河村勇輝

ホーバスヘッドコーチも太鼓判「この3カ月で間違いなく伸びた」

8月30日、バスケットボール男子日本代表はワールドカップアジア地区予選Window4の第2戦でカザフスタンと対戦し、73-48で勝利した。

スコアだけを見れば完勝と言えるが、3ポイントシュートに当たりが来ず(18本中3本の成功)、軽率なミスも目立ち、前半は27-27の同点と苦戦を強いられた。それでも、タフなディフェンスは最後まで強度が落ちず、時間が進むにつれてシュートやプレーの精度が上がり、後半を圧倒して勝利をつかみ取った。

ペースアップを図り、守備でも積極的にプレッシャーをかけて試合の流れを変えたのは、またしても河村勇輝だった。前半は速攻が出せない重い展開の中でトランジションを繰り出し、後半にも決定的なアシストを連発。約16分の出場で7得点を挙げ、さらにともにゲームハイとなる7アシスト5スティールを記録して、ゲームチェンジャーの役割を果たした。

カザフスタンとはアジアカップでも対戦し、その時も前半を3点ビハインドで折り返し、後半を55-20で圧倒。河村は13分9秒の出場ながらフィールドゴール成功率100%で8得点8アシスト3リバウンド2スティールを挙げた。まったくと言っていいほど、同じ展開での勝利となったが、河村もそのことを覚えていて、このように試合を振り返った。

「前半で自分たちらしいバスケットができなかったです。でもアジアカップでも同じような展開だったので、ハーフタイムでしっかりチームで話し合って、後半はニック(ファジーカス)のローポストだったり、ディフェンスの強度を上げていきました。、前半は無駄なターンオーバーが多かったですが、後半は日本らしいバスケができたと思います」

Window4が終わり、11月中旬のWindow5まで代表チームは一時解散となる。そのため、河村はこのカザフスタン戦を「3カ月間やってきたことの集大成」と位置付けていた。トム・ホーバスヘッドコーチが多くの選手を招集してメンバー選考を行ってきた中、河村は6月のディベロップメントキャンプからずっと代表活動に参加しており、誰よりも長く指揮官と同じ時間を過ごしてきた。河村も「一番最初の合宿からいて、他の選手以上に代表での意識というのをトムさんに教わりました」と言い、自身の確かな成長を実感をしている。

「若いからと言って怖じ気づくことなくプレーすること。自信を持ってプレーすることを教わりました。技術的なことで言うと、スコアを狙いながら自分の役割と他の選手の役割を理解してプレーすることを学ぶことができました。それはトムさんのバスケットじゃなくても生かせるポイントだと思いますし、この3カ月間で学んだことをBリーグに戻ってもやっていければいいと思います」

ホーバスヘッドコーチも最初の出会いを思い出しながら、河村へこのようにエールを送った。「河村選手はいつだっけ? 2月のディベロップメントキャンプで初めて会って、その時は2週間前くらいに捻挫していたから、どうかなって思ってた。でも彼はポジティブで目標もすごく高かったからもう一回見ようと思った。6月のディベロップメントキャンプに呼んで、特別なディフェンダーだと思った。速さも特別、ボールハンドリングも上手、パスも上手。この3カ月で間違いなく伸びた。今日の問題は彼のマークマンが下がった時に打たなかったこと。それを直さないと次のレベルには行けないと思いましたから、頑張って下さい」

河村は日本代表としてパリオリンピックに出場するために、東海大を中退してまでプロの道に進んだ。その決断が間違っていなかったと胸を張って言える日は近いのかもしれない。