デリック・ローズ

写真=Getty Images

2016年の凱旋では心ないブーイングも

2016年11月4日以来となるユナイテッド・センターでのプレーは、デリック・ローズ以上に、ブルズファンにとって特別なものだった。

シカゴ出身で、2008年から16年までブルズに所属したローズは、古巣との対戦で24得点8アシストを記録し、119-94での快勝に貢献した。試合前から大声援でローズを出迎えたブルズファンは、第4クォーターに、かつてのエースを『MVPチャント』で称えた。大歓声を聞きながらフリースローを打つ体勢に入っていたローズは、ボールを手に持ち、微笑んだ。

試合後ローズは「微笑まざるを得なかったよ」と、語った。「昔のことを思い出した。それに、若い時分に、あの時のようなポジションにつけていたことに感謝している。今シーズンの自分の状態を考えたら、ここでプレーできるのは特別なことだったから」

2016年のオフにブルズからニックスにトレードされたローズは、その後も思うようなプレーを続けられず、キャバリアーズ、そして現在所属するティンバーウルブズとチームを渡り歩いた。今シーズンから3ポイントシュートを高確率で決めるスタイルに変化したローズは、ウルブズのシックスマンとして活躍し、完全復活を遂げた。10月31日のジャズ戦では、キャリアハイとなる50得点を記録。試合後、人目を憚らずコート上で涙した姿に世界中のファンが感動し、他のNBAスター選手たちも、ローズの復活に心を動かされた。

ローズは試合前の時点で、これまでと現在の心境の変化について、こう語っていた。

「もうリベンジ云々については考えていない。ケガをして、復帰を目指していた時には、リベンジするためにプレーしていた。でも、自分自身のことを理解できるようになって、キャリア、それに人生で何を求めているかが分かってから、その気持ちはなくなったんだ」

今のローズを見ていると、心底バスケットボールを楽しみながらプレーしていることが伝わってくる。2016年に帰還した時には、心ないブーイングも聞かれた。だがこの日のスタンドは、ローズへの愛情に溢れていた。キャリアを左右するほどの大ケガとの闘いを経て、再び選手として充実した日々を取り戻したローズに、恨みつらみは似合わない。

「今日のような試合になるとは思っていなかったんだ。感動した。まだ自分をサポートしてくれる人がいるのだからね」

この日の凱旋をきっかけに、ローズとシカゴは、新たな関係を築いていくのではないだろうか。