梅沢カディシャ樹奈

文・写真=鈴木栄一

日本代表の大崎佑圭の代役を務める20歳のセンター

2019年の皇后杯はJX-ENEOSサンフラワーズが盤石の強さで6連覇を達成した。それでもチームとしては、ここ数年で最も大きな変化があった中での優勝だった。絶対的リーダーの吉田亜沙美が若手を育てる意味でベンチスタートに回り、さらに渡嘉敷来夢と並ぶインサイドの要である大崎佑圭が今シーズンは選手登録を外れたことで、先発メンバーを2人変更しているのだ。ただ、吉田に代わって先発ポイントガードを担うのは昨夏のワールドカップ代表の藤岡麻菜美であり、ここ一番の勝負どころでは吉田を起用することができる。

一方、インサイド陣は大崎不在を現有戦力のステップアップで埋めるしかない。その大役を担うのは、20歳の梅沢カディシャ樹奈だ。桜花学園時代は、同期の馬瓜ステファニーや1学年下の山本麻衣が中心選手としてクローズアップされたが、188cmのサイズを生かしたゴール下での力強いプレーは高い評価を受けていた。

2年目の今シーズン、大﨑に代わり先発センターに据えられると、Wリーグでは中断期間前までは全14試合に先発で、平均11.6得点、6.4リバウンドを記録。この流れに乗って皇后杯の決勝ラウンドでもインサイドで奮闘し、チームの優勝に貢献した。

佐藤清美ヘッドコーチも次のように梅沢を評している。「まずはリバウンドとディフェンスを頑張るように伝えたら、それをしっかりやってくれています。そこを評価しています」

梅沢カディシャ樹奈

「今の自分の力は全部、出し切れました」

決勝の終了後、梅沢は「ホッとしました」と第一声で語る。自身のパフォーマンスについては「とにかくリバウンドとルーズボールは絶対負けないようにと頑張りました。けど4ファウルと、ファウルが多かったのは少し悔いが残っています」と振り返る。

ファウルトラブルで消化不良の面もあったようだが、ファイナルラウンド3試合での成績は10.3得点、5リバウンドを記録。さらにフィールドゴール成功率71.4%と高確率でシュートを沈めることで、ゴール下でしっかり自分の役割を遂行した。

「今の自分の力は全部、出し切れました」と語る梅沢は、その理由として何よりも周囲のサポートに感謝していた。「いつも試合前は緊張しますけど、今回は緊張せずにできました。先輩方が『大丈夫だよ』とか『今のはこうしたほうがいいよ』とか声掛けをしてくださったので、自分も思いっきりプレーできました」

実際、梅沢がシュートを決めるとチームメートから「ナイスシュート」とすぐに声が出る。また、トヨタ自動車との決勝戦、渡嘉敷来夢がハイポストでボールを受け、インサイドへの梅沢にパスを通すハイローのコンビネーションから梅沢が得点を挙げた際、自分でシュートを決めても見せないガッツポーズを渡嘉敷がしていたのは印象的だった。

大崎に代わる先発という役割に「プレッシャーはありましたが、考えすぎないようにして、自分にできることをやりました」と、特に意識はしないようにしていると語る。しかし、一方で「大崎さんが抜けて自分が入ったことでJX-ENEOSが負けたとは絶対に言われたくなかったので、そこは意識しました」と強い覚悟を持ってコートに立ち続けている。

これから再開するリーグ戦に向け、「メンバーが変わっても勝てることを証明できました。もっとJX-ENEOSを強くしていけたらといいなと思います」と意気込む。そして、さらに強くなれる一番の要素は、まだまだ伸び盛りである梅沢の成長であるはずだ。

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