シェイ・ギルジャス・アレクサンダー

「何を懸けた戦いなのかを理解し、何が何でも勝つつもりだった」

グループLは4チームが3勝1敗で並び、最終戦のカナダvsスペイン、ラトビアvsブラジルの勝者が2次リーグを突破する状況となった。ともに優勝候補であるカナダとスペインは40分間の激闘を繰り広げ、エースのシェイ・ギルジャス・アレクサンダーが30得点を挙げたカナダが88-85で競り勝っている。

試合の主導権を握ったのはスペインだった。攻守のバランスが良く、相手の出方をうかがっては弱点を突いていく高度なチームバスケットを遂行。第3クォーター終盤には11-0のランがあり、73-61と12点リードで第4クォーターを迎えていた。

それでも、勝負どころでモノを言ったのはカナダの強烈な個だった。第4クォーターのスコアは27-12とカナダが圧倒。27得点のうち24点はシェイとディロン・ブルックスが決めたものだ。ブルックスは3本の3ポイントシュートを決めてビハインドを覆す力となった。そしてシェイは残り44秒で決めた勝ち越しのステップバックジャンパーに、残り20秒と13秒、4秒で獲得した6本のフリースローをすべて沈めるクラッチプレーヤーぶりを発揮した。

カナダ代表は常にNBAプレーヤーを数多く擁するチームでありながら、成功を収められずにいた。2015年にはベネズエラに敗れてリオオリンピック出場権を逃し、東京オリンピックにも世界最終予選でチェコに敗れて出場できなかった。

NBAのスタープレーヤーが集まれば戦力としては強いが、チームバスケの質を上げられない弱点も併せ持つことになる。今回もスペインと比べれば攻守ともにチームバスケの面では劣っていた。それでもNBAで成長著しいシェイが、悪評を本当の評価に変えようとするブルックスが、苦境を乗り越えるだけの力をチームに与えた。ブルックスはあわや2回目のアンスポーツマンライクファウルで退場かと思われた場面もあったが、ジャッジに救われた後はその実力を存分に発揮。ルグエンツ・ドート、RJ・バレットがファウルトラブルに見舞われながらもカナダには『個の力』が十分すぎるほどあった。

これでカナダは決勝トーナメント進出。同時にパリオリンピックの出場権も手に入れた。

シェイは試合後「彼らは最初から最後まで素晴らしいバスケを見せた」とスペインを称え、「でも、僕らは何を懸けた戦いなのかを理解し、何が何でも勝つつもりだった。そして、やり遂げた」と語り、30得点を挙げた個人の活躍ではなくチームのディフェンスを勝因に挙げた。

「ウチには守備の多様性がある。ペリメーターディフェンスでは世界最高の選手が2人いて、全員一緒に連携して守ることができる。それを打ち破って得点するのは簡単じゃない。もちろん完璧とはいかないけど、上手くまとまることができれば自分たちのベストを出せる」

長らくオリンピックから遠ざかっていたカナダにとって、今回の出場権獲得は大きな喜びだ。シェイは「本当に名誉なことだ。世界最高のアスリートが集まる舞台で、そこに僕たちも属することになる」と言う。それでもヘッドコーチのジョルディ・フェルナンデスは「オリンピックに出場するのは特別なことだが、そのためだけにここに来たわけじゃない。あと3試合ある」と言い、こう続けた。

「このチームを支える人たちにとって、オリンピック出場権獲得は大きな意味がある。おめでとうと言いたいし、楽しまなきゃいけない。でも、ここが最終目的地じゃないだろう? 我々はもっと勝ちたい。ウチの選手たちはまだ若く、一緒にプレーした経験も浅くて、まだまだ強くなれる。どれぐらいの力があるのか判断するのは私じゃないが、ここまで多くの逆境を乗り越えてきた。この調子で進めばもっと上まで行ける。みんなチームの成長のためにあらゆることをやってきた。次のベスト8でも同じようにやるよ」