「リバウンドを自分で取ってコースト・トゥ・コーストを見せたい」
宇都宮ブレックスがホームにレバンガ北海道を迎えた一戦で、特別指定選手の小川敦也が衝撃のホームコートデビューを果たした。
第3クォーター残り1分45秒、味方のスティールからすぐに前線へと走り出した小川はスピードに乗った状態でボールを受けると、そのままリングにアタックし豪快なダンクを叩きこんだ。「外国籍選手が後ろから迫ってきていたので行こうか迷ったんですけど、ダンクに行けて良かったです」と、小川はそのシーンを振り返った。ボールを保持した時点で高橋耕陽を背負い、さらにブロック・モータムが後ろに迫っていた。その状況を理解する冷静な判断力と抜群の跳躍力が生み出した一撃だった。
小川は最終クォーターにもドライブを成功させ、17分弱のプレータイムで4得点3アシストを記録。デビュー戦となった2月5日の新潟アルビレックスBB戦でも8得点4アシストを挙げたように、B1レベルでも即戦力であることを証明した。佐々宜央ヘッドコーチは「跳躍力もスピードもハンドリングもあって、成長の幅はめちゃくちゃある。ただ、自分の生かし方を持て余している感じがする」と、ポテンシャルを高く評価している。
筑波大2年の小川は190cmの大型ポイントガードで世代別の代表にも選出されている。スピードと跳躍力が持ち味で、自身も「リバウンドを自分で取ってコースト・トゥ・コーストを見せたい」というほど自信がある。試合前のアップでは何度も豪快なダンクを披露し、その度に会場内はどよめき、初得点のダンク時にはこの日最大級の歓声が上がったが、当の本人は「集中していて分からなかった」苦笑いを浮かべた。
素直な人間性「分からないことや困ったことは聞くようにしています」
上々のホームデビューを飾った小川だが、「前半は緊張してターンオーバーから入ってしまった」と振り返ったように、第2クォーター序盤にワンマン速攻を浴びるきっかけとなるスティールを奪われた。ポイントガードとしては決して許されないミスのため、佐々ヘッドコーチも「安易にターンオーバーするのは大学でもよくやっています。それを厳しく言っていくしかないです」とミスについて言及した。ただ、それと同時に「今年の僕らはボール運びのところで苦しんでいるので、それだけでも彼は助けてくれる」と、底上げになっていることも強調した。
また、佐々ヘッドコーチは小川の素直さを表すエピソードを明かした。「前半が終わった時に『佐々さん、俺どうやって攻めたらいいですか?』って言われて。下がられているからパサーになれるぞとアドバイスはしました」
小川も頼れる先輩に積極的にアドバイスをもらい、それをコートで体現した。「ブレックスには佐々さんがいて、(田臥)勇太さんやナベさん(渡邉裕規)、(鵤)誠司さんにもっとペイントアタックに行けと言われました。頼れる人が多くて、素晴らしい監督がいるので、分からないことや困ったことは聞くようにしています」
小川は190cmの長身ながら抜群のハンドリングスキルがあり、人並外れたスピードと跳躍力をも持つ逸材だ。こうした身体的な能力も素晴らしいが、驕らずにアドバイスを受け入れる素直さも持ち合わせている。さらなる成長が楽しみでならない。