文=大島和人 写真=B.LEAGUE

ミスを強く悔い、今後へ向けた成長の糧にして

もし滋賀レイクスターズが勝利していれば、並里成は立役者として称賛されていただろう。彼は24日の渋谷サンロッカーズ戦で12得点4アシストを挙げている。高速ドライブは間違いなく相手の脅威になっていた。相手の守備が揃ったゴール下に切れ込んで沈めるレイアップ、ジャンプショットは同じ2ポイントでも爽快感が違う。そんなバスケットの魅力を、172cmのポイントガードは表現できていた。

ただ滋賀は勝てなかった。前日に比べて点差、内容は大きく改善したが、並里にとってはむしろ悔しさの強く残る試合だった。彼はこう振り返る。「最後の最後ですよね。詰めが甘いなと自分でも思います。あそこでチームを勝たせられなかったのは自分の責任です」

並里が反省するのは70-70で迎えた大詰め、残り1分を切ってからのプレーだ。

彼はゴール正面、3ポイントラインの少し外側でアイラ・ブラウンに1対1を仕掛けた。しかし左手から右手にボールを持ち替え、縦に抜け出そうとしたところでブラウンにボールを引っかけられてしまう。並里は何とかルーズボールを取り戻したものの、慌ててプッシュしたパスを満原優樹にスティールされてしまった。

「ああいう大きい選手に対して、ボールチェンジは良くない。やって『あっ』と思いました。その後にパスミスしたことは、自分のバスケット人生の中で忘れられない場面だった」

直後の渋谷の速攻に対しても、冷静さを欠いた彼のディフェンスがあった。チームファウルが5個を越え、相手のフリースローに直結する状況にもかかわらず、彼はハーフラインの手前で清水太志郎に不要なファウルを犯してしまう。残り52秒、清水がこのフリースローを2本とも成功させたことが、試合の節目になった。

「ファウルをしてはいけないところでファウルをして、2ショットを与えてしまった。ターンオーバーをした後にそういうことをやってしまった。もうポイントガードとして失格かなと思いますね。あらためて勉強になったというか、ここから二度とああいうことがないようにしていきたい。まだまだ自分に成長する部分があったなという試合でした」

10秒足らずの間にオフェンス、ディフェンスで犯した2つのミスを並里は強く悔いる一方で、それを今後に向けた糧にしようともしていた。

キャリアのピークで迎える東京オリンピックへの思い

並里成は福岡第一高時代からNBA志望を公言し、高校を卒業後は『スラムダンク奨学金』の一期生として渡米したキャリアを持つ。今季もNBDLに挑戦していたが指名を受けることができず、開幕から50日近く経った11月中旬に帰国して滋賀へ加入した。

滋賀に対しては「1カ月半くらいにしてはすごく順調にアジャストできている」と言う彼だが、Bリーグに対しては「まだどれくらいのコンタクトがいいのか、強度がちょっと分からない。NBAに行きたいという夢を持ち、向こうの当たりの強さを学んできてそこにずっと頭がある」という戸惑いを感じているという。

しかし、見方を変えればそれも成長の糧となる。「ファウルしなくても守れるくらいの足、強さを持たないといけない。良い成長の場かなと思っています」と受け止める。

彼は2019年のワールドカップと予選、2020年の東京オリンピックに向けた日本代表候補として、12月11日からの第1回重点強化合宿に参加していた。今回の合宿で指揮を執ったテクニカルアドバイザーのルカ・パヴィチェヴィッチはセルビア出身で、ギリシャ、ドイツ、フランスなどヨーロッパでキャリアを積んできた人物だ。日米のバスケを知る並里にとっては、新しいチャレンジになる。

「ルカさんは僕が好きなタイプのコーチで、役割分担がはっきりしていてやりやすいです。オフェンスもディフェンスも細かいんですけれど、下のベースがない状態で自由にやるより、自分が生きていると感じた。学んだことをチームに帰って教えられたらと思う。自分のバスケットボール人生の中ですごく勉強になっています」

Bリーグ開幕直後の盛り上がりがひと段落した状態で帰国した彼だが、「もっと人が入って、盛り上げようとしているのがすごく印象的」とバスケ界の変化を前向きに受け止めている。その一方で「オリンピックまでがすごく大事」と気を引き締める。現在27歳の彼にとって、東京オリンピックはキャリアのピークで迎える大会。NBAとともに、彼が勝負をかける場だ。

バスケの楽しさ、爽快感を表現できる並里はBリーグにとって間違いなく貴重な存在だ。滋賀ではまだそれが結果につながっておらず、彼自身にも課題や感覚のズレが残っている。しかしそれは越えて成長を得るためのポジティブなハードルであって、彼の前進を阻むものではない。並里は帰国後もBリーグと日本代表から様々な糧を得て、先に向かおうとしている。

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