ルーキーながら吉田亜沙美に続くポイントガードの2番手に
今シーズンのルーキーで一番の注目選手である藤岡麻菜美。昨年は筑波大をインカレ優勝に導いて大学No.1ガードとしての地位を確立し、今年春にはリオ五輪を目指す女子日本代表の最終候補に選ばれた。結果的に五輪出場は果たせなかったものの、長い強化合宿で得がたい経験を積んだ。
そして10月7日、Wリーグ開幕戦に途中出場し、JX-ENEOSサンフラワーズでのデビューを果たす。JX-ENEOSでポイントガードのスターターを務めるのは、日本代表の司令塔でもある吉田亜沙美。藤岡は「リュウ」こと吉田に続く2番手のポイントガードとして、試合をこなすごとにプレータイムを伸ばしている。
リーグ最強のチームに加入してすぐに出場機会を得られているのだから上出来かと思いきや、藤岡に言わせればそうではなかった。「第1ピリオドから10点とか20点のリードがあって、それでリュウさんと半分ぐらいずつのプレータイムをもらっています。アイシンAW戦は、一度任せてもらったところで仕事ができず、すぐにまたリュウさんがコートに戻りました。それが今の現実です」
2番手ではあっても、まだまだ信頼を勝ち取ってはいない。個人的な出来についても「自分では『まだまだ』です」と言う。
開幕から1カ月半、「ドライブは切っていけます」と本人が言うように、最大の武器であるドライブはトップリーグでも通用しているが、課題はシュートだ。「1試合目はドライブで行けても、2試合目になると下がって対応されてしまうので、シュートを克服しなければいけないです」
「雰囲気というか質というか……緊張感がまるで違うんです」
もっとも、最大の課題は個人プレーではなく組織プレーにあった。代表合宿でトップレベルの選手たちと一緒に練習できたことで、そのレベルを基準に開幕への準備を進めてきたが、それでも連携はまだこれから高めなければならない。特にWNBA参戦により一緒に練習する時間が少なかった渡嘉敷来夢との呼吸が合わないことを藤岡はしきりに気にする。
「ガードの自分がタクさん(渡嘉敷)に合わせないといけないんですけど……。今はまだプレーを楽しむ余裕はなくて、味方に緊張している状況です。何年も一緒にやっているリュウさんだと、お互いのタイミングを知っているので、タクさんの良いプレーをたくさん引き出せています。そんなプレーを見て『早く追い付かなきゃ』と焦っていたのですが、最近は『一歩ずつ進んでいくしかない』と感じています。リュウさんには10年のキャリアがあるので」
今はまだ、環境への順応に四苦八苦しているところ。「練習の質が高いんです。大学とは全然違います。雰囲気というか質というか……緊張感がまるで違うんです」と藤岡は言う。「私はルーキーだし、ポイントガードだからというのもあるかもしれませんが、毎日の練習が試合さながら、試合と一緒の緊張感でやっています」
それでも、取り組むだけの価値は十分にある。練習場で緊張感に満ちた日々を過ごしているだけに、試合になっても臆することがない。「練習でしっかりやっていれば、やってきたことが試合でそのまま出せます。そこは直結していますね」と藤岡は言う。
「チーム練習をやって、夕食後にまた体育館に戻って自主練して。毎晩、お風呂で『疲れたなあ~』って」と笑う。
開幕からここまで、自分自身が「成長した」と思えることは何だろう。藤岡はこう答えた。「リュウさんと一緒のプレーは、ピックだったりドライブからの合わせだったり、リーグ開幕前よりずっと良くなってきたんじゃないかな、という手応えはあります。そう思っているのは自分だけかもしれませんけど(笑)。リュウさんに限らず、仲間との合わせは少しずつ出ていると思います」
焦らず、一歩ずつ前へ。藤岡麻菜美は進み続ける。
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