デニス・シュルーダー

「毎日、自分がなれるベストの人間でありたい」

デニス・シュルーダーは今夏のワールドカップでドイツ代表を初優勝に導き、大会MVPを受賞した。このオフにはレイカーズを離れ、2年2600万ドル(約35億円)の契約を結んでラプターズに加入している。

ワールドカップで自信を高めたシュルーダーは、興奮とともに新たなシーズンの開幕を迎えようとしている。彼のモチベーションが上がっているのは、指揮官のダーコ・ラジャコビッチが自分の能力を信頼してくれるからだ。

ラジャコビッチはかつてサンダーのアシスタントコーチを務めていた。シュルーダーはNBAキャリア6年目を迎えるタイミングでホークスからサンダーに移籍してラジャコビッチと出会った。「オクラホマシティでは本当にお世話になったんだ」とシュルーダーは当時を振り返る。「移籍して一番最初に食事に誘ってくれたのが彼で、そこから家族ぐるみでの付き合いが始まった。練習では厳しかったけど、試合会場では子供たちを構ってくれた。彼はすごく現実的で、全員に責任を背負わせるタイプ。僕も同じだから気が合うんだろうね」

そしてラジャコビッチは「彼は自分が中心に据えられたドイツ代表で本当に良いプレーをしていた。先発したりしなかったりの立場に置かれるより、そちらのほうがずっと良いプレーができるはずだ」とシュルーダーへの信頼を語る。

シュルーダーはホークスで5シーズン、サンダーで2シーズンを過ごした後、レイカーズ、セルティックスとロケッツ、再びレイカーズと毎年のように移籍してきた。実力は認められても信頼されるには至らず、既存の主力選手の穴を埋める役割を与えられて出場機会が安定せず、特にレイカーズでは2回とも結果を残したにもかかわらず大きな契約を得るには至らなかった。そうした苦境が3年間も続いた後だからこそ、シュルーダーは信頼できるヘッドコーチの下でプレーできることに大きな高揚感を抱いている。

シュルーダーはフリーエージェントで移籍したフレッド・バンブリートの後任として先発ポイントガードを任されることになるが、それ以上の役割も担うつもりだ。「僕は毎日、自分がなれるベストの人間でありたい。チームメートを助け、チームを良くしたい。(パスカル)シアカムやOG(アヌノビー)はNBA優勝経験がある。僕はワールドカップで優勝した。みんな互いに助け合い、高め合うチームワークを築きたい」

「バスケですべての試合に勝つなんて不可能だけど、それでも僕はすべての試合でプレーして、全部勝ちたいと思う。チームで良いケミストリーを築くことができれば、すべての試合で勝つチャンスはあると思っているよ」

もっとも、ラプターズの評価は必ずしも高くない。優勝コーチのニック・ナースが去り、ヘッドコーチ初経験のラジャコビッチが後任となること。これまで『チームの顔』だったバンブリートが去り、フロントとの関係があまり良いとは言えない主力のシアカムやアヌノビーがこれに続く可能性があって、目の前の試合に集中しづらい状況にあること。これまでラプターズを支えてきたチームの結束は緩みつつある。シュルーダーはそんなチームを引き締め直し、再び東カンファレンスの強豪へと浮上させられるか。スコアラーやプレーメークの能力以上にリーダーシップが問われるシーズンとなるが、彼はその役割を喜んで受け入れるはずだ。