千葉Jで評価された、外国籍選手相手にも当たり負けしないディフェンス

アジア競技大会に臨む男子バスケットボール日本代表において、一番の課題はビッグマンのサイズ不足と経験不足だ。これを克服して好成績を挙げるためには、チーム全員、特にウイング陣が積極的にリバウンドを奪い、インサイド陣を助けることが欠かせない。この点で特に期待したいのが、卓越した跳躍力とフィジカルの強さを誇る米山ジャバ偉生だ。

日本代表チームで主に3番ポジションを担う190cmの米山は、今年1月、専修大3年時に特別指定選手として千葉ジェッツに加入した。そして、周囲の予想を良い意味で裏切るインパクトを残し戦力として認められた結果、3月にプロ契約を締結。部を退部し、プロバスケットボール選手としてスタートを切るという大きな決断を下した。米山はキャリアの大きな転換期となった昨シーズンについて「プロの厳しさなど本当にいろんなことを学べた時間でした」と振り返る。

千葉Jに加入した当初の米山は、外国籍選手にも当たり負けしないディフェンス力をジョン・パトリックヘッドコーチに高く評価され、故障者が続出したチーム事情もあって出番は少なくなかった。しかし、主力がメンバーが戻ってくると米山の出番は一気に減った。

「練習でもシーズン後半のゲームでも点数を取れていたのが全く取れなくなりました。そういった面もあってプレータイムが減っていて、精神面で落ちてしまった時期もありました」。米山はプロの洗礼を浴びたシーズン終盤の苦しい思いをこのように明かすが、その中でもディフェンスについては確固たる手応えを得た。「ディフェンスの細かい位置取りなどは、まだまだ学ばないといけません。ただ、1対1で外国籍選手に来られても当たり負けしないフィジカルは通用していたと思います」。

そしてヴィック・ロー、クリストファー・スミスとBリーグ屈指のウイングの選手たちと日々の練習でマッチアップできた経験を「本当に大きかったです。毎日、学ぶことがありました」と振り返る。このような千葉Jでの濃密な時間があるからこそ、アジア競技大会で対戦する相手ビッグマンに対しても「当たり前しない自信はあります」と言い切る。また、オフェンス面においては「(富樫)勇樹さん、ヴィック、スミスといったトップの選手になってくると、自分の打てるタイミングだったら絶対に3ポイントシュートを打ちます。その気持ちの強さ、メンタルの部分はすごく学ぶことができました」と話した。

「アジア競技大会で活躍することでA代表の合宿に呼ばれる可能性もあります」

米山の武器はスピードとパワーを兼ね備えた豪快なドライブだが、それだけではトップレベルで通用しないと身をもって痛感したからこそ、シュートを打ち切ることの大切さを意識する。「3ポイントシュートを決められるから相手が警戒して、ドライブに行けます。外がないと思われたら引かれて守られて、ドライブに行けるものも行けない。(持ち味を生かすためにも)3ポイントシュートは必要なので、確率よく決めていきたいです」

米山の発言からは、プロで成功するためには何を強みとし、何を改善していかないといけないのか、自己分析がしっかりできている聡明さが感じられる。それは出場機会を求めて富山グラウジーズにレンタル移籍した判断にも表れている。

専用クラブハウスがあり、タレントレベルも高い千葉Jに所属することで、充実したトレーニングができるメリットはあるが、米山は自身の成長には実戦経験を積み重ねることが不可欠と考えている。これは21歳という自身の年齢を世界標準で俯瞰的に見られているからだ。「海外だと自分よりも若くてプロで活躍する選手は普通にいますし、21歳のプロ選手は遅いとは言わないですが、早くはないと思っています。富山に行ったからといって必ず試合に出られる保証がないことはわかっていますが、今シーズンは試合に出ないといけない。その危機感はあります」。

国内に目を向けても、同世代には河村勇輝、富永啓生という今夏の『FIBAワールドカップ2023』で活躍した選手たちがいる。「河村があれだけ活躍するのは本当にすごいと思います。ただ、自分も同じ学年なので負けていられないです」と、プロに欠かせない負けん気の強さも見せる。

そして米山は、アジア競技大会への意気込みをこう語ってくれた。「『ここにいるよ』ではないですが、点数だったりディフェンスで思いっきりブロックを決めたりと、なにかしらのインパクトは絶対に残したいです。ここで活躍することでA代表の合宿に呼ばれる可能性もあります。チームの勝利に貢献する中で、しっかり結果を残すことを目標に大会に臨みたいです」

米山にとって千葉Jの先輩である原修太は、外国籍選手に当たり負けしないディフェンスで評価を高め、久しぶりの参加となった6月の強化合宿から一気にワールドカップ本大会のメンバー入りを果たした。3番ポジションでスラッシャーの米山、2番ポジションで3ポイントシュートが武器の原とではタイプは違うが、強靭な肉体が一番の持ち味というところは共通している。原に続き、代表に新たな活力を与えるフィジカルモンスターとしても米山のプレーに注目だ。