フィンランド戦の27得点に続き、2試合連続で世界の列強相手に大活躍

FIBAワールドカップ2023、男子日本代表はグループリーグ最終戦でオーストラリア代表と対戦し、89-109で敗れた。世界屈指の強豪であるオーストラリアに力負けしてしまったが、明日から始まる順位決定戦に向けいろいろと収穫もあった。その際たるものがジョシュ・ホーキンソンの活躍だ。

この試合、ホーキンソンはゴール下で次々とシュートを沈め、終わってみればフィールドゴール16本中13本成功と、驚異的な成功率で33得点7リバウンドを記録。屈強なオーストラリアのインサイド陣を相手にしての大暴れだった。フィンランド戦後の会見で、トム・ ホーバスヘッドコーチは、このようにホーキンソンを称えていた。「彼はとてもスマートな選手です。世界有数のビッグマンたちを相手にしても、ゴール下の密集の中でリバウンドを取ってくれます。これは日本において長い間、欠けていた部分です」

ホーキンソンは7月中旬に股関節を負傷したことでコンディション、ゲーム勘ともに万全とは言えない状態でワールドカップ本番を迎えた。初戦のドイツ戦こそファウルトラブルによって25分の出場に留まったが、2戦目は37分半の出場で28得点19リバウンドを挙げ歴史的勝利に大きく貢献。そして、オーストラリア戦も36分半と中1日の過密スケジュールの中で2試合続けてフル稼働となった。

肉体的には相当きついことは間違いない。だが、ホーキンソンはこう語る。「フィンランド戦は37分出場で少し疲れました。だけど、会場での声援などファンが僕にエナジーをくれます。だから、今日もフィンランド戦と同じくエナジー溢れるプレーができました」

そして「チームが食らいついていくため自分のベストを出しました」という言葉通りのハイパフォーマンスを見せてくれたホーキンソンだが、109失点を喫した点についてはオーストラリアの分厚いオフェンスに脱帽した。

「オーストラリアは本当に見事なスタイルのバスケットボールでした。全員がムービング、カッティングをして、得点源であるパティ(ミルズ)はタフショットを決めます。彼を抑えにいくと、(ジョシュ)ギディーがアタックし、他のプレーメイカーやスコアラーの得点チャンスを作りだします。さらに運動能力に優れたビッグマンがゴール下でシュートを狙ってきます」

「僕にとって世界トップレベルの相手との対戦は大事ではなく、慣れていることです」

そして33得点を挙げた自身のプレーについて、フィンランド戦、オーストラリア戦と2試合続けて多く決めている武器への自信を語る。「オーストラリアはフィジカルなチームですが、フローターは僕の武器の1つです。ミドルエリアでパスをもらい、そこからのフローターシュートを狙っていました」

また、意外ではあるが、今大会3試合目にして初めて3ポイントシュートを成功させた。Bリーグでのホーキンソンは外角からの得点が大きな特徴となっているが、代表では自身の役割が違っていると説明する。

「代表だと、Bリーグの時と比べてピック&ロールからゴール下へのアタックが多くなって、リズムがいつもと違います。3ポイントシュートを打てる機会が限られてきます。Bリーグだとスクリーンをかけた後、70%から80%はピック&ポップの動きをすることで、1試合で5本から7本の3ポイントシュートを打ちます。今はゴール下でハードに守って、リングに向かってよく走っていくのが主な仕事です。ただ、今日は3ポイントシュートを決められて良かったです」

フィンランド戦、オーストラリア戦での大活躍は周知の通りだが、ドイツ戦でもホーキンソンはゴール下で互角以上に渡り合っていた。NBA、欧州トップレベルで活躍する選手たちを相手にしても臆することなく、いつも通りのプレーを見せている。そこには学生時代の経験が大きく影響している。彼が生まれ育ったアメリカのシアトルでは、夏の間にプロ選手とアマチュア選手が戦うプロアマリーグが盛んに行われており、ホー キンソンにとってNBA選手とのマッチアップにも萎縮する要素はない。

「シアトル出身のNBA選手はたくさんいます。オフシーズンになると、NBAオールスターレベルの選手たちとやりあうのが普通の環境です。僕もたくさん対戦してきました。(オーストラリア代表の)マティース・サイブルもシアトル出身で試合前に少し話しました。僕にとって世界トップレベルの相手との対戦は大事ではなく、慣れていることです」

また、ワールドカップの大舞台においても、オフコートでリラックスして過ごせていることも大きい。昨シーズンまで信州ブレイブウォリアーズで3年間一緒にプレーしたアンソニー・マクヘンリーは、ホーキンソンが敬愛する人物だ。今夏に引退を表明し、琉球ゴールデンキングスのコーチに就任したマクヘンリーと会うことで英気を養うことができたと明かす。

「実はフィンランド戦の前、マックと一緒にランチに行ってタコスを食べました。彼はBリーグのレジェンドで、僕が本当に尊敬している人物です。彼からアドバイスをもらえたことは良かったです」

順位決定戦の残り2試合、日本代表が勝利をつかむためには引き続きホーキンソンがフル稼働し、ゴール下の守護神として君臨することが欠かせない。中1日で試合が続く過密日程で体力的にかなり厳しいのは間違いないが、日本一丸で彼に声援を送り、新たなエナジーを注入していきたい。