文=古後登志夫 写真=県立盛岡南

岩手県代表の盛岡南高校は、今回が13回目のウインターカップ出場となるが、2003年と2004年、川村卓也(現・横浜ビー・コルセアーズ)を擁したチームでの2年連続出場から実に12年ぶりとなる。優勝候補と呼ばれる存在ではないが、大きなポテンシャルを秘め、大舞台でのアップセットを狙う。
チームを率いる斉藤資は、かつて大阪エヴェッサの選手としてbjリーグで優勝した経歴の持ち主。プロの舞台を経験した監督に、ウインターカップへの意気込みを聞いた。

『元bj優勝メンバー』の監督の下、12年ぶりの大舞台に挑む

──プロ選手を経て教員になられたんですね。その経緯を教えていただけますか。

盛岡南から日本体育大学に進学して、1年生の時にインカレで準優勝しています。ただケガが多くて、4年生の時は試合に出ていません。その間をリハビリとトレーニングにあてて、bjリーグ2年目のトライアウトを受けて大阪エヴェッサに入団しました。1シーズンプレーした後に岩手県の教員採用試験に合格し、その翌年に母校の盛岡南に赴任しました。もともとバスケットの指導者を志していたんです。高いレベルでプレーさせていただいた経験を生かしたいと思っていました。

──同級生でまだ現役の選手はいますか?

レバンガ北海道の野口大介、金沢武士団の与那嶺翼は同級生。3つ下の後輩が川村卓也です。

──指導者としてインターハイに初出場、続いてウインターカップに挑戦することになります。インターハイで全国と戦ってみての手応えはいかがでしたか?

インターハイでは福岡第一さんと対戦して、第1クォーターは1点差でリードしたんですけど、その後はインサイドを中心に得点を重ねられてしまい、最後は20点くらい離されました。やってきたバスケットの方向性が間違っていないこと、そして全国でも戦えることは感じられたので、そこは収穫です。ただ、強いチームは悪い時間帯にしっかり我慢して、自分たちのバスケットじゃなくても流れを相手に渡さない、そういう印象を持ちました。

あとは岩手国体でウチの主力が岩手代表として出場したのですが、そこで優勝した京都と準決勝で対戦しています。インターハイと国体の優勝チームと戦ったことは自信になりました。キャプテンの澁田怜音、そして永田渉は全国の中でもトップレベルになる選手だと思っていて、この2人がチームの中心にいるので、勝負できると思っています。

──名前が挙がった2選手について教えてください。

ポイントカードの澁田はボールハンドリングとスピード、アウトサイドのシュートが全国的にも抜けた力があります。特にピック&ロールのプレーではおそらく高校で一番くらいのスキルを持ってるんじゃないかな。永田は195cmのセンターなんですが、インサイドプレーしかできなかったのが動けるようになって、今は3ポイントシュートをもあってスモールフォワードもできるぐらいです。この2人のツーメンプレーが強力かと思います。

──チームとして全国で戦う上での強みはどこでしょうか。

オフェンスとデイフェンスの切り替えの部分。シュートを打ち終わった後のディフェンス、ボールを奪ってからのトランジションですね。特にオフェンスが終わってからディフェンスに移るハリーバックにはこだわっています。あとは澁田も含め何枚かシューターがいて、アウトサイドでしっかりノーマークを作って打つようなオフェンスが武器です。

その土地にプロのチームが定着すれば、普及にも強化にもなる

──自分が現役の部活生だった頃と今を比較して、違うと感じる部分はどこでしょうか。

昔はいろいろなスポーツをやって、中学校に上がるぐらいでバスケットを選ぶというのが主流だったと思いますが、今はバスケットしかやっていない子が増えていて、遊びの中で身に着けるような身体操作とかボール扱いに劣る子が県選抜クラスでもいます。そういった部分までドリルにして練習しないといけなくなっていますね。

──今の立場からプロリーグを見て思うことはありますか?

私が帰って来て間もなく、岩手にプロチームができました。指導の現場に携わっての実感は、その土地にプロチームがあるかないかで普及や強化が全然違ってくるということです。早い話、私が子供たちに教えるよりも、プロの文化が定着していろんな子供たちがそれに触れれば、それだけで普及にも強化にもなります。だからプロチームの存在はありがたいです。

──では、指導者として初めて臨むウインターカップへの意気込みをお願いします。

これまでは県内で負け続けてきましたが、いつも勝てると思って試合していました。勝つイメージしかない状況で、見ている皆さんの度肝を抜くような試合をやりたいです。初戦の東海大学付属札幌さんが強い相手なので、しっかり研究して準備します。次が東山さんで、ここに勝てば注目されると思うのですが、まずは目立たないように。「知らないうちにここまで来たか」というダークホースになりたいと思っています。