ブルック・ロペス

アデトクンボもロペスを称える「彼がいてくれることに感謝」

バックスは11月7日のホークス戦で今シーズン初黒星を喫したが、それでも開幕から9勝1敗は最高のスタートだ。当然ながらリーグ1位の成績で、過去に開幕から9勝1敗を記録したチームを振り返ると、レギュラーシーズン73勝というNBA記録を打ち立てた2015-16シーズンのウォリアーズとなる。

この時のウォリアーズは前シーズンに40年ぶりのNBA優勝を成し遂げ、そのスタイルを継続することで、浮き沈みの激しいこのリーグで常勝チームになると感じさせ、実際にそうなった。今のバックスは、そのウォリアーズが通った道を進んでいるようだ。

『ビッグ3』の一角であるクリス・ミドルトンは手首のケガで、貴重なローテーションプレーヤーのパット・カナートンはふくらはぎを痛めて、今シーズンまだ出場がない。それにもかかわらずバックスは非常に安定した強さを発揮している。ヤニス・アデトクンボは31.8得点、12.2リバウンド、5.3アシストと、攻守に圧倒的なパフォーマンスはこれまでと変わらず、NBAキャリア10年目の今においては安定感を増している。

彼は安定して活躍する秘訣を「自分に自信を持つこと。結果が出る日とそうでない日があるけど、ただ自分のベストを尽くすことに集中する。結果がどうであれ、全力で戦えていたら自分に合格点を出すんだ」と語る。

アデトクンボがバックスを牽引しているのは間違いないが、今の強さのすべてが彼の活躍で説明できるものではない。大きな理由の一つが、昨シーズンからメンバーの入れ替わりがほとんどないことだ。ボビー・ポーティスは「ほとんどの選手が残り、それぞれ昨シーズンと同じ役割でプレーしている。お互いどんなプレーをするのか分かっているから、すごくスムーズにやれるんだ」と語る。

それでいてポーティスは「今だけのことだと考えておくべきだ。ケミストリーの面で僕らは有利だけど、他のチームはいずれ追い付いてくる。良いスタートを切ることはできたけど、記録なんて何の意味もないよ」と油断がない。2020-21シーズンにNBA優勝を果たしたが、直近の4年間すべてで優勝できるチャンスがありながら3度失敗していることが彼らの頭にはある。ドリュー・ホリデーはシーズン始動の際、メンバーの入れ替わりがなかったことについて「僕らにはまだまだやり残したことがあるから」と、静かにモチベーションを燃やしている。

そんなバックスの中で大きな新戦力と呼ぶべき選手がいる。昨シーズンは腰のケガで手術をして、ほとんどプレーできなかったブルック・ロペスだ。プレーオフには間に合わせたが、調子を上げてきたところでシーズンが終了。その分まで気合いの入る今シーズンは、開幕からベストパフォーマンスを続けており、14.6得点、6.1リバウンド、そしてアデトクンボの最高のパートナーとしてチームに貢献している。

「サイズのメリットを生かして、アグレッシブに守る。そこには自信を持っているよ。僕らはNBAで最高のディフェンスチームだ。シュートには波があるけど、良いディフェンスは毎試合安定して行うことができる」とロペスは言う。

214cmの高さと屈強な身体だけでなく、フットワークの良さが彼の特長だ。ピック&ロールでスピードのミスマッチを突かれた時の対応、3ポイントシュートに対する寄せで、彼ほどIQとスピードを出せるビッグマンはいない。「常に状況を把握して、正しいポジションから外れないこと。最後の瞬間まで相手のどちらのプレーヤーにも行かずにバランスを取ること。どう対応するにしても、基本の動きをできるだけ効率良くやるよう意識する」と彼はディフェンスのコツを語る。

なおかつ、開幕戦でジョエル・エンビードのマークを担当したように、一番消耗する役割をアデトクンボの代わりに引き受ける重要な仕事も果たしている。ビッグマンには『見えない仕事』が多くあるが、ロペスはそれを黙々とこなし、長く一緒にプレーするチームメートたちはその働きがいかに貴重なものかを理解している。

アデトクンボは「ブルックのいるチームと対戦したら、彼のところからは攻めない」という言葉でロペスの貢献を称えている。「彼がいてくれれば、僕はいつだって落ち着いていられる。彼がいてくれることに感謝だよ」