デニス・シュルーダー

熱くなりやすいシュルーダーに仕掛けさせ、チームプレーを分断

ワールドカップがいよいよ今日開幕します。日本代表が初戦で当たるのはドイツ代表。東京オリンピックでベスト8、ユーロバスケットで3位となった優勝候補の一角です。

チーム最高のタレントはフランツ・バグナー。身長208cmであらゆるポジション、役割をこなすオールラウンダーであり、コート上のスペースを見つけるビジョン、プレー判断の良さを持ち合わせたスーパースター候補生であり、良くも悪くも我の強さがなく、チームプレーヤーとしても機能します。

オフボールで動き回ってフリーになれば3ポイントシュートを沈め、細かいフェイクからディフェンスのタイミングを外したドライブからフィニッシュへと結びつける多彩なオフェンスができる選手で、簡単に止められる相手ではありません。しかし、それは彼の動きにタイミング良く、適切なパスが供給される場合に限ります。パサーにプレッシャーをかけ続ければ、個人技で強引に仕掛けてくるタイプではないフランツは孤立し、その長所を発揮させないことが可能になります。

また、センターにはドライブコースを限定し、ブロックショットも上手いダニエル・タイスがいますが、オフェンスでは個人で仕掛けるタイプではなく、3ポイントシュートとゴール下の合わせで得点していくタイプだけに、こちらも同じくパサーを乱すことが有効な対策です。

いずれにしても日本が最も気を配るべきはデニス・シュルーダーとなります。

シュルーダーは優れたスピードと運動能力を持つポイントガードですが、熱くなりやすいメンタルとフィールドゴール成功率の低さが弱点です。ドイツ代表でプレーする時はゲームコントロールを優先する傾向にありますが、このスタンスを乱して個人技で仕掛けさせることは有効な攻略法になります。

日本がハイプレッシャーのディフェンスを仕掛けると、シュルーダーは個人技で抜きにかかるでしょう。これに対してゴール下へのドライブコースだけ消しておけば、確率の低いジャンプシュートを選択することになります。何本かは決めますが、何本かは外します。そして何より、連携を使われてチーム全体が波に乗っては手が付けられないので、シュルーダーの得点は許容した上で、フランツのプレー機会を減らすことやタイスの確実なゴール下を打たせないことが重要になります。

国際大会においてNBAプレーヤーはチームの中核を担いながらも、1カ月程度の期間しかチーム練習に使えないまま試合に臨む『寄せ集めの集団』という弱点をもたらします。またシュルーダーは、マキシ・クリバーを批判して代表辞退へと追い込みました。その背景に何があったかは定かではありませんが、チーム始動の際に起きた内部のいざこざは、ドイツ代表が一枚岩でないことを表してもいます。

それぞれの選手に持ち味を発揮されれば太刀打ちできない相手ですが、連携を分断すればチャンスが生まれるはずです。ドイツが抱える弱点を突く戦い方ができるかどうか。日本代表に求められるのは、したたかな戦いぶりです。