デュラント残留が決まった後には、渡邊雄太と契約
今オフのネッツは、フリーエージェント市場が開く前に移籍希望を口にしたカイリー・アービングの騒動が収まったと思ったら、今度はケビン・デュラントがトレードを要求しました。結局、デュラントは残留で収まりましたが、チーム内の不協和音が露わになり、ショーン・マークスGMへの不満も出てきた一連の騒動でした。ただ、そのマークスGMはデュラントの移籍先を探しながらも、しっかりとロスターを構築する仕事をやってのけています。
ネッツの最大の弱点は、個人技に依存しすぎるスティーブ・ナッシュの采配にありますが、1on1のスペースを作るためにスモールラインナップを好むため、ディフェンス面でもデュラントに負担が偏ることは大きな問題でした。そのため、これまでのベースを踏まえつつ、機動力とディフェンス力があり、オールラウンドなプレーのできるウイングの補強が課題でした。
特にポイントガードからセンターまで何でもこなし、インサイドのプレーメーク役にもなっていたブルース・ブラウンの穴を埋めるのは最優先課題でしたが、ドラフト1巡目指名権と引き換えにジャズからロイス・オニールを獲得し、早々に解決しています。
マイク・コンリーとドノバン・ミッチェルがいるにもかかわらず、チーム最多のパス数を記録したオニールはパスの中継役というスタイルを確立しており、3ポイントシュートの成功率が高く、リバウンドでも強みを持っています。個人技での得点力は欠きますが、それはネッツでは必要のない能力だけに、ロールプレーヤーとして完璧にフィットするでしょう。
さらにウイングにはTJ・ウォーレンを補強しました。フィジカルなディフェンスが持ち味の選手ですが、ペイサーズでは得点源としても活躍しており、攻守両面でデュラントの仕事を助けてくれるでしょう。ただケガによる欠場期間が長く、完全復帰できるかどうか不安も残ります。ウォーレンが健康であれば選手層が厚くなりますが、またも離脱することになれば他の選手の負担が増してしまい、チームとしてのコンディションに悪影響が出そうです。
主役の周囲を囲む選手が充実
デュラントの残留が決まった後の動きは渡邊雄太との契約でした。運動量の多さでチームを助けるウイングの獲得は、補強方針の明確さも示しています。
アンドレ・ドラモンドが移籍したセンターはニコラス・クラクストンが大きな役割を担うことになりますが、2年目のケスラー・エドワーズなどの若手も含めて分厚くなったウイングを活用したトランジション増が期待できます。
それはベン・シモンズの復活に合わせた新たなチームスタイルへの準備でもあります。セス・カリー、ジョー・ハリス、パティ・ミルズとシューターは粒揃いで、シモンズのパス能力を発揮する土台は出来上がっているだけに、個人技アタックではなくパスで崩す形が増えると予想されます。
デュラントのトレードが成立しなかったのは、ネッツがオールスタークラスの見返りを求め、その要求を決して引き下げなかったからでした。それは、デュラントが出ていっても再建は選ばす、あくまで勝利を目指すとの意思の表明でもあります。
騒がしい状況の中でもディフェンス力の高いウイングの層を厚くすることでエースの負担を減らすとともに、『シモンズ仕様の布陣』を揃えることにも成功したネッツ。主役の周囲を囲む選手が充実してきただけに、あとは主役たちが勝利を積み上げ、一連の騒動をなかったことにするだけです。