八村塁

文=神高尚 写真=Getty Images

ドラフトにエントリーすれば1巡目指名が確実視

ゴンザガ大で活躍を続ける八村塁は、今ではアメリカ大学バスケのトップスター選手として注目され、ドラフト予想サイトでは高ければ5位指名、低ければ20位くらいと評価に多少の幅はあるものの、ドラフトにエントリーすれば1巡目指名が確実視されています。

NBAのドラフト上位では『ワン&ダン』と呼ばれ、大学に1年だけ通ってアーリーエントリーした選手が多く指名されます。ゴンザガ大で八村の同級生だったザック・コリンズも1年生のシーズンを終えると、トレイルブレイザーズにドラフト10位で指名されました。ゴンザガ大では主に控え選手だったコリンズですが、その潜在能力を高く評価されたのです。

今年のドラフトもレブロン・ジェームスの後継者と呼ばれるザイオン・ウィリアムソンを始めとして、多くの有望な1年生が上位指名されるでしょう。そんな『ワン&ダン』には、現時点での実力よりも素材型として育成することを前提として評価される選手も少なくありません。彼らに比べると3年生の八村は『より完成された選手』と見なされ、即戦力を獲得したいチームから注目を集めることになりそうです。

今シーズンの八村はショートレンジのシュートを武器に平均20点以上を記録し、フィールドゴール成功率やフリースロー成功率も高く、アウトサイドプレーに対応できるスピードとシュート力の改善を見せています。一方でリバウンドやブロックではトップクラスとは言い難く、NBAのビッグマンとしてはサイズが小さいこともあり、強力なセンターがいるチームのパワーフォワードが最もフィットしそうです。実際に予想サイトではペリカンズ、ジャズ、ヒートなど、オールスタークラスのセンターがいてプレーオフを争うチームが挙げられています。

素材型ではなく即戦力、強力なセンタープレーヤーと組み合わせる相性の良さ。そんな観点から、現実的に指名がありそうで、八村の能力を生かせそうなチームを予想します。

ペリカンズ アンソニー・デイビスとのデュオ誕生?

いわずと知れた最強ビッグマンのアンソニー・デイビスがオールラウンドな活躍をするチームです。デイビスとニコラ・ミロティッチ、ジュリアス・ランドルの3人を中心としたオフェンスを展開していますが、層が薄くベンチメンバーに課題があるため、即戦力でスモールフォワードもこなせるであろう八村は魅力的です。

ミロティッチの契約が今シーズンまでという事情も含めて、指名には現実味があります。一方でアンソニー・デイビスはチームがプレーオフに進めなかった場合にFAになる権利を行使する可能性が高くなり、再契約が不透明になっている可能性もあります。そうなると再建も見据えて素材型の選手を優先し、八村を避けるかもしれません。

ネッツ スモールラインナップで機動力を生かす

ネッツのパワーフォワードはチームメートから「シューティングガードよりも小さい」と笑い話にされるランディ・ホリス・ジェファーソンですが、サイズに関係なくどこでも守れる能力を重用されています。スモールラインナップを多用し、アウトサイドでもインサイドでも選手の特徴に合わせたプレーをさせるため、広いスペースを動き回る八村の能力をうまく引き出してくれるはずです。

ディアンジェロ・ラッセルやスペンサー・ディンウィディーといったアシスト役のポイントガードがいることも八村にとって良い影響を与えてくれそうです。チームも絶好調でプレーオフ圏内に上がってきており、素材型よりも即戦力が欲しいチーム事情にも適合します。むしろ好調すぎて指名順位が下位になりそうなので、そこまで八村が残っているのかどうか。

ジャズ ストックトンに続く『ゴンザガの星』に?

ジャズのシステマティックなバスケットは個人の高い判断力を必要とするため、ドラフトでも戦術理解度の高い『完成された選手』が好まれます。ルディ・ゴベアを中心としたディフェンスが特徴ですが、ビッグマンが少ないチーム事情もあり、複数の役割をこなしているベテランのデリック・フェイバーズの後釜は欲しいはずです。

直近の一巡目がドノバン・ミッチェルとグレイソン・アレンというガードだったこともあり、もしも八村が残っていれば指名する可能性は高いと言えます。レジェンドのジョン・ストックトンもゴンザガ大出身なので、そういう意味でもプラスの注目を集めるのではないでしょうか。

セルティックス 優勝を狙うチームの即戦力候補に

スモールラインナップを多く使うセルティックスでは、シュート力がありインサイドでも頑張ることのできる八村はフィットしそうです。アル・ホーフォードの役割をこなせるベンチメンバーが足りないチーム事情もあり、優勝を目指す中ではルーキーといえども即戦力候補になり得る選手を指名したいでしょう。

加えてセルティックスは複数の1巡目指名権を保持しており、八村への評価が高ければトレードなどを使って獲得に動きやすい状況です。一方でその指名権を使ってアンソニー・デイビスを狙う噂もあり、その動向次第では狙いたい選手も変わってきます。

NCAA屈指の強豪校ゴンザガ大のエースとなり、ここまで結果を残している八村への注目度は高く、多くのスカウトが観戦に来ています。ドラフトへエントリーすれば指名されるのは確実ですが、その前に全米が注目し大きな盛り上がりを見せるNCAAトーナメントが待っています。『マーチ・マッドネス』(3月の狂気)と呼ばれるここで勝負強さを発揮するとさらに高い評価を得ることになります。

近年のNBAはチームを再建へ一度舵を切ればトレードで大幅に選手が入れ替わり、それに関連して別のチームの状況も大きく変化します。2年前のドラフトではジミー・バトラー関連で指名権と若手選手が動き、またドノバン・ミッチェルに注目したジャズはその時点では大きすぎると思われた対価を払ってトレードを成立させました。NCAA屈指のスター選手である八村を未来に組み込むのはどこのチームなのか。日本で注目されている以上に、その動向は注目されています。