ルカ・パヴィチェヴィッチ

シーズン終了後、Bリーグでは活発な移籍が行われている。その中でも目立つ動きを見せたチームの代表格がサンロッカーズ渋谷だ。28勝32敗に終わり、2シーズン続けてチャンピオンシップ進出を逃す中、新シーズンでの巻き返しに向け、アルバルク東京で2度のリーグ制覇を達成したルカ・パヴィチェヴィッチを新ヘッドコーチに招聘した。世界標準の規律とインテンシティをBリーグに持ち込み、リーグ全体の底上げにも大きく貢献した名将が、どんな気持ちでSR渋谷を率いていくのかを聞いた。

「中心を担う選手が長期に渡って在籍しているのは、チーム作りにおいて素晴らしい」

──新たなチーム作りを行うにあたり、ルカヘッドコーチが最初に重視している点を教えてください。

チーム作りにおける第1段階はセレクションです。その中でも最初の選択としてコーチを選び、次にどんなタイプのバスケットボールをやり、チームとしてどんな道を歩んでいくのかを決めていきます。それがチームカルチャーの確立へと繋がっていきます。そして現在のバスケットボールにおいて最も重要なのは選手のセレクションとなります。外国籍選手については各チームともリクルーティングの経験を重ね、提示できる金額の増加によって近年はリーグ全体でレベルがどんどん高くなっています。だからこそ、スカウティングにおいて大きなミスをしない限り、外国籍選手の能力面において大きな違いは生まれにくいと思います。また、外国籍は『オン・ザ・コート2』という制限があることで、いかに優れた日本人選手を揃えるかが、より重要となっています。外国籍選手と比較した場合、日本人選手の選択肢は少なく、そこが上位と下位のチームを分ける差になりえる大きな要因です。

──編成においてSR渋谷はベンドラメ礼生、ライアン・ケリー、ジェームズ・マイケル・マカドゥと攻守の要となる選手たちが残留しています。

個人的に言うと、礼生は私がA東京にいた時に何度か獲得に動きました。しかし、彼は常にチームと深く繋がっていて無理でした。ケリーはデューク大、マカドゥはノースカロライナ大と共に全米を代表する名門大学で中心選手として活躍するなど素晴らしい実績の持ち主です。ケリーは大学1年の時に全米チャンピオンを経験しています。サンロッカーズは彼ら中心選手たちと良い関係を構築しています。中心を担う選手が、長期に渡って在籍しているのはチーム作りにおいて素晴らしい計画です。

──大きな違いを生み出せる存在として、帰化枠でジョシュ・ホーキンソン選手を獲得できたのは大きなアドバンテージになると思います。

帰化選手といえばギャビン(エドワーズ)、ライアン(ロシター)、ニック(ファジーカス)がリーグを代表する存在であり続けています。その中でホーキンソンも高い能力を持っており、さらに彼らと比べて若いことで多くのチームから良いオファーを受けていたと推測できます。私がヘッドコーチに就任する前の時点で、チームとホーキンソンの交渉は進展していましたが、彼は誰がチームのコーチになるのか知りたい状況だったと思います。彼のような優秀な帰化選手との契約は、チーム作りにおける一つの重要なタスクを成し遂げられたことになります。チームのマネジメントには本当に感謝しています。

──ルカヘッドコーチにとって、長い間ともに戦って自分のスタイルを熟知する小島元基選手の存在は心強いですか。

元基とは5年間、一緒のチームでした。新しいチームを率いるにあたり、自分のやりたいスタイル、作っていきたいカルチャーがどんなものか分かっている選手がいることは助けになります。特にその選手がポイントガードであることは大きいです。元基と再会できるのはうれしいです。ここ数年、彼は故障に苦しんでいるので、コンディションに問題なく新しいシーズンを過ごせることを願っています。

ルカ・パヴィチェヴィッチ

「優勝争いに加わることで、ファンの皆さんをより楽しませるようになりたい」

──SR渋谷への加入を決めた要因として、チームの大きな野望に感銘を受けたことを挙げています。では、ルカヘッドコーチ個人として、まずはどんな野望を持って就任1年目を戦っていきますか。

高い目標を掲げて戦っていくことは良いことだと思いますが、就任1年目でのリーグ王者が現実的な目標かどうかは難しいです。ただ、サンロッカーズが新しいオーナーであるセガサミーの下、できるだけ早く頂点を狙えるチームになれるように全力を尽くしていることは間違いないです。優勝争いに加わることで、ファンの皆さんをより楽しませるようになりたいです。

私個人としての野望はまず、サンロッカーズ渋谷という組織をよく知ることです。そして可能な限り早く、組織としての大きな野望を叶えられるチームを作り上げる。また、高いスタンダードの試合を続けていくことで、結果としてまずはチャンピオンシップ出場を果たしたいです。多くのチームがその座を目指していますが、8チームしか出場することはできない狭き門です。チャンピオンシップ争いができるチームを作ることが、私にとってまずは一番の優先事項です。

──バスケットボールから離れますが、日本に帰ってきてまず食べたいものといったら何が思い浮かびますか。

私は特に焼き鳥が大好きです。美味しい焼き鳥にお酒が飲めるお店に、友人たちと一緒に行きたいですね。日本の友人たちとの再会に加え、日本の食べ物やライフスタイルを再び経験できるのが待ち遠しいです。

──最後に日本のバスケットボールファンへのメッセージをお願いします。

2016年に代表チームのコーチとして日本に来た時、Bリーグが誕生しました。当時のチェアマンである大河(正明)さんとはいろいろな話をしました。そして関係者の皆さんの尽力によってBリーグはこの7年間で大きく成長し、世界のバスケットボール界においても重要なリーグの一つなったと思います。また八村(塁)、渡邊(雄太)や馬場(雄大)が海外でプレーし、Bリーグでは富樫(勇樹)や田中(大貴)、比江島(慎)らがけん引してくことでファンの数も増加しています。今、バスケットボールは日本の人々にとってより身近な存在になってきているでしょう。この成長を続けるサイクルの中に、再び加わることができてハッピーです。