「後半は少しずつ島根さんに気持ちの良いプレーをさせないように仕向けられた」
11月11日、琉球ゴールデンキングスがホームで島根スサノオマジックと対戦。序盤の劣勢を琉球の根幹であるタフなディフェンスによって盛り返すと、岸本隆一、今村佳太の中心選手が持ち前の勝負強さを発揮し、80-77で激戦を制した。
試合の立ち上がり、琉球は安藤誓哉、10月25日以来の復帰となったペリン・ビュフォードと島根の2大エースにプレッシャーをかけられず彼らに次々と得点を許して先手を取られる。第2クォーター序盤には19-30と劣勢が続くが、終盤にはボールムーブが活発となりアレックス・カークを中心にインサイドで得点を重ね38-40と肉薄する。
後半に入っても一進一退の攻防が続くが、琉球はタフショットを沈めるビュフォードの決定力に苦しめられ、オフェンスではイージーシュートを決め切れないなど流れを引き寄せられない。だが、守備で踏ん張ると、残り2分で4点のビハインドを残り1分で75-75と追いつく。そして迎えた残り30秒、この時点でフィールドゴール5本全て失敗の0得点だった岸本隆一が、値千金の3ポイントシュートを成功。「ずっとシュートが入っていなくても最後に任せると、決める隆一の勝負強さはキングスに欠かせないものだとあらためて思いました」と桶谷大ヘッドコーチも絶賛する岸本のビッグショットが決め手となり、琉球が激闘を制した。
この試合、琉球のエースである今村佳太は14得点4リバウンド3アシストを記録。特に第4クォーターは残り5分から登場すると、攻撃の起点を担って6得点を挙げ、守ってはビュフォードのマークにつくなど、攻守で重要な仕事を遂行した。
「試合の入りの部分で反省点が残りました。前半は自分たちがアジャストしきれず、相手に気持ち良くプレーさせてしまいました。第2クォーターでカムバックし、後半は少しずつ島根さんに気持ちの良いプレーをさせないように仕向けられたのは良かったです」
このように振り返る今村だが、彼のプレーで目立ったのはゴール下への積極的なドライブだった。3ポイントシュートは5本全て失敗とシュートタッチは良くなかったが、2点シュートは11本中7本成功と確率良く決めた。そして相手守備を引きつけての効果的なパスなど、攻撃の起点としても見事な活躍だった。
桶谷HC「彼はオフェンスだけでなく、ディフェンスでもエースと思っています」
この試合に限ったことではなく、今シーズンの今村はペイント内で、フローターといった相手をかわすシュートではなく、レイアップを打つ場面が増えている。その結果として、2点シュートの成功率はここまで57.4%と高確率だ。レイアップを増やしている意図を「今シーズンは特にフローターよりも、ファウルをもらえるシュートを打つことを強く意識しています」と今村は語る。また、この試みがうまく機能している理由をこう語る。
「結構、実現できている要因としてオフのトレーニングによって、仕掛ける時のスピードがすごく上がっていると思います。それでウイングプレーヤーをはがして、ビッグマンを相手にする状況に持っていけるのはトレーナーとやってきた成果が出ています。そこに自信を持てているのが、成功率アップに繋がっていると思います」
そして、得点以外でもオフェンスで良い影響を与えたいと強調する。「外のシュートが入れば、相手はより守りづらくなるかと思います。ただ、自分の武器がシュートだけではないことは理解しています。アタックすれば守備が収縮して、チームにとって大きなスペースを作り出せることに自信を持っています」
こうして今村はオフェンスを牽引しつつ、守備では島根のエースであるビュフォードのマークにつき続けた。押さえ込んだとは言い難いが、残り1分から2ポゼッション連続でシュートミスを導き、守備でもここ一番で大きな仕事を遂行した。
オフェンスの要を担っているだけに、守備では負担を減らす起用法も考えられるが、桶谷ヘッドコーチはこのように今村への絶大な信頼を語る。「一番ディフェンスがうまい選手は今村なので、彼が出ている時間帯はビュフォードにつけることは決まっていました。彼はオフェンスだけでなく、ディフェンスでもエースと思っています。点を取るだけでなく、相手のエースの得点も抑えるのがエースの仕事です。この役割をこなすことが彼の宿命です」
この指揮官の大きな期待を、今村は正面から受け止めている。「キングスにいる以上、そして自分のなりたい選手像としても、攻守の両方でしっかり結果を残せる2ウェイ選手になりたい。そこにはプライドを持っています」
また、ビュフォードのような外国籍のトップ選手とのマッチアップも「世界に通用する選手になりたいのでビュフォード選手に限らず、たくさんの外国籍ウイングプレイヤーが増えている中、どこまでできるのか楽しみながらやらせてもらっています」と、歓迎するたくましさを見せる。
東アジアスーパーリーグの影響で、週3日の試合が続く過密日程でありながらも、琉球は好成績をキープしている。それは外のシュートが入らなくてもオフェンスで高い影響力をキープするなど、攻守でよりすごみを増している今村の存在があってこそなのは間違いない。
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