市川真人

ディベロップメントキャンプで見初められた206cmのビッグシューター

2月23日、26日に開催されるワールドカップアジア地区予選window6の直前合宿には、ディベロップメントキャンプ(2月6日〜10日)から追加招集された4人の学生が参加している。

宇都宮ブレックスの特別指定選手として華やかなデビューを飾った小川敦也。東海大のインカレ制覇の立役者となった金近廉。飛び級でU17、U19ワールドカップを戦った川島悠翔。どれもバスケファンなら聞き馴染みのある名前だろうが、最後の一人の市川真人は、もしかしたらそう思う人の比率が少し下がるかもしれない。

白鷗大3年の市川は、206 センチの96キロのセンター。静岡学園高校2年時にU22日本代表候補に選出され、3年時には3×3 U18アジアカップ日本代表として同大会の優勝にも貢献している。

高校時代からアウトサイドのシュートが得意で、高校3年時に行ったインタビューでは「U22の合宿で、30分以内に3ポイントを10本連続で決めるという課題をクリアしました」とうれしそうに話していた。今回は、そのシュート力がトム・ホーバスヘッドコーチの目に留まり、今回の合宿に招集された形だ。

「A代表に選んでいただいたことはとても光栄なんですが、まだ他のセンターの方々のように、リバウンドやディフェンスで仕事ができるプレーヤーではないと思っています。ただ、日本人のビックマンとしては珍しく3ポイントシュートが打てるという自信はあるので、A代表で自分がどこまで通用できるか、積極的にチャレンジしたいです」

2月17日に行われた囲み会見で、市川はこのようにコメントしている。

大学入学後は出場機会が伸びず「ネガティブな気持ちになってしまうことも多かった」

高校時代に素晴らしい実績を挙げた市川だが、複数の留学生センターが在籍する白鷗大では、これまでまとまったプレータイムをほとんど得られていない。市川は苦しい胸の内を少しだけ報道陣に明かしてくれた。

「大学に入ってから、ネガティブな気持ちになってしまうことが多かったです。練習で留学生にパワーで負けて『なんで自分はこんななんだろう』って落ち込んでしまうこともありましたし、部活に帯同できない時期もありました」

親や白鷗大の網野友雄ヘッドコーチに支えられ、「今は声を出して、チームのためにがんばろうと思えるようになっている」と話すが、上記のような苦しい状況で市川がコツコツと磨いてきたのが、3ポイントシュートだった。

「自分がマッチアップするのは基本的に留学生なので、インサイドで分が悪いと思ったときや、自分の外のプレーが有利だと判断したときに、3ポイントシュートを効果的に打つことを想定して練習してきました。ピック&ポップからのシュートや、ドリブルを入れた難しいシュートを練習でたくさん打つことで、試合中より楽にシュートが打てればと考えました」

今回の招集には、少し戸惑いがあった。ディベロップメントキャンプ最終日に行われた面談で、ホーバスヘッドコーチから「日本代表として活躍する自信はありますか?」と問われたときも、即座に「はい」と言えなかったという。しかし、この面談を通して、自身の大きな身体と3ポイントシュートが日本の大きな武器になると再認識できたと話す市川は、この合宿とその先のwindow6、ワールドカップ本戦に向けた意気込みを以下のように語る。

「自分は大学生ですし、最終メンバーに選ばれる可能性は高くはないかもしれませんが、こうやって合宿に選んでいただいている以上、可能性はゼロではないと思います。自分がもし選ばれたら、日本のため、応援してくださっているみなさんのために、少しでも自分の仕事ができるよう頑張っていきたいです」

4年前、高校3年生だった市川は「2023年のワールドカップは視野に入っていますか?」という質問に対して「いいですねえ、入りたいですねえ」と表情を崩しながら答えた。4年の時を経て、市川の『夢』は確実に『現実』に近づいている。