指揮官「今のシュート確率によってディフェンスは彼をガードしないといけない」
アメリカのNCAAバスケットボールはレギュラーシーズンの佳境を迎え、3月のNCAAトーナメントに向けてだんだんと盛り上がっている。そんな中、全米随一の強豪カンファレンスである『BIG10』に所属するネブラスカ大の富永啓生が、持ち味の爆発力を発揮して大暴れ中だ。
現地2月5日、トム・ホーバスの母校であるペンシルバニア州立大戦で30得点を挙げると、さらにミシガン大、ウィスコンシン大、ラトガーズ大、メリーランド大戦と難敵を相手に、5試合連続で20得点以上をマーク。この5試合の間、チームも4勝1敗と好成績を残しており、富永は文字通りチームを勝利に導くハイパフォーマンスを続けているのだ。
特に注目すべきはウィスコンシン大戦だ。今シーズンこそ苦戦しているが、NCAAトーナメントの常連校で、ハーフコートオフェンスを主体とした手堅いゲーム運びを伝統とし、現地21日時点で1試合平均63.2失点と堅守を見せる相手に、3ポイントシュート11本中5本成功を含む22得点をマーク。後半に17点の大量ビハインドを追いつき、オーバータイムの末に73-63で勝利する立役者となった。
レンジャー短大からネブラスカ大に編入1年目の昨シーズン、富永は30試合に出場し、平均16.4分のプレータイムで5.7得点、3ポイントシュート成功率33.0%に留まり、シーズン終盤になると出番を減らす不完全燃焼に終わっていた。しかし、2年目の今シーズンは試合を重ねるごとにプレーの質を向上させていき、現在の活躍に繋がっている。
現地21日時点で28試合に出場、平均24.0分のプレータイムで12.7得点、3ポイントシュート成功率40.3%を記録と、カンファレンス有数のシューターとなっている。その活躍ぶりにBIG10カンファレンスでは、彼の特集映像を作って紹介しているほどだ。
この富永の活躍ぶりについて、ネブラスカ大のフレッド・ホイバークヘッドコーチはウィスコンシン大との試合後このように評している。「今のシュート確率によってディフェンスは彼をガードしないといけない。彼は3ポイントシュートラインの1メートル以上後ろからシュートを打っており、それによって短大時代の彼は特別な存在になった。短大時代に45%で決めていたシュートをここに来て決め始めている」
さらにホイバーグが「外からシュートを決めることでディフェンスを広げ、彼がドライブできるスペースが生まれている」と続けるように、相手を富永に密着マークをせざるを得ない状況に持ち込んだことで、富永はゴール下へのドライブをより効果的に繰り出せている。また、オフボールムーブに磨きがかかり、外に開くのではなく相手の裏をかいてゴールにカットインし、ペイントエリアでイージーシュートを量産している。実際に、30得点を記録したペンシルバニア州立大戦では、ゴール下でフィールドゴール8本中7本を決めており、3ポイントシュートだけでなくドライブでも相手にダメージを与えている。
ここまで活躍を続ける富永のプレーをNCAAトーナメントでも是非とも見てみたいと思うが、現在のネブラスカ大は通算14勝14敗。カンファレンスの成績は7勝10敗と、同校にとってはここ5年間で最も良いものだが、それでも14チーム中12位となっている。だが、可能性が全くないかと言えばそんなことはない。
NCAAトーナメントは各カンファレンスの優勝校と、大会組織委員会が選出した大学の合計68校が出場できる。冒頭でも触れたが、全米随一のパワーカンファレンスと評価されている『BIG10』は、過去2シーズン連続で9校もNCAAトーナメントに選出されている。現在12位のネブラスカ大だが、一つの目安となる9位のミシガン州立大は8勝7敗、さらに4位から8位は9勝7敗と団子状態となっている。そのためネブラスカ大が残り3試合を全勝して順位を上げることで、土壇場での大逆転もあり得る。また、シーズンの最後に行われるカンファレンストーナメントで優勝すればレギュラーシーズンの成績に関係なくトーナメントへの切符をつかめる。
これからのレギュラーシーズン残り3試合とカンファレンストーナメントは、ネブラスカ大にとって今シーズンの運命を分ける大一番となる。そこで富永がどんなプレーを見せてくれるのか楽しみが尽きない。今の彼ならより大きな舞台でさらに強い輝きを放つことができるはずだ。