八村塁

写真=Getty Images

指揮官も称賛「チームにとって非常に良い兆候」

11月21日、招待トーナメント大会『マウイ・インビテーショナル』でのゴンザガ大学優勝は、『アップセット』として瞬く間に全米中に轟いた。

何しろ決勝で戦った相手は、NCAAトーナメント優勝5回の名門デューク大学だ。来年のNBAドラフトで上位指名が有力視されるRJ・バレット、ザイオン・ウィリアムソン、キャム・レディッシュを擁し、NBAチームにも勝てるのではないかと言われるほど、NCAA最大のタレント集団だ。ゴンザガ大が不利なのは明らかだったが、試合終盤にデューク大が見せた猛烈な追い上げをしのぎきり、89-87で優勝を成し遂げた。その立役者こそ、大会MVPに選出された八村塁だった。

八村は、試合序盤からウィリアムソンのシュートをブロックし、得意のミドルシュートで得点を重ね、残り10秒を切った場面でねじ込んだ決勝レイアップを含む20得点7リバウンド5アシスト3ブロックを記録。デューク大にとって最後の攻撃となった場面でも、バレットとのマッチアップでファウルをせずに守り切った。

シーズン前に『AP』のランキングで1位に挙げられたデューク大は、同大会で17戦無敗だったが、今回ゴンザガ大に足元をすくわれ、初の敗北を喫した。

アメリカ代表前ヘッドコーチを務めた指揮官のマイク・シャシェフスキーも、ゴンザガ大の力に脱帽した。試合後には「我々は良い守備ができなかったが、彼らが素晴らしいオフェンスを実行していた」と、潔く相手のポジションレス・スタイルでのプレーを称賛した。

八村は試合後の会見で、バレットとのマッチアップについて聞かれた際、「自分たちがアメリカでもベストチーム。それに、自分もベストプレーヤーだと思っている。だから彼をガードしないといけなかった」と返答。それを横で聞いていた指揮官のマーク・フューは「そうだ、それで良いんだ!やっと分かったようだな」と、笑顔で横槍を入れた。

八村が会見場から去った後、フューは、彼から自信のあるコメントが聞けたことを喜んだ。「彼が(ベストプレーヤーと)自信を持てるように、我々は取り組んできた。彼はデューク大を相手にボールを求め、チームも託した。試合の大半を通して、彼は非常に身体能力の高いアスリートを相手にし、リム周辺のディフェンスにも長けた選手を相手にしたんだ。これは、チームにとって非常に良い兆候だ」

ゴンザガ大は、足首の負傷により復帰が年明けになると見られているスターフォワードのキリアン・ティリー抜きで快挙を成し遂げた。このまま八村がチームの中心を担い、ティリーが復帰すれば、ゴンザガ大の最強布陣が完成し、全米制覇の可能性も見えてくる。そして、ケガなく好調を維持できれば、八村は日本人史上初のドラフト上位指名選手として、NBAの舞台に立つようになるかもしれない。

感謝祭前日の大舞台で結果を残した八村に対する全米の関心度は、これからうなぎ上りになるだろう。長いシーズン中、思い通りにいかず苦しい日々も待っているだろうが、八村にはベストプレーヤーとしての矜持と共に、これからの長いシーズンで結果を残してもらいたい。