4月に就任し、男子日本代表を史上初のU16アジア選手権の決勝へ導く
現地7月2日から始まるU17ワールドカップにバスケ男子日本代表が出場する。この大会に日本が出場するのは、八村塁を擁した2014年以来となる。この快挙の立役者となったのが4月にアンダーカテゴリー男子日本代表のヘッドコーチに就任したスペイン出身のアレハンドロ・マルチネスだ。長らくアンダー世代を指導し、U17スペイン代表のヘッドコーチとして2012年、16年と2大会連続U17ワールドカップで4位と実績十分の指導者は、コロナ禍による延期から先日行われたばかりのU16アジア選手権で日本代表を史上初の決勝に導いた。
「選手をはじめチームスタッフ、JBAの皆さんの協力の下、男子代表としては初めて決勝戦まで行って銀メダルを獲得できたことは、非常に喜ばしい結果だと思っています」
アジア選手権をこう総括したマルチネスだが、同時に63-94と完敗だった決勝のオーストラリア戦では「サイズもウイングスパンもある身体が大きいチームを相手に26分間は戦えましたが、残りの時間は最後まで自分たちのプレーを遂行することができませんでした」と反省点を語っている。
いよいよ日本時間の本日夜からスタートする本大会だが、出場国はオーストラリアと同等のサイズを持つチームばかりだ。「もちろん厳しい大会になることは承知しています。世界中のトップ16チームが集まり、すべての相手が我々よりも大きい。200cm級が普通に4、5人いたり、206cmや210cmを超える選手たちも抱えるチームが多いと思います」と指揮官は、大きなサイズの不利に直面することは間違いないと語る。
ただ、その中でもここまで日本が積み上げてきたスタイルを根本的に変えることはない。「大きく方向性や戦い方を変える予定はありません。というのも変えられるだけの準備期間がないです。これまでやってきたことを少しずつレベルアップさせる。それでなんとかワールドカップで戦えるようにすることが今の我々にできることです」
「今回の経験から得た学びは選手がプロのキャリアに到達した時、大きな助けに」
日本はグループリーグでドミニカ、スペイン、リトアニアと同じ組となる。欧州の2カ国は優勝候補であり「初戦のドミニカ戦にすべて集中しています」と極めて現実的な理由から語る。「スペイン、リトアニアはおそらく一層レベルが高いチームかなと思います。両国は常にワールドカップでも準決勝レベルまで上がってくるチームです。我々にとって、ドミニカ共和国との試合が一つのチャンスになってくる。それを生かしていきたいので、今は初戦にフォーカスしています」
少しでも勝ち星を挙げることを目指す指揮官だが、一方でユースチームとして世代最高峰の大会であっても時に勝利以上に大切にすべきことがあることを肝に銘じている。「選手たちは、今後の日本バスケットボールを担っていく世代です。高い国際レベルの大会であるワールドカップを通して、彼らがどういった経験をできるのか。大会が終わった時に何か新しいものを得ていることは非常に大事な一つの面だと思います」
「もちろん試合に勝てれば素晴らしいと思いますが、選手たちが失敗から学んでいくことも非常に大事です。勝ってもあまり多くを学ばないことはあり、逆に負けた試合から多くを学べることもあります。そういった側面は私のバスケットのモットーとしてあるので大切にしたいです。今回の国際経験から得た学びは選手たちがプロのキャリアに到達した時、大きな助けになってくれるはずだと思います」
できるだけ上の順位で終えることは大切な目標であるが、アジア選手権の得点王である川島悠翔を筆頭にしたダイヤの原石たちが今後の糧となる経験を少しでも多く積んでほしい。育成世代で確固たる実績を残しているマルチネスなら、それを成し遂げてくれるだろう。