特徴を持つ若手の獲得に成功、シーズン中に殻を破ることができるか
テイラー・ジェンキンスをヘッドコーチに迎え、ジャ・モラントを新たな中心選手として指名してから、グリズリーズは着実かつ急速に力をつけてきました。昨シーズンは遂にプレーオフに進出するとセカンドラウンドに勝ち進み、最も勢いのあるチームと認識されています。ドラフトで確実に活躍する若手を指名しただけでなく、トレードで戦力を上積みしていくのも上手く、ザック・クレイマンが最優秀エグゼクティブ賞にも選ばれました。
ところが、今オフのグリズリーズは驚くほどに動きませんでした。モラントやタイアス・ジョーンズとの契約延長は結んだものの、ディアンソニー・メルトンを放出して、大ケガを負ったダニー・グリーンを獲得しており、現有戦力を維持したとも言えません。しかも、ジャレン・ジャクソンJr.が疲労骨折でシーズン前半を休むことが決まっており、明確に戦力ダウンしてシーズン開幕を迎えることになります。
そのかわりにルーキーの補強は充実させました。4人を指名するとともにドラフト外でも積極的に集めると、プレシーズン初戦では早速、ケネス・ロフトンJr.がチームハイの17得点を奪い、スカウト力の高さを見せています。ロフトンJr.は201cmながら125kgの巨漢ファイターですが、他にも23位で指名したデイビット・ロディは198cm116kgと重く、逆に38位のケネディ・チャンドラーは185cm77kgと細く、バランス型よりも特徴のあるタイプを優先して集めている印象があります。
また19位のジェイク・ララビアはシュート能力の高さが売りですが、アウトサイドとしてはスピード不足で、インサイドとしては高さ不足のタイプで、やはりバランスが良いとは言い難い選手です。グリズリーズはスピード、フィジカル、シュート力など何かしら明確な武器を持った選手を好んで集めており、オールラウンダーが多い今のNBAの流れとは異なる狙いでチームを構成しています。自分たちが求める選手が他のチームにはあまりいないのかもしれません。
使いどころが難しい選手が多いものの、そこはヘッドコーチの腕の見せ所で、ジェンキンスへの圧倒的な信頼があります。目の前の勝利を優先するならばルーキーばかりの補強は問題がありますが、若手にチーム戦術を仕込み、個人の特徴を活用させるのが上手いジェンキンスならば、個性の強い選手を集めた方が中長期に渡って強いチームを作ってくれるという考えがありそうです。
開幕の段階では昨シーズンほどの成功は難しそうな戦力ですが、シーズン終盤には全く別の選手へと進化するのも近年のグリズリーズの特徴です。成功したとは思えない今オフの補強ですが、これを大成功に変えてしまうのか、さらなる進化が期待されます。