ディアンドレ・エイトン

モンティ・ウィリアムズとの確執、ファンから愛されないドラフト1位指名選手

サンズでの5年間、ディアンドレ・エイトンは評価を勝ち取れなかった。2018年のNBAドラフト全体1位指名を受けてサンズに加わったエイトンは、ハードワークに欠けるチームでゴール下での守備とリバウンドを一手に担い、勝てなかったサンズが優勝候補へとステップアップするのに貢献してきた。

ただ、ディフェンスでの貢献はファンには理解されづらい。デビン・ブッカーの華麗な得点や、プレーの端々にインテリジェンスを感じさせるクリス・ポールのプレーメークと比べると、個人で仕掛けるのではなく味方との連携からイージーシュートを淡々と決めるエイトンのオフェンスは地味で、スタッツを残していても評価は上がらなかった。

好不調の波が大きく、肝心のポストシーズンに調子が上がらないのは彼の弱点だが、ゴール下の汚れ仕事をこなしてきた貢献はあまりに軽視された。2年前のオフ、同じ2018年のNBAドラフト組で、3位指名のルカ・ドンチッチ、5位のトレイ・ヤング、11位のシェイ・ギルジャス・アレクサンダー、14位のマイケル・ポーターJr.がマックス契約での延長を決めた一方で、エイトンにはマックス契約が提示されなかった。この時点で「僕も同じようにリスペクトされたい」を本音を漏らしたことで、ファンの反感を買うことになった。

ただ、流れが変わる気配がなかったわけではない。昨シーズンまでチームを率いたモンティ・ウィリアムズは明らかにエイトンを評価しておらず、それだけでなく個人的にも悪い印象を持っていたのは明らかだったが、今オフにはそのモンティが解任されていた。

新たな指揮官となるフランク・ボーゲルは会見でエイトンを高く評価していたし、新加入のブラッドリー・ビールも、エイトンと一緒にプレーするのが楽しみだと語っていた。エイトン自身はバハマ代表に参加してバスケを楽しみ、新たな気持ちでフェニックスに戻っていた。

それでもトレードの決定は下された。優勝候補のサンズから、長年の『チームの顔』だったデイミアン・リラードを放出して再建へと舵を切ったトレイルブレイザーズへ。エイトンにとってNBA優勝からは遠ざかるが、批判やプレッシャーと向き合う必要がなくなり、自分の能力を伸ばすことだけに集中できるブレイザーズへの移籍はポジティブなものととらえていいだろう。

様々な経験を積んできたが、まだ25歳。ブレイザーズの再建に付き合って、チームとともに自分自身も成長して再び優勝争いに加わるシナリオも実現不可能ではない。まずはリラードを失って意気消沈しているポートランドのファンに、再び期待を持たせるようなパフォーマンスを見せること。プレースタイルもキャラクターもまるで違うとしても、リラードがそうだったようにブレイザーズのファンの支持を得ることが、エイトンのキャリア第2章にとっては非常に重要となる。