文=鈴木健一郎 写真=野口岳彦

三河はバッツのファウルトラブルで我慢の展開に

東地区首位の栃木ブレックスと西地区首位のシーホース三河の『頂上対決』、高さとパワーを生かした三河が勝ち切った前日に続く第2戦、この日もフィジカル勝負でロースコアの展開が終盤まで続く接戦となったが、勝者は栃木だった。

両チームともタイトな守備をする上に、気合いが入りすぎてボールが手に付かない感じの立ち上がりとなったが、ライアン・ロシターがアイザック・バッツに抑えられ、リバウンドも奪われる。激しく当たられてもファウルをもらえないロシターがイライラする場面も。得点源のロシターをを抑えられたことで栃木は流れに乗れず、じわじわと三河が優位に立ちつつあった。

しかし第1クォーター残り2分24秒、竹内公輔が強引にリングにアタックしてバスケット・カウントをもぎ取る。これで個人ファウル2つとなったバッツがベンチに下がると、『足枷』の外れたロシターが猛然と走ってダンクで初得点を挙げる。これで一気に栃木が盛り返す。

三河にとっては我慢の展開。左ふくらはぎに痛みを訴えた比江島慎が欠場、さらにはバッツもファウルトラブルに陥る状況で、鈴木貴美一ヘッドコーチはローテーションで過度の消耗を避け、ファウル数もコントロールしながら、接戦に持ち込む。

後半に入って三河はスターターの5人に戻すが、長谷川智也がすぐ3つ目の個人ファウルで、第3クォーターの半ばにはバッツもまたファウルトラブルとなってベンチに下がり、我慢の展開に。栃木の速い展開に手こずりながらも、フィニッシュがロシターに集まるところに的を絞る。守備で身体を張るギャビン・エドワーズと桜木ジェイアールは、攻撃に転じれば巧みな連携でインサイドを攻略した。

踏ん張るチームを勢い付けた遠藤の3ポイントシュート

51-49と三河がわずかにリードして迎えた第4クォーターも一進一退の攻防が続く。田臥勇太がスティールから走れば、バッツがミドルレンジから正確なジャンプショットを沈める。残り5分17秒にはロシターの速攻をバッツが4つ目のファウルで止めてベンチへ。以後、バッツはコートには戻らなかったが、それでもエドワーズと桜木が牽引する三河は失速せずに食らい付く。

混戦から抜け出す決定打となったのは、残り1分38秒で遠藤祐亮が決めた3ポイントシュートだ。これで66-64と逆転。直後にエドワーズの得点で追い付かれるも、ギリギリのところで踏ん張るチームに勢いを与える一発だった。栃木を率いるトーマス・ウィスマンはこう語る。「私はディフェンスファーストなので、勝因を挙げるならディフェンスですが、一つのプレーを挙げるなら遠藤の3ポイントシュート。3ポイントの確率が上がらない中でよく決めてくれた」

残り1分を切って2点リードの場面。ようやく引き寄せた流れをしっかりと勝ちに結び付けたのは田臥だった。相手の激しいチェックに耐え、ロシターに絶妙なパスを出して決定的なリードをもぎ取る。さらに金丸からボールを奪うと、自らジャンプショットを狙うと見せかけて相手の注意を引き寄せ、ゴール下に走り込んだロシターに合わせる。フリーのロシターは易々とダンクを叩き込み、残り22秒で70-66。ファウルゲームも無難にやり過ごした栃木が、最終スコア74-68で勝利した。

三河の金丸晃輔は、苦しい展開の中で最後まで戦えた試合の収穫を語る。「それぞれが自分の役割をしっかりとこなせました。やり切っただけに、それで負けるのはキツいですけど(笑)、それでも次につながる試合ではありました」

鈴木貴美一ヘッドコーチも「やっている側は大変ですけど、見ている人には楽しい試合になったのでは。トップレベルのプライドを見せられるゲームになったと思います」と語る。

ウィスマンヘッドコーチは、「2試合ともタフなゲームでした。それでも週末の2試合が、自分たちの目指していくチームにとって糧になる試合だったと思います」と、勝った今日だけでなく敗れた第1戦も価値があったと言う。今日の接戦を制した要因は「終盤、1本止めなければいけないところでのディフェンスができたこと」と総括した。

さらにウィスマンはこう付け加えた。「週末を通してジャッジが素晴らしかったということをレフェリーに伝えました。フィジカルで難しい2試合だと思いますが、素晴らしいジャッジだったと思います」

交流戦により実現した『東西頂上決戦』は1勝1敗。どちらもタフな接戦となったが、結果的に1勝1敗と、雌雄を決するのは『また先のステージで』ということになった。