体当たりをかましていたが、「ただじゃれてただけというか、個人的な感情なので気にしないで下さい」と言った後に「辻さんに22点とられたのが悔しかったっす」と理由を教えてくれた。
仲間たちの成長で変わった心境「行くときは行く、託す時は託す」
控え選手の得点力に課題を抱えていた川崎が今シーズン、これを改善しつつあることは筆者の執筆記事で何度か紹介しているところではあるが、藤井も同様の意見を述べ、自身のプレーの考え方に変化が表れていると話す。
「今年のチームは本当に、誰がどこでやっても大丈夫というか。昨日や水曜のゲーム(信州ブレイブウォリアーズ戦)に関しても、スターティングファイブより控えが躍動してチームの勝利に貢献してくれましたし。今までニック(・ファジーカス)に頼ってた部分が、色々な選手間で色々なオプションができて、色々な起点を作れるようになっているので、僕も『自分が行くときは自分で行くし、味方に託す時は託す』という感情、選択でプレーできていると思います。ディフェンスでも、川崎ずっと掲げてきた『前から当たる』という姿勢を控えのメンバーが見せてくれているから、チームのリズムが取れてるのかなって思ったりもします。控えのディフェンスはすごい強みですし、本当に良いエナジーを与えてくれて、良い展開を生んでくれています」
無尽蔵のスタミナと頑丈な身体を持ち、10月末にB1初となる通算400試合連続出場を達成したばかりの藤井は、どれだけ長くタフにプレーしても、プレーのミスやアスレチック能力の低下といったわかりやすいところで疲労を感じさせる選手ではない。しかし昨シーズンはチームとしての攻めどころの少なさを突かれ、徹底マークを敷かれていたせいか、本来のキレや感覚が失われていると感じる試合も多かった。
今シーズンは控え選手の台頭によって、藤井のプレータイムが昨シーズンよりコンパクトになることが予想され、ファジーカスと藤井に集中しがちだったオフェンスも、ディフェンスが的を絞りづらいスタイルに変化しつつある。かつて『最恐のシックスマン』として猛威をふるった、一瞬で流れを変える藤井の強烈なパワーが発揮される試合をより多く見られることに期待したい。
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