馬瓜ステファニー

前半に21点の大量リード、後半は失速も最後までディフェンスが崩れずに逃げ切り

Wリーグのファイナルでトヨタ自動車アンテロープスとENEOSサンフラワーズが対戦。強度の高いチームディフェンスを貫くことでENEOSの強力なインサイドアタックを抑え、前半で大量リードを奪ったトヨタ自動車が55-47で逃げ切り勝ちを収めた。

試合の出だしはともに相手ディフェンスのプレッシャーに苦しみシュートが入らない。しかし、トヨタ自動車は山本麻衣がドライブ、3ポイントシュートと非凡な得点力を発揮して抜け出す。さらに攻撃の起点となった馬瓜ステファニーの活躍により、19-11とリードして第1クォーターを終える。

第2クォーターに入ってもトヨタ自動車の流れは続き、特に際立ったのは馬瓜だ。ミスマッチを作ってからのローポストアタックで連続バスケット・カウントなど、このクォーターだけで8得点を記録。また、守っては質の高いチームディフェンスでENEOSの大黒柱である渡嘉敷来夢に満足にシュートチャンスを与えない。絶対的なエースがオフェンスに絡めないことで、オフェンスのリズムを失ったENEOSはガード陣による単発シュートがことごとく外れる悪循環に陥った。こうして19-6とビッグクォーターを作ったトヨタ自動車は21点差をつけて前半を終える。

後半に入ると、ENEOSはディフェンスを立て直し、馬瓜のポストアップに対して、簡単にボールを入れさせないなどアジャストする。こうして守備で流れを引き寄せると、ディフェンスリバウンドからの走る展開からようやく渡嘉敷のインサイドアタックが機能する。さらにインサイドに起点ができることで、外角のシュート確率も向上。第4クォーター序盤には高田静の連続3ポイントシュートが決まるなどENEOSペースとなり、残り4分11秒で45-53と点差を一桁まで戻した。

だが、トヨタ自動車はこの踏ん張りどころでチームの根幹であるディフェンスが崩れなかった。シュートは入らないが、ENEOSにも決めさせず、約2分半に渡って両チームともに得点が入らないこう着状態へと持ち込む。そして、残り26秒に川井が3ポゼッション以上となるダメ押しのシュートを沈めて激闘を制した。

トヨタ自動車は後半でわずか17得点とオフェンスは完全に失速したが、ディフェンスで最後まで我慢した。大神雄子ヘッドコーチも「シーズンを通して何が成長したのかと言えば、我慢ができるチームになったことです。経験豊かなENEOSさん相手に、それを証明したと思います」と勝因を語った。

馬瓜ステファニー

「積極的に声をかけて、みんなと一緒に楽しくなることを意識しています」

キャプテンである馬瓜も我慢を勝因に挙げる。「それぞれがディフェンスにすごくフォーカスしていたことで、自分たちのリズムに持っていけました。我慢するべき時にしっかりと我慢できました」

また、14得点10リバウンド5アシスト2ブロックと、オールラウンダーとして大暴れした馬瓜は、前半でトヨタ自動車が一気に突き放せるきっかけとなった自身のインサイドアタックをこう振り返った。「ENEOSさんは渡嘉敷さんを中心にインサイドもアウトサイドも強いチームなので、しっかりとディフェンスから走ろうと。相手はガードのところをまず抑えにくると考えていたので、自分がインサイドの部分でどれだけ貢献できるかが大事でした」

これでリーグ3連覇に王手をかけたトヨタ自動車は、もちろん明日の第2戦に勝って優勝を決めることしか考えていない。いろいろな戦術面のアジャストなども大事だが、「ここまできたらメンタルです。どれだけ自分たちが相手に立ち向かっていけるのか」と、馬瓜は何よりも気持ちの強さを重要視する。「今日は良かったですけど、明日はもっと必死になってくる相手に対して、それ以上に強く行かなければいけない。全員で気合いを入れて優勝に向けて頑張りたいです」

この試合に限ったことではないが、トヨタ自動車の選手たちは常にコミュニケーションを取り合い、苦しい時間帯でも味方の好プレーに対してみんなが笑顔で称える一体感がある。そこにはキャプテンである馬瓜の姿勢も大きく影響されている。「私はこのチームが好きで、みんなが笑っている中で一緒にコートでプレーしているのがすごく楽しいです。そして最終的には勝つことで、みんなが笑顔になれます。キャプテンになりましたけど、コートの中での自分の仕事は変わりません。その中でも積極的に声をかけて、みんなと一緒に楽しくなることを意識しています」

厳しいプレッシャーのかかる試合になればなる程、笑顔で楽しくプレーできる精神的な余裕を持てることは大きな強みになる。馬瓜が攻守に渡って今日のように躍動し、アドバンテージを作り出すことができれば、チームに笑顔が増えていき、優勝により近づくはずだ。