マジック

若手有望株を育てる段階から抜け出し、結果が出せるか

ドラフト1位でパオロ・バンケロを指名したマジックは、バンケロ以外は目立った補強を行いませんでした。マジックは既に多くの若手有望株を集めているため、チームの絶対的な中心となるべきスーパースター候補を手に入れたことで、まずは再建のベースが完成したと言えます。

2017年ドラフト1位のマーケル・フルツからバンケロまで、過去6回のドラフトで10位以内が7人、11位以降の1巡目が4人と十分すぎるほどに若手有望株が揃っており、しかも全員が一定の結果を残しています。しかし、どのようなバスケをするのかチーム方針が決まっておらず、選手の個性任せのため、ケガ人が出るたびに異なるバスケになってしまいます。

ポイントガードはフルツとジェイレン・サッグスにケガが多く、イニシアチブを握っているのはコール・アンソニーですが、本来は個人技で得点を取るのが得意な選手のため、チームとしてスムーズなオフェンスになっていません。一方でウェンデル・カーターJr.がインサイドからのプレーメークで両サイドにパスを散らしキーマンになっているのですが、シューターが少ないチーム事情もあって、アシストを稼げてはいません。

ウイングではフランツ・ワグナーが別格の輝きでポジションを確固たるものにしており、そこにディフェンス力の高いチュマ・オキキや、コーナーからの3ポイントシュートとカットプレーで絡むモー・バンバなど、特殊な武器を持ったタレントも加わります。しかし、本来ならば中核として活躍しているはずだったジョナサン・アイザックが、度重なるケガで長期離脱を繰り返しており、なかなか理想の選手起用ができておらず、ウイングを主役にした戦術構築はしていません。

マジックは各ポジションにタレントがいて、選手それぞれが自らの特徴を出してはいるものの、オートマティックな連携が欠けています。それは『誰がエースなのか』が決まっておらず、ポジションごとの役割分担ではなく、個人ごとに異なる判断基準でプレーしているということでもあります。多彩な形が作れるというメリットがある一方で、若いチームにとってはプレーモデル不足というデメリットの方が大きくなりがちです。有望株を集めて個人を育てる段階からは、そろそろ抜け出しておきたいところだけに、バンケロには明確なエースとして、プレーでチームをまとめる期待がかかります。