「とどろきアリーナは僕にとって特別な場所」
Bリーグ第2節、広島ドラゴンフライズはアウェーで川崎ブレイブサンダースと対戦し、1勝1敗の痛み分けで終えた。
広島が72-71で制した第1戦は結果的にディフェンスの強度が勝敗を分けた。カイル・ミリングヘッドコーチも「40分間、ガードを中心に良いディフェンスができた。特にガード陣がハードにやることによって、周りに相乗効果が生まれた」と勝因を語っている。実際に広島は川崎から第1クォーターだけで8個ものターンオーバーを誘発し、試合の主導権を握った。この立ち上がりの攻防を制す大きな働きを見せたのが辻直人だった。
辻はインテンシティの高い攻めるようなディフェンスで相手のミスを誘い、ヘルプマンとしても適切なポジションを取って、ペイント内への侵入を防いだ。シューターやプレーメーカーといったオフェンスのイメージが先行する辻だが、自身もそのイメージを理解しつつ、ディフェンス力向上に取り組んできたという。
「僕自身、今まで通りのオフェンスもそうですけど、ディフェンスが弱点と思われないように今シーズンは強化してきました。強豪チームはディフェンス力が高いですし、辻のところが穴と思われたくないのでそこは頑張ってきました。ディフェンスが良いと言われるのは素直にうれしいですね」
強豪の川崎から挙げた1勝は広島にとって大きな価値がある。それがアウェーでの勝利であればなおさらだ。辻はディフェンスだけでなく、決勝点となるドライブを成功させるなど高いパフォーマンスを見せたが、それは9シーズンを過ごしたとどろきアリーナが『敵地』ではなかったからかもしれない。辻は言う。
「とどろきアリーナは僕にとっては特別な場所ですし、アウェーで戦うのは感慨深いというか。いろいろな感情が込み上げてきました。その感情のまま試合に臨んで、(最初の3ポイントシュートが)見事なエアボールとなってしまいました(笑)。試合前から込み上げてくるものはやっぱりありました」
「欲を言えば、自分が得点して成長していきながら勝ちたい」
昨シーズンに川崎を離れ、広島で第2のバスケ人生をスタートさせた辻だが、思うようにスタッツは伸びず、個人としても久しぶりにチャンピオンシップ進出を逃した。そのため「今まで磨いてきたものの集大成となるシーズンに」と、強い意志を持って新シーズンに臨んでいる。キャプテンも任され、「僕自身、周りをよく見るようになって、今まで以上に責任を感じながらやっている」というが、個とチームのバランスについてはまだ手探りの状態だ。
「チームが勝つためにゲームメークをするのと、自分が得点を取りに行くこと。そこのバランスは絶賛勉強中です。僕が得点を取ってチームを勝たせる試合もありますし、パスを散らしてチャンスメークをして勝つ試合もあると思います。欲を言えば、自分が得点して成長していきながら勝ちたい。毎回2桁打って、2桁決めたいです」
外国籍選手が得点ランキングの上位を占めるBリーグにおいて、自らが得点してチームを勝たせたいと明言できる日本人選手は多くない。代表経験も豊富で、常勝チームの得点源となっていた辻だからこそ言える言葉だろう。だが、自分の得点ばかりにフォーカスすれば、それはただの自己中心的なプレーヤーと呼ばれてしまう。それを十分に理解しているからこそ、辻は最適なバランスを探し続けている。「打とうと思えば打てますが、そこを我慢して、打てるタイミングでパスをする。それが寺島(良)の3ポイントシュートや外国籍選手のシュートに繋がったのは良かったです」
ディフェンスからすれば、攻め気がない相手ほど守りやすく、得点に飢えている相手をマークするのは常に気が抜けず骨が折れる。辻が理想のバランスを見つけた時、それは彼だけでなく広島にとっての最適解にもなるはずだ。
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