「自信を持って、ただひたすら自分に向き合っている」
ジェイデン・ハーディーは昨年のNBAドラフト2巡目37位でキングスに指名され、すぐにマーベリックスにトレードされた。大学には行かずにGリーグのイグナイトでプレーしており、NBAに近い環境にはいたのだが、本当のNBAは若手にとって簡単な舞台ではない。
ガードの彼はルカ・ドンチッチとスペインサー・ディンウィディーの控えという立場だが、その序列はティム・ハーダウェイJr.やレジー・ブロック、フランク・ニリキナの下で、短期間チームに在籍したファクンド・カンパッソやケンバ・ウォーカーの存在もあり、昨年に行われた37試合でのプレータイムは合計で78分のみ。マブス傘下のテキサス・レジェンズでもプレーし、そこでは平均28.8得点と大活躍しているが、それがマブスでの評価には繋がらず、勝敗が決まった後のガベージタイムのわずかな時間でアピールしなければならなかった。
1月5日のセルティックス戦は95-124の大敗で、大差が付いたためにマブスはドンチッチを第4クォーターにプレーせず、早々に勝負をあきらめた。チームにとっては屈辱的な負け方だが、ハーディーにとってはチャンスである。
115-144と大敗を喫した12月10日のキャバリアーズ戦では、これまで最長の23分のプレータイムを与えられ、15得点を挙げていた。そしてセルティックス戦でも、22点差で敗色濃厚な第3クォーター終盤に投入されると、すぐさまドンチッチのアシストを受けて3ポイントシュートを決め、第4クォーターになって主力がいなくなると、彼がオフェンスの一番手となり積極的に攻めた。
結果、15分の出場で8本のシュートを放ち、5本を決めて15得点2リバウンド2アシストを記録。大敗を喫したマブスにとって唯一の収穫となった。
ハーディーのプレーは、アピールのためにチームの連携よりも個人技を主体とする『Gリーグ仕様』で、マブスで評価を勝ち取るに十分とは言えない。ディフェンスでも自分のマークを見失い、足は動かしているが右往左往するシーンもあった。それでも、ドライブで相手をかわし、強引なフィニッシュもねじ込む得点能力にはインパクトがあり、ヘッドコーチのジェイソン・キッドは「エネルギーを出し、素晴らしいプレーをしていた」と称賛し、ディンウィディーも「すごくダイナミックな選手で、活躍してくれてうれしい。僕もベテランとして、彼の好調が続くようサポートしたい」と語る。
試合後、「これで少しは出番が増えるのでは?」と問われたハーディーは、「そう願いたいね。コートに立ってプレーするのはいつでも気持ちが良いものだから」と笑顔で語る。
「夜遅くまで、そして朝早くから僕は練習場にいる。自分の能力を疑ったことは一度もない。自信を持って、ただひたすら自分に向き合っている。謙虚であり続け、コーチや先輩の選手のアドバイスに耳を傾けて、彼らから学んでいるよ。スタッツを見れば分かる通り、まだまだ十分じゃないけど、ここは若い選手が育つのに良い環境だと思う。ルカやスペンサー、クリスチャン(ウッド)のような選手から学べるんだからね」
「そして、チャンスがやって来た時に備えるんだ。コートに送り出されたら、自分に与えられた時間をすべて使って自分の能力すべてを見せたい」
マブスは現地1月6日、ケンバ・ウォーカーの契約を解除した。ハーディーの活躍がその判断に影響を与えたかどうかは定かでないが、チーム内での彼の序列が一つ上がったことになる。マブスはベテランの多いチームで、最年少のハーディーの成長はそのまま戦力アップに直結する。現在22勝17敗のマブスがもう一つ突き抜けるには補強が必要かもしれないが、ハーディーの存在がチームにとってポジティブな材料であることは間違いない。