3ポイントシュート7本中6本成功、13分の出場で18得点をマーク
7月8日、男子日本代表はチャイニーズ・タイペイと強化試合を行い108-86で圧勝した。日本は序盤から馬場雄大、富永啓生、ジョシュ・ホーキンソンなどを軸としたオフェンスで次々と得点を重ね、前半だけで19点の大量リードを奪うなど危なげない展開だった。
18得点5アシストの馬場、13得点12リバウンド3ブロックのホーキンソンと主軸が存在感を放つ中、最も会場を沸かせたのが原修太だった。13分の出場で3ポイントシュート7本中6本成功の18得点を挙げると、特に第4クォーターだけで5本の長距離砲を沈めて、観客だけでなくベンチにいるチームメートも大興奮の熱狂を作り出した。
トム・ホーバス体制の発足当初、2021年11月の強化合宿に招集されて以降、原は代表とは縁のない状況だった。しかし、昨シーズンのBリーグで千葉ジェッツの中心選手としてリーグ最高勝率の立役者となる自己最高のシーズンを送った。特に自分よりサイズの大きい外国籍相手にも当たり負けしないタフな守備が評価されてベストディフェンダー賞を受賞するなど大きな飛躍を遂げた。
その結果、久しぶりの代表招集を受けると、フル代表としての実戦デビュー戦で大暴れの活躍を見せた。そして原は「トムさんが求めている3ポイントシュートでアピールできたのは本当に良かったと思います」と振り返っている。
最終的には誰よりも目立った原だが、コートに入ったのは第2クォーター終盤と本日ベンチ登録された13人の中で最後だった。長らく代表から離れていたことから、「本当に合宿が始まる時から、代表では下からのスタートだと思っていました。他のメンバーは今までの大会に出ていて信頼も厚いですし、出る順番は仕方がないのかなと思っていました」と、序列が下であることは致し方のないものととらえていた。
だが一方でBリーグを代表するトップ選手としての矜持もある。ティップオフから誰よりもベンチに座り続けたことを「(ずっとベンチに座っていた)あの10分弱、久々にああいう悔しい思いをちょっとしたので、出たらやってやろうという思いでした」と良い意味でモチベーションに変えることで、3ポイントシュートの爆発に繋げた。
千葉Jの盟友である富樫勇樹は、このように原の活躍を称える。「平等にチャンスは与えられるわけではないです。結局、今日も最後にコートに出てきています。その中でああやって爆発して、これで彼にチャンスが与えられる可能性が増えたのはすごくうれしいです。今日に関しては入りすぎだと思います(笑)。シーズンを通しても7本中6本成功は多分ないです。それをこの初戦、数少ないチャンスでものにしたのは今までの努力の成果かなと思います」
「僕の強みは3Pが入らない時でもディフェンスやドライブでアピールできること」
3ポイントシュートを重視するホーバスヘッドコーチのスタイルにおいて、長距離砲でしっかり結果を出したのは大きなアピールとなる。だが、原の持ち味はそれだけではない。特に一番の代名詞であるディフェンスについてはこう意気込む。「ボール運びの選手につくことがなかったので、そこはもっと信頼を勝ち取りたいです。相手のキーマンにディフェンスでつかせてもらえるようにもっとアピールしていけたらいいと思います」
また、原自身も言及するように、今のメンバーで最も代表経験が少ないことは、チーム戦術の習得に関して大きなマイナスとなるが、「物分かりが早いというか、わりと賢い方だと自分でも思っています」と自信を見せる。
「全員ゼロからのスタートでフォーメーションを覚えていくのは慣れていますけど、僕以外は全員がよく知っていてというのは初めてです。そこは難しかったですが、これも良い経験で今は他の選手の特徴もつかめてきています」
ホーバスヘッドコーチは「ディフェンスのために呼びました」と原の招集理由を明かしている。それだけに、今回のパフォーマンスは指揮官にとってうれしい悩みとなっている。「今日はタフな3ポイントシュートも決めてくれました。2番ポジション(の争い)はすごく人数が増えています」
序列において最後方からのスタートとなった原だが、明日もインパクトを与えることができれば、代表のサバイバルレースに本格的に割って入れるはずだ。今日活躍したからこそ、真価を問われる明日の試合に向けこのように闘志を燃やしている。「今日は入りましたけど、僕の強みは3ポイントシュートが入らない時でもディフェンスやドライブでアピールできることだと思っています。例えばこれで相手が距離を詰めてくれば、もう1つの強みであるドライブを出しやすくなります。今日入ったことはうれしいですけど、切り替えてもっと自分の強みを出していきたいです」
また原のディフェンスはチャイニーズ・タイペイよりもフィジカルが強く、サイズのあるガードが揃うニュージーランド、フランス、スロベニアといった難敵相手にこそより真価を発揮するはずだ。メンバーが固定化しつつある日本代表において、原には激しいチーム内競争を引き起こし、底上げを促す存在になってもらいたい。