強固なディフェンスから怒涛のトランジション、三遠が宇都宮に快勝
三遠ネオフェニックスは11月4日、アウェーで宇都宮ブレックスと対戦した。中地区1位の三遠と東地区2位の宇都宮という上位対決となったが、強度の高いディフェンスを遂行し続けた三遠が89-73で快勝した。
序盤からアウトサイドのワイドオープンを簡単に作らせない宇都宮のディフェンスの裏をかくように、三遠はデイビット・ダジンスキーや佐々木隆成がインサイドアタックから連続得点し先行する。さらにインサイドを固めてDJ・ニュービルのドライブをしっかり弾き返すなど、宇都宮に流れをつかませないディフェンスが光った。オフェンスリバウンドを連続で許して追い上げられるも、セカンドユニットのセットオフェンスが効果的にハマり、徐々にリードを拡大。佐々木が3ポイントシュートやドライブで得点し、攻守でチームが連動するバスケを展開し23-16で第1クォーターを終える。
第2クォーター、追い上げを見せたい宇都宮に対して、三遠はダジンスキーの3ポイントシュートで出鼻を挫く。しかし、グラント・ジェレットの3ポイントシュートとギャビン・エドワーズのスティールからのニュービルのアタックで連続得点を許し一気に点差を詰められ、三遠は堪らずタイムアウトを要求。タイムアウト明けから、トランジションの仕掛け合いとなるが、2分半に渡って互いに得点できない膠着した展開が続く。そして、コティ・クラークが痛恨の個人3つ目のファウルを犯すと、最高潮の盛り上がりを見せるブレックスアリーナの大歓声の中、比江島慎に3ポイントシュートを決められ、ついに同点に追いつかれてしまう。それでも、三遠は速い展開でのインサイドアタックを強調したオフェンスで攻め立て、40-34と再び突き放して前半を終えた。
後半開始早々、サーディ・ラベナとダジンスキーが連続で3ポイントシュートを成功させて、リードを13点に拡大。最高の出だしとなった三遠は強固なディフェンスとトランジションでさらに連続得点を挙げ、後半開始わずか2分強で2つ目のタイムアウトを取らせた。
13-0のランで宇都宮をパニックに陥らせると、さらにラベナと佐々木の得点でリードは20の大台へ。渡邉裕規や遠藤祐亮の3ポイントシュートで点差を詰められるも、強度が上がった三遠のディフェンスは簡単に崩れない。その後も大浦颯太が連続で3ポイントシュートを沈めるなど、28-16のビッグクォーターを作ることに成功し、大量リードを奪って最終クォーターを迎える。
その後も攻撃の手を緩めない三遠は細川一輝とクラークの3ポイントシュートや佐々木のドライブからの得点など、それぞれが持ち味を存分に発揮して得点を続ける。ジェレットのアリウープや比江島の3ポイントシュートなど宇都宮にビッグプレーを許し、11点差まで迫られる場面もあったが、しっかりとゲームをコントロール。ディフェンスでは要所を締め、オフェンスでも得点を分散させて最後までディフェンスの的を絞らせずに、三遠が上位対決を制した。
「強豪チームと対戦する時には、自分たちの強みを出していくことが必要」
「ディフェンスの戦略を選手たちが遂行してくれたことで試合に勝てました」と試合後に大野篤史ヘッドコーチが語ったように、強固なディフェンスをベースにしてリズム良くオフェンスを展開できたことが三遠の勝因となった。
中でもニュービルや鵤といった宇都宮のオフェンスの起点となる選手とマッチアップし、仕事をさせなかったラベナの活躍は目を見張るものがあった。試合前の準備が今回のパフォーマンスに繋がったとラベナは言う。「たくさんビデオを観て、個人の特徴を研究していたので、それを遂行できたのは良かったです。ただし、相手も特別な選手なので、集中力を高めて的確にしっかりとした動きをしながらアドバンテージを作れるようにディフェンスをしました」
ラベナはオフェンスでもチームハイの18得点を記録。特にトランジションの意識やリングに向かっていくアグレッシブさは宇都宮を大いに苦しめた。「自分の強みをしっかり生かしていこうと前回の練習でヘッドコーチと話しました。自分の強みはペネトレートやトランジションで、自分が自分の仕事をすればチームメートもオープンになることが分かっていました。強豪チームと対戦する時には、自分たちの強みを出していくことが必要なことだと思っています」とラベナは振り返る。
ラベナの話を聞くと『準備』に重きを置いていることが伝わってくる。プロアスリートとして当然のことではあるが、この準備を行うことが「チームの今の自信に繋がっています」と続ける。「それと同時に目の前にあるチャレンジングなことを受け止めて、実行することが必要です。今日であれば、相手のキープレーヤーとマッチアップしストップするということ。自分の中でその挑戦を受け入れて、いつも以上の力が出せるようにしました」
三遠はこの試合で8連勝を飾り、Bリーグ開幕以降の連勝記録を樹立。9勝1敗で中地区単独1位をひた走っている。好調の要因をラベナに聞くと、チームバスケが機能しているからと答えた。「一人ひとりの選手が自分の役割を果たしていることに尽きると思います。多彩な選手が揃っているので、あれもこれもしたいという気持ちがあるかもしれませんが、それぞれが自分の持ち味を発揮することでチームメート同士で相乗効果が生まれています」
振り返ると、ラベナが三遠に加入した2020-21シーズンから2シーズンはチームとして低迷し、日本でのキャリアは苦しいことが多かった。それでも今はラベナ自身が生きる環境とチームメートを得て、伸び伸びとプレーしている。そして、その姿に多くの三遠ブースターが熱狂している。これまで見たことがなかった景色を見ているラベナと三遠のさらなる躍進に期待せずにはいられない。