文=大島和人 写真=B.LEAGUE

高さで優位の三河に対し、主力を欠くも地力を見せる栃木

リードチェンジは何と14回。東地区首位のリンク栃木ブレックスと西地区首位のシーホース三河の『頂上対決』は、最後のブザーが鳴るまで行方の分からないシーソーゲームになった。

外国籍選手のオン・ザ・コート数は両チームとも「1-2-1-2」。しかし三河には『1』の時間帯に大ベテランの帰化選手、桜木ジェイアールを起用できるアドバンテージがある。その第1クォーター、三河は18本(オフェンス4本、ディフェンス14本)のリバウンドを得て、8本に留まった栃木を上回った。ただポイント差が大きく開くことはなく、三河がスタートの10分間を17-15と微差のリードで終える。

第2クォーターは栃木が持ち直す。ジェフ・ギブス、ライアン・ロシターの二枚看板は強力で、インサイドの主導権を奪還。栃木がひっくり返して37-33の4点リードでハーフタイムを迎える。栃木は外国籍選手のトミー・ブレントン、古川孝敏が負傷で欠場している中でも、地力と粘りを見せていた。

栃木の遠藤祐亮は「最初の入りからディフェンスをアグレッシブにして、チームのやろうとしていることはできた」と試合展開を振り返る。その一方で彼はこう悔いる。「第3クォーターで三河にやりたいことをやられてしまって、自分たちのリズムが作れず、勝ち切れなかった」

第3クォーターは激しいシーソーゲームに。金丸晃輔が残り8分03秒にフリースローを2本決めて、三河が40-39とまず逆転。栃木も田臥勇太が決めて41-40とひっくり返すが、三河はアイザック・バッツが決めて42-41と第3クォーター二度目の逆転を果たす。そこから田臥、金丸、田臥、金丸と両チームが交互に決め、得点グラフは目まぐるしく交差していく。ただ締めの時間帯に桜木が連続ポイントを決めたこともあり、三河はこの試合最大となる7点リード(58-51)で第3クォーターを終えた。

逆転に次ぐ逆転、リードチェンジ14回の大熱戦

栃木も譲ることなく、第4クォーターに入り激しく追い上げる。残り5分55秒で田臥の得点で61-60とわずかに抜け出すが、三河も直後に橋本が3ポイントシュートを決めるなど、膠着状態が続く。

一方で栃木は最終クォーターで遠藤が際立った活躍を見せた。彼が残り3分59秒、3分17秒と勝負どころで3ポイントシュートを2本成功させて、試合を67-67と振り出しに戻す。そして残り2分9秒、栃木は熊谷尚也がジャンプショットを決めて69-67と2点のリードを奪う。この日11回目のリードチェンジだった。

三河も残り1分8秒、比江島慎がジャンプショットを決め、ファウルで得たワンスローを成功させて70-69とリードを取り戻す。しかし残り56秒、栃木の遠藤に決められて70-71と再びビハインドを背負う。残り20秒、ギャビン・エドワーズのシュートがロシターのブロックに阻まれたが、バッツがオフェンスリバウンドを取ってそのままジャンプショット成功。72-71と三河は何とか一押しに成功する。これがこの試合14回目、つまり最後のリードチェンジになった。

直後にタイムアウトを取った栃木は、残り20秒を使いつつ逆転にチャレンジする。残り5秒、ラストショットを託されたのは遠藤だった。

遠藤は「今までにはなかったことで、自信にもなっている。あそこで思い切りシュートを打てないのが今までの自分だったけれど、そこで打てた」とこのシュートを振り返る。ただ、アウトサイドからの『逆転サヨナラシュート』を決めきれなかった。

金丸がこのルーズボールを握り、栃木は当然ながらすぐファウルで止める。しかし金丸が2ショットをきっちり成功し、三河のリードは3点に拡がった。残り3.4秒からのラストプレーは、田臥がブザーと同時に『決まれば同点』の3ポイントシュートを放つが、虚しくリングを叩く。勝負どころでリバウンドを取った三河が、74-71で栃木を下した。

田臥の矜持「ネガティブになる必要は全然ない」

両チームの大きな差となったのがフリースローだった。三河は金丸が10本すべてを成功させるなど、19本の試投で16本を成功している。一方の栃木は『8分の1』という異例の低い成功率だった。特にロシターが7本を放ったものの1本しか決められなかった。15得点18リバウンドと傑出したスタッツを残した栃木の主軸だが、こればかりは改善が必要だ。彼も「いくつか試していているけれど、どうにか入るルーティーンを見つけなければいけない。(フリースローが「8分の2」だった11月23日の)千葉戦も今日も、自分がしっかり入れていれば勝てていた」と顔を曇らせる。

田臥は「三河さんは経験もあるし、勝ち方を知っているチーム」と相手の勝負強さを称える。ただしシーズンは始まったばかりで、明日も同じカードはある。「そういう相手にこういうタフなゲームをいかに取るかということは、優勝していく中で本当に大事なこと。そこをどう勝ち切るかが自分たちのチャレンジ。ネガティブになる必要は全然ない」と、前向きな様子で試合を振り返った。

栃木を率いるトーマス・ウィスマンは「自分たちが勝つべき試合だったと思うし、勝てるチャンスのある試合だった」と悔やむが、主力2人を欠いた中でこのような内容を見せたことは地力の証明であり、明日の再戦に向けて栃木の手応えとなる部分だろう。

一方で、三河のキャプテン、橋本竜馬にとっては別の意味で特別な試合だった。「田臥さんもいますし、姿を見て勉強して帰りたいと思っていた。この2試合を無駄にしたくないなと思って、今日は気持ちも入りました。素晴らしい相手と対戦できたことが本当にうれしい」と語る、同じポジションの『レジェンド』との貴重な対戦だった。

そんな橋本も今日の三河の出来については満足気な表情を見せる。「良い時は速い展開でやるし、ここで一本欲しい、流れを止めたいというところはコールプレーをやることも考えてやっている。それが上手く行っていると思う。11月から負けていないですし、そういう意思疎通がみんなでできている。良いチームになっているなという実感があります」

三河が試合運びの妙を発揮した勝利だった。内容、展開、そして満員のブレックスアリーナが醸し出す雰囲気も含めて、素晴らしく濃密な40分間だった。