男子日本代表

ペイントアタックが減ってリズムを崩す、これまでと同じパターン

アジアカップ2022、男子日本代表はグループリーグ最終戦でイラン代表と対戦。百戦錬磨のベテランが揃う相手の冷静な試合運びに、自分たちの持ち味を潰され76-88で敗れた。

日本は第1クォーターこそ互角の戦いを演じたが、第2クォーターに入るとイランの巧みなスイッチディフェンスでペイントアタックを抑えられると一気に失速してしまう。そしてイランに傾いた流れを断ち切れることができず、第3クォーター終了時点で22点の大量リードを許す一方的な展開となった。第4クォーターで30得点を挙げ、最終的には12点差となったが、これは試合の趨勢が決した後で追い上げたもの。最後にハッスルプレーで点差を縮めた若手メンバーの頑張りはポジティブな材料ではあるが、内容から言うとスコア以上の完敗であった。

試合後の記者会見、指揮官トム・ホーバスはこう振り返っている。「これまでも(ワールドカップ予選での)オーストラリア戦、中国戦と今日みたいな試合がありました。ペイント内にアタックしてフィニッシュするのに苦労すると、オフェンスのバランスを欠いてリズムが崩れます。イランのようなディフェンスに対してどうやって攻めていくのか、これは私たちが改善しなければいけない点です」

ホーバスが新ヘッドコーチに就任後、日本代表は3ポイントシュートをより重視するスタイルとなっている。ただ、指揮官がよく言及するように質の高い3ポイントシュートを打つにはペイントアタックで相手ディフェンスを切り崩すことが欠かせない。しかし、イランは連携の取れたチームディフェンスで日本のエースである渡邊雄太のアタックに対応した。それでも渡邊は抜群の存在感で相手の注意を引きつけていたが、そこで生まれたスペースを突ける選手が出現せず。その結果、「1回パスしてシュートを打ってしまう。もっとドライブしてボールが動いてからシュートを打ちたかったですが、ダメでした」とホーバスが言うように、オフェンスは手詰まりとなって、大差で負けたワールドカップ予選の試合と同じ流れとなった。

男子日本代表

立て直しの鍵は出だしから激しい守備ができるかどうか

また、こういう時こそ守備で我慢しなければいけないが、今回は「出だしからディフェンスのインテンシティがちょっと足りなかったです」と、やるべきことができなかった。イランの強みをしっかり生かすオフェンスに対応できず、後手に回り続けた。「第2クォーター、第3クォーターとイランはミスマッチのアドバンテージを生かしてきました。そこで前からプレッシャーをかけると3度か4度、裏を取られてバックドアで決められました。彼らはとてもスマートです」

この敗戦で、日本はCグループで2位となり、明後日のベスト8決定戦はDグループ3位のフィリピンと対戦する。もちろん相手は日本のやりたいことを理解しており、渡邊のドライブは徹底的に抑えてくるだろう。それでも渡邊が決めきる可能性はあるが、彼以外にペイントアタックでディフェンスの脅威となる選手が出てこなければ、例えフィリピンに勝ってもその次に待ち構えるオーストラリアには跳ね返されるだろう。

また、イランも攻めてきたが富樫勇樹(167cm)、河村勇輝(172cm)をローテーションすることで恒常的にできるポイントガードのミスマッチの問題にどう対処するのか。フィリピンの司令塔はBリーグでも非凡な得点力を発揮しているキーファー・ラベナ(185cm)でありこの部分を突いてくることは予想できる。富樫、河村ともに彼らだからこその魅力的な武器があるのは間違いないが、サイズのあるテーブス海(188cm)の出番を増やすのかなど指揮官の選択に注目だ。

そして、何よりも大事なのは「うちのバスケットはディフェンスからです」とホーバスが強調するように、しっかりと立ち上がりから激しい守備を行い相手オフェンスのリズムを崩すことだ。3ポイントシュートが入ったら流れに乗るのではなく、堅守から流れをつかんで3ポイントシュートが決まる展開に持っていかないといけない。