水戸健史

「富山にB1のチームは絶対に必要だと思います」

レギュラーシーズン最終戦、富山グラウジーズはアウェーで横浜ビー・コルセアーズと対戦。最後までもつれる熱戦となったが、40得点のマイルズ・ヘソンに加え、要所で得点を決めたジョシュア・スミスの活躍により富山が84ー81で勝利した。この結果、富山はB1残留を決めている。

試合の出だしから、互いにディフェンスリバウンドからの攻守の素早い切り替えで走り合うアップテンポな展開となった。また、横浜BCはチャールズ・ジャクソンが欠場し、富山もジョシュア・スミスが万全の状態でなくプレーに制限アリと、ともにペイント内の守備力が低下していた。この背景もあって、共に外国籍フォワードが積極的にアタックを仕掛けて得点を奪い合うが、富山は上田隼輔、野﨑由之と若手選手が3ポイントシュートを決め切ったところで差を生み出し、第1クォーターで6点をリードする。

だが、第2クォーターに入ると、富山はこのクォーターだけで8ターンオーバーと横浜BCの激しいプレッシャーに苦戦し、シュートに持っていくのも苦労する。そして横浜BCに主導権を握られることで、38-37と追い上げを食らってしまう。

後半になると前半はわずか2得点だった横浜BCの河村勇輝が本領を発揮し、第3クォーターだけで10得点の活躍を見せる。だが、富山も絶好調のヘソンが、タフショットを連続で決めることで応戦していった。ともにフィジカルの激しいプレーで譲らず、第4クォーター残り4分で75-75と同点の激闘に。それでも、富山は強気の攻めでインサイドアタックを継続することで、フリースローで繋いでいく。そして、スミスがここ一番で抜群の決定力を見せることで横浜BCをわずかに上回り、B1残留を勝利で飾った。

これで富山は、過去2度の残留プレーオフに続き、今回もB2降格の危機を乗り越えた。地元出身でプロ入りから富山一筋、今シーズン15年目となる『Mr.グラウジーズ』こと水戸健史は、試合後の取材対応で残留できたことへの率直な思いをこう語る。

「富山にB1のチームは絶対に必要だと思います。なんとしても残留したいという思いでプレーしました。まずは、残ることができて率直にうれしいです」

水戸健史

「残留争いは恥ずかしいことだと思います。決して喜べることではないです」

昨シーズンまでのBリーグは、残留プレーオフを経て降格チームを決めていたが、今シーズンからは自動降格となった。「このルールを分かった上でシーズンが始まり、自分たちが招いた結果なので仕方ないです」という前程の上で、水戸は「(残留プレーオフが)ないのはかなりタフでした」と、過去に比べても重圧がかかったと続ける。

振り返れば富山は4月22日、23日と残留争いのライバルである新潟アルビレックスBBに痛恨の同一カード連敗を喫した。B1残留へ崖っぷちとなっていたが、ここから川崎ブレイブサンダース、横浜BCと中地区からチャンピオンシップに進出する2チームを相手に3️勝1敗と勝ち越し、土壇場でチームがうまく噛み合った。

「チームが1つになってしっかり勝ちに行く姿勢はすごく良かったです」と、ラスト2週間の戦いぶりを評価する水戸だが、一方で終わり良ければすべて良しとしてはいけないことを分かっている。「ただ、その姿勢を開幕から60試合見せることができれば、もっと違った結果になっていたと思います。開幕から今のようなプレーを出していかないといけない。その辺りがちょっと足りていなかったと思います」

38歳の大ベテランである水戸だが、この大一番でも18分11秒プレーし、的確なポジションが光る堅実なディフェンスに加え3アシストを記録。豊富な経験を生かしたいぶし銀のプレーで、縁の下の力持ちとしてB1残留に大きく貢献した。「契約のことは、これからなので分からないですけど」と、現時点で去就は未定であるが、次のようにチーム愛を見せる。「やっぱり必要とされればやりたいです。自分のできるところまでやりたいと思います」

また、富山への忠誠心に加え、「たくさんの方の声援がすごく力になりました。ホームゲームではなかなか勝てず、みなさんを残念な気持ちにさせてしまう試合ばかりでした」と、ファンへの感謝を第一に考えている。そんな水戸だからこそ、視線は早くも次に向かっている。

「B1残留への安堵感はありますけど、次のシーズンに向けての危機感をすごく抱いています。同じことを繰り返したくはないです。そのためには何かを変えないといけない。試合が終わった後は本当にホッとしましたが、今は危機感の方が強いです」

「残留争いは恥ずかしいことだと思います。決して喜べることではないです。来シーズンもこうならないために編成なども含めてしっかり準備することは大事です」

水戸の言う通り、再び残留争いに巻き込まれないためにはまず新シーズンに向け、大きくステップアップした若手の引き留めなど戦力整備が何よりも必要だ。そして、誰よりも富山の文化を体現するリビングレジェンド、水戸の残留はしっかりした準備の最優先事項となるはずだ。