「身体が普通の状態に戻ったし、攻めに行こうと思いました」
ファイティングイーグルス名古屋は開幕からここまで6勝5敗。連勝に連敗とアップダウンは激しいが、川辺泰三ヘッドコーチは「自分たちの成長にフォーカスはできています」と、結果よりもそれを追い求める過程に目を向け、「選手たちは頑張れている。バイウィークもチームの課題に向き合えている」と評価する。
中断期間明けの信州ブレイブウォリアーズ戦は、土曜に89失点を喫して敗れたものの、日曜には失点を60まで減らして勝利を収めた。信州を率いる勝久マイケルは、「FE名古屋のディフェンスの強度が素晴らしかった」と称えるとともに、「やられた相手がタフに来ることを想像して土曜の夜を過ごすこと。それを想像して準備するのもハードワークの一つ」と、連戦の2試合目に勝てないことをケガ人のせいにせず、チームの意識の持ち方を改善すべきと語っている。
FE名古屋で先発ポイントガードを務める石川海斗は、土曜の6得点3アシストから日曜には12得点6アシストへとステップアップ。スタッツ以上に思い切り良くプレーする印象が強かった。好調の要因は2つ。コンディションが良くなったことと、相手が古巣の信州だったことだ。
石川は試合後の会見でこう話す。「開幕でぎっくり腰になってそのまま出続けていて、このバイウィークでやっと腰が治りました。そこまで自分のプレーができないことにメンタル的にやられていた部分があったんですけど、昨日はやっと自分のプレーが戻って来た感覚が自分の中でありました」
「僕は信州に2連敗はしたくなかった、成長した姿を見せなきゃいけないと思いました。僕はコーチマイケルのところですごく成長させてもらったと思っていますし、僕はコーチマイケルにすごくリスペクトを持っているので、あのバスケットを上回るようにやらなきゃいけないと思いました」
土曜は復調の手応えはつかんだものの敗戦。第2戦を迎えるにあたり、石川は「信州の時にやっていたプレーに戻してみても良いのかな」と考えながら、土曜の夜を過ごしたと言う。
「僕の強みって言い方を悪くすればオラオラしてアタックして、アシストしたり自分でシュートしたりだと思います。それがやりたいけどできなかった部分があって。ガードとして一番考えるのはどうしたらみんながプレーしやすいかですが、でもそれで勝てていなかったので、じゃあ身体が普通の状態に戻ったし、攻めに行こうと思いました」
帰化選手のエヴァンス・ルークを擁する強みを生かしたビッグラインナップは、どこからでも点が取れる布陣だ。それぞれの個性を引き出そうと考えるのはガードとして当然だろうが、日曜の石川はまず自分の個性を引き出し、「オラオラしてアタックして」を軸にしたプレーがハマり、結果としてチームメートの個性も上手く引き出した。
「そういった人たちの思いを感じながら活躍する姿を見せていきたい」
石川はBリーグ初年度の2016-17シーズンに仙台89ERSの一員としてB1を戦ったが、その後は信州、熊本ヴォルターズ、FE名古屋でB2でのプレーが続いた。ようやくB1の舞台に戻って来たが、彼はそれが自分の成熟によるものだとは思っていない。
「今年で32歳になるんですけど、別に今が成熟しているとは思いません。年齢的にそうなっているだけです。若くて良い選手、例えば熊谷(航)とは『良い選手がいるなあ』と思いながら楽しくマッチアップしていますし、僕がコーチマイケルのバスケを知っている分、『まだここは足りないな』と思う部分もあるし、そこは年齢を重ねているから楽しくやれているのかもしれません」
彼はB2で苦労を重ねてB1にたどり着いた、という見方を自分に当てはめていない。「正直、B1で試合に出ていない選手よりもB2で試合に出ている良い選手はたくさんいます」と彼は言う。
「僕は熊本から移籍してきて、B2の多くのブースターの方たちが『B2を背負って頑張ってほしい』と言ってくれていて、そういった人たちの思いを感じながら活躍する姿を見せていきたいです。もっともっとできることはたくさんあるので、やっていきたいです」
バスケで試合に勝つにはチームプレーが必要だが、時には強い個性がチームを引っ張ることも求められる。石川の言う『オラオラしたプレー』は、FE名古屋の選手たちがそれぞれ持つ個性を削ぐのではなく生かす方向へと導いた。FE名古屋のために、また自分に寄せられた思いに応えるために、石川にはもっともっと『オラオラしたプレー』という個性を発揮してもらいたい。