「もっと周りと連携を取ってスムーズなチームプレーをしないといけない」

男子日本代表は、8月2日、4日にニュージーランド代表と強化試合を行うと、初戦を79-72で制すも、2試合目は75-94と大敗を喫した。7月末に行われたアウェーでの韓国代表との2試合に続き、今回も故障やコンディション調整を理由に2大エースである渡邊雄太、ジョシュ・ホーキンソンが揃って欠場。ビッグのポジションが手薄な中で、特にディフェンス面で奮闘したのが渡邉飛勇だった。

7月上旬に行われたチャイニーズ・タイペイとの強化試合をコンディション不良で回避した渡邉は、韓国戦で復帰したもののコンディションは回復途中で、トランジションに加わりコートを駆け回るとすぐに肩で息をしてしまう状況だった。しかし、今回の2試合については「コンディションはまぁまぁです。次の試合で100%に戻ります」と本人が語るように、韓国戦と比べると明らかに軽快なプレーを見せていた。207cmのサイズに加え、傑出した跳躍力を持つ渡邉はリバウンドに加え、ショットブロッカーとして相手にプレッシャーを与えることができる。トム・ホーバスヘッドコーチもリムプロテクターとしての能力を高く評価している。また、オフェンスにおいて指揮官が重視する3ポイントシュートはないが、河村勇輝のドライブに呼応して、合わせの高速パスをしっかりキャッチしてシュートに持っていくなど、ニュージーランド戦に出場した他のビッグマンにはない捕球力とゴール下でのフィニッシュ能力も見せた。

この4試合で着実に存在感を高めている渡邉は、4日の試合後に自身のプレーをこう総括した。「韓国との試合は、仕事ができたと思います。ただ、2試合目はちょっとコンディションが悪くて、スタッツは良かったけど内容はそこまで良くなかったです。ニュージーランド戦の初戦はベストでしたけど、今日は悪かったです。特に後半は残念な内容でした」

そして、次のように具体的な反省点を語る。「ディフェンスで、フィジカルの部分は悪くなかったですが、もっと周りと連携を取ってスムーズなチームプレーをしないといけな い。オフェンスでは、もっとスクリーンをかけないといけなかったです」

「スクリーンをヒットして、味方をフリーにするのが僕の仕事です」

いよいよワールドカップ本大会に向けたチーム作りは大詰めとなり、次のアンゴラとの強化試合では渡邊雄太、ホーキンソンの復帰も期待されている。「ホーキンソンと雄太は素晴らしい選手で、2人が周りの注意を引き付けるので僕の役割は簡単になります」と渡邉は語る。そしてオフェンスにおいて黒子として、周囲を生かすためにスクリーンプレーの精度を上げる必要があると危機感を持っている。「もっと早くにスクリーンに入り、ガードをオープンにさせたい。今はスクリーンで動きすぎています。もっと高い集中力を持ってプレーしないといけないです」

ニュージーランドとの2試合目、日本はコンディションが向上した相手の激しいフィジカルに適応しきれなかったのが大きな敗因となった。「初戦のニュージーランドは走ってきたけど、今日はフィジカルを強調してきた。この違いにちょっとびっくりしました」と渡邉も語るが、ワールドカップ本大会ではこの試合以上のフィジカルなプレーに直面することになる。特にゴール下では激しい肉弾戦が繰り広げられることは間違いない。ただ、渡邉はこの削り合いを歓迎する。

「(ニュージーランドは)激しく当たって僕たちを削りにきていたけど、僕は気にならなかった。むしろそういうやり合いは好きです。当たりに来るならどうぞという気持ち。ただ、僕は必ずやり返します」

このように強い闘争心を見せる渡邉だが、同時に冷静さを失ってはいけないと胆に銘じて いる。「自分のやるべきことに集中できなかったのは恥ずべきことです。もっとスマートにプレーしないといけない。相手にヒットするのではなく、スクリーンをヒットして、味方をフリーにするのが僕の仕事です」

昨シーズンの渡邉は長期離脱を経てのシーズン中盤以降の合流も影響し、琉球ゴールデンキングスでプレータイムがほとんどなかった。それがここまで4試合連続で20分以上と、久しぶりに継続してプレーできていることに「楽しいです」と笑顔を見せる。ただ、続けて負けん気の強さを見せる。「でも、20点差で負けるのは楽しくない。本当に勝ちたい。負けるのは本当に嫌なんだ」

日本代表がワールドカップで結果を残すために不可欠な高さ、そしてどんな相手にも怯まない闘争心の両方を渡邉は備えている。