「失敗のシーズン」との結論付けは誤り、テイタムとブラウンのコアを維持すべき
セルティックスはカンファレンスファイナルでヒートに敗れた。ジェイレン・ブラウンもアル・ホーフォードも「優勝を期待されていたチームがそれを果たせなかったのだから、失敗のシーズンだ」と結論付けているが、リーグのトップ4まで残り、カンファレンスファイナルでは0勝3敗から3勝する驚異的な粘りを見せた。『GAME7』の試合開始直後にジェイソン・テイタムが足首を捻挫するアクシデントがなければ……大成功のシーズンになっていた可能性もある。
若いコアと頼りになるベテランがいて、選手層に厚みもある。開幕直前にヘッドコーチを交代せざるを得ない『事件』もあったが、ジョー・マズーラは経験不足だっただけで彼自身の資質に問題はなく、来シーズンはより落ち着いて指揮を執れる。市場に出てくるビッグネームに釣られてチームを解体するよりも、今のコアを維持して成熟を待つ方が、NBA優勝の可能性は高いはずだ。
今オフ、去就が注目されるのはジェイレン・ブラウンだ。彼は来シーズンが契約最終年となり、トレードするならこのタイミングとなる。ただ、26歳でまだ成長の見込めるブラウンをトレードするメリットは見当たらない。爆発力はある一方で安定性を欠き、プレーオフではターンオーバーが増える悪癖はあるが、これは失敗を糧に修正できるはず。彼はセルティックスと5年2億9500万ドル(約400億円)のスーパーマックス契約を結ぶことが可能になる。
セルティックスはケビン・デュラントを獲得できるチャンスがあった時に、ブラウンをトレードに出すつもりだったと言われるが、それは過去のことで、健康だった頃のデュラントを獲得できるチャンスはもうやって来ない。つまり、セルティックスがブラウンを出して十分な見返りを得られる選手は今の市場にはいないのだ。
現在のコアであるブラウンとテイタムで少なくともあと2年チャレンジして、それでもプレーオフで同じ失敗を繰り返すようなら、そこで初めて再建を検討すればいい。今夏にブラウンに、1年後にテイタムに大型契約を与えても、彼らの才能と年齢を考えれば『不良債権』と化す可能性はほとんどない。
一方でビッグマンにはテコ入れが必要となる。アル・ホーフォードは素晴らしい活躍を見せたが、37歳の彼にこれ以上の上積みは望めない。左膝の前十字靭帯断裂で今シーズンを全休したダニーロ・ガリナーリがプレーヤーオプションを選択して来シーズンもセルティックスに残ることになった。彼はシーズンを通してリハビリを続け、プレーオフ終盤にはフルコートの練習に参加できるまでに回復していたが、復帰は間に合わなかった。それでも来シーズンは開幕からケガの影響なくプレーできる。それでもロバート・ウィリアムズ三世はケガが多く、グラント・ウィリアムズには引き抜かれる可能性があり、サム・ハウザーとルーク・コーネットにはプレーオフで出番が与えられなかった現状、ここが補強ポイントになる。
そのビッグマン獲得のためにトレードされる可能性が高いのはマルコム・ブログドンだ。ベンチからの得点、プレーメークの変化という役割をきっちりこなしてシックスマン賞を受賞したが、プレーオフでは肘のケガもあって活躍できなかった。サイズがないことでディフェンス面でテイタムやブラウンの負担を増やす点もマイナスだ。そして、彼と同じ持ち味を出しながらディフェンスでも活躍できるデリック・ホワイトの存在も大きい。ブログドンの価値はむしろシックスマン賞の受賞で上がっており、トレードで欲しがるチームは多いはずだ。
獲得候補としてベストの人材はOG・アヌノビーやラウリ・マルカネン。現実的にはカイル・クーズマ、ジョン・コリンズ、キャム・ジョンソンといったところ。2024年以降のサラリーのバランスを見据えながらになるが、主力として使えるパワーフォワードの獲得は不可欠と言える。
大事なのは、カンファレンスファイナルでヒートに敗れたことでパニックに陥らないことだ。セルティックスはすでに良いチームで、さらに向上する余地を残している。ナゲッツがそれ以上のレベルにあるという点は引っかかるが、幸いにもそれは西カンファレンスの話だ。ヒート、バックス、シクサーズといった東のライバルたちは、このオフに大きな変化を求めることになりそうだ。継続性がどれだけ優位をもたらすかはナゲッツが証明済みだが、次はセルティックスが同じことを証明すればいい。