CUE

文=鈴木健一郎 写真=B.LEAGUE、?ALVARK TOKYO

3ポイントシュート2本中2本成功、ロングスリーは……

アルバルク東京のロスターには、AIバスケットボールロボット『CUE』が登録されている。トヨタ自動車の社員が任意で加入する『トヨタ技術会』の17人のメンバーにより製作されたロボットだ。未来のモビリティに欠かせない技術である人工知能の開発に挑戦し、変革の原動力になりたいという思いから、メンバーが試行錯誤しながら開発に取り組んだ『汗と技術の結晶』は、昨シーズンのお披露目からさらに進化した『CUE2』となり、11月24日のアリーナ立川立飛に登場した。

前回、3月28日に登場した『CUE』はペイント内であれば狙ったシュートは外さない凄腕シューターとして登場。馬場雄大とシュート対決を行った。それから半年後、『CUE2』へと進化。前回は足元が台座になっていたが、今回は自立式に。さらにシュートレンジが広がり、3ポイントシュートを打てるようになった。

『CUE2』がシュートモーションに入ると、スタッフがその手にバスケットボールを乗せる。高いアーチを描いて放たれたシュートがリムに触れることもなくリング中央を2本連続で射抜くと、3000人を超える観客は拍手喝采で称えた。

これに気を良くした『CUE2』(というか、スタッフ)は、3ポイントラインよりさらに1メートル以上後方へと移動してのロングスリーにチャレンジ。『CUE2』は胸に搭載されたカメラでゴールの位置を確認し、自分で軌道を計算した上でシュートを放つ。こうして放たれたシュートは惜しくもリングに嫌われたが、それでもブースターはそのチャレンジ精神に拍手を送った。

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「ベンチャーマインドを思い出して社内に刺激を」

イベントを終えて、開発者の野見知弘さんは「リハーサルでは成功したんですけど」と、最後のロングスリー失敗を苦笑とともに悔しがる。

前回に届いた「3ポイントシュートができたら面白い」と「台座はダサい」の意見を取り入れて『CUE2』を作り上げた技術会を代表して野見さんは「台座に入っていた部品をなくすための小型化、シュートの距離を出すためのモーターの出力が必要で、その二律背反を克服すること、さらにそれを半年という短期間でやらなければいけないのが大変だった」と開発の苦労を語る。

このプロジェクトには明確な意義がある。「自動車業界は100年に1度の変革期、ベンチャーマインドを思い出して社内に刺激を与えようと思ってやってきた」というのが野見さんの説明。技術者たちが本来持つべき遊び心を、社業とは別にこういったプロジェクトで形にすることは面白いし、こうしてBリーグの舞台で定期的に進化する姿を披露できるのは刺激になる。

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「次はBリーグのオールスターに出たいです」

「ひとまずは2年間のプロジェクトということでやっているので、来年の春にもう一度ここに出させていただいて、次はBリーグのオールスターに出たいです。今はA東京の試合を見に来たお客様に見ていただいていますが、最終的には皆さんが『CUE』を見に会場に足を運んでいただけるように」

会見では「オールスターに出たい」と目標を語った野見さんだが、それはただイベントとして登場するだけではない。野見さん個人の『究極の夢』は、3ポイントシュートコンテストでBリーグの選手たちと『CUE』を競わせることだそうだ。アルミフレームに3Dプリンタの樹脂で肉付けしたAIバスケットボールロボット『CUE』のさらなる進化を、楽しみに待ちたい。